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いふ☆いふ 〜先輩は魔法使い〜  作者: 岩流佐令
5月 体育祭&家庭訪問
39/59

第三十八話 てにをはGrind

 鎮座。

 ちんざ。

 チンざ。


 ──チン、()


 伊巫さんは俺のエクストリーム棒にRide onしていた。チンに座していた。


 この状況。

 誰もいない体育倉庫、足が痺れて転倒した伊巫さん。


 は、キャッチした俺の上。

 に、乗っている。

 と、俺をチン座でほどよく柔軟に刺激する生尻。

 が、とても心地よい。

 けど、俺はエクストリームさせる訳にはいかない。

 のに、彼女のほどよい生尻。

 へと、沈み込むような俺のエクストリーム。

 によって、感知されるエナメルボンテージ。

 から、さらに深くデンジャラスな領域へと誘い込まれる。


 で、今現在この状況。


「いいいいいいいいいいいい伊巫さんん」


「……あ」


「いい伊巫ささんなな何でですすすかここのじょうじじょ状況きょきょきょうきょう」


「ちょ、ちょっと……藤見、くん……あっ」


「おおおおおおれれおれ俺のの上うえうにににいいいい伊巫ふいふいふさんんさんさん」


「待って、んっ、う、動かない、で……ッ」


「こここののこのたたいせいせ体勢いかななかかななりりかなりやばばばばいばばばば」


「動か、ないで──って、言ってるでしょう!」


 ヒュパァアアアアンンンンンンンン!!!


「ぎゃあああああああああああああああ!」


 俺は鞭で叩かれた。久々の乗馬鞭である。と言っても、なにげに昨日も叩かれたか。なんかあの時は謎に世界の時間が加速していて、威力というか、音も短めだったけど。


 伊巫さんは瞬時に俺から離れた。その俺はと言うと、彼女を上に乗っけたおかげでエクストリーム衝動が身体中を駆け巡り、さながらビブラートの如く震えていた。


 要は、緊張のし過ぎで満身が痙攣、微振動が起こっていたのである。


 それに共鳴するかのように、その微振動を享受する、俺の上に乗っかった伊巫さん。彼女も軽いバイブレーション状態だった。声とかがガクガクいってた。下から振動が伝達された感じ。


 なんつーんだっけ、こういうの……『電機あんま』?

 いや、それは違うか。なんか別の言い方があった気がするんだけど。


「い、痛い……めっちゃ痛い。左肩が……死ぬ…………あああ……痛いいい…………」


「……え。そんなに痛いの」


「ふぐううう……ああ……痛いい…………」


「ええ……藤見くん、そんなに?」


 そんなにである。めっちゃ痛かった。なんか、いつもの比じゃない痛さ。皮膚が裂けた気がする。すごく熱い。


 鞭の強さが異常だった。俺は悶絶。意識が遠のく。と、俺から離れた時に深く息を吐いていた伊巫さんが、何か言っている気がする。彼女が俺に覆いかぶさるような景色が脳裏に浮かぶ。が、やがて消える。


 やべえ。おばあちゃんが手ェ振ってる。いや、俺のおばあちゃん亡くなってないんだけどね。百二歳、現役ユー○ューバー。すごい健康長寿、元気。



 ■



『ここはどこ? あなたは誰?』


『私は天使です』


『天使……思ったより美人なんですね。伊巫さんに似ています。あ、ボクの知り合いなんですけど』


『そうですか。嬉しいことを言ってくれますね。お礼に生き返らせてあげましょう』


『え。いいんですか。公私混同過ぎませんか』


『いいのよ。部長天使である私の権限において許します。バレたら豚箱入りだけど』


『はあ。会社員なんですか』


『あなたはまだ、ここに来てはいけない。あと八十六年は生きるわ』


『うわあ結構長生きなんですね、俺。そういうの、個人に教えちゃっていいんですか』


『うん……まあいいんじゃね。毒を喰らわば皿までってね。それに、あなたには待っている人がいる』


『待っている人……』


『行ってあげて。彼女はあなたのファムファタル。それと、《異域乖離(パラレル・イゾラ)》が崩壊しかけている。多次元複素数層域及び同時間軸遷延形而上該当方式伝達物質の融合が見受けられるわ。あなたに肉界への蓴羹鱸膾がまだ存在するなら、騏驥驊驑の如く駆け出しなさい。彼女のSOSは何処かにあったハズよ』


『全く読めない……要は生き返れってことですね。ていうか俺、死んでたんですか』


『質問は受け付けません。たった今、私の業務時間が終わりました。ここからの質問を望むのであれば、あなたが残業代を負担してください』


『なんですかその課金制みたいなの……』


『おらさっさと行け。私のクールタイム邪魔するんじゃねえ』


『え、ちょっと押さないでくださいよ。落ちる落ちる、墜ちますって』


『おらおらおら』


『うわーーーーーーーーーー』



 ■



「──ハッ」


 目覚めた。


 なんか、背中に羽根の生えたキャリアウーマンみたいな人に会っていた気がする。というかこんな展開、前にもあった気がするな。いつ、どこでだったっけ。(第十七話参照)


 と、伊巫さんが横で正座をしていた。無論、その格好はエナメルボンテージ。


「ごめんなさい。魔力与(マージナル・)式分解(エフェクター)が大き過ぎたわ。ちょっと強めに設定されちゃった」


「えっと……何が起こった感じですかね」


 横に鎮座する伊巫さん。もう()()()ではない。俺のすぐ傍、地面の上に丁重に佇んでいる。


 その顔が、若干赤く染まって見えるのは気の所為だろうか。それと、なんかやけに唇を気にしている。どうしたんだろう。飯でも食ったんかな。俺、そんな長い間気絶してたの?


「そんな長い間気絶していないわ。ほんの一分くらいよ、藤見くん」


「はあそうなんですか。それより、伊巫さん顔赤いっすよ。唇がどうかしたんですか? なんかあったんですか?」


「別に」


「……なんかあったんですか?」


「別に」


「なんk「別に」」


「……」


 台詞に割り込まれた。まあ、言いたくないっぽい感じならいいんだけど。大したことでもないだろう。


 と、ふと気がつく。さっきまでの鞭の痛みが、いつの間にか消えている。ああ、そういえば伊巫さん魔法使いだったな。ちょくちょく忘れる設定だけど。


 魔法で痛みを軽減してくれた感じだろう。まあそもそも、痛くさせたのも向こうだけど。マージナル……なんちゃら? が、どうたらこうたらって今言っていたな。


 話の流れ的に、それを調節すれば与える痛みの量が変化する、といったところだろうか。魔力量調節、みたいな。そんなマニュアル式の攻撃だったのか、あの鞭は。


 そういえば、この前も魔力調節がどうたらこうたら言っていたな。(第二十七話参照)


 まあそもそも乗馬鞭なんかで打たれたら、人間普通に死ぬよな。なんで俺毎回命拾いしてたのか甚だ疑問だったけれど、そういうことだったのか。やっぱ人為的な痛覚及びダメージ調整入っていたか。


 おっかな過ぎる。伊巫さんのさじ加減で、指先一つで、俺の生死が定まってしまう。


 それはマジでやばい。この人は不注意の人だから。不注意の権化。その不注意力なら、この学校一と言ってももはや過言ではないだろう。この人の運転する車には乗りたくない。(第二十四話参照)


「伊巫さん。結局体調は大丈夫なんですか? それ、正座とかしちゃってていいんですか?」


「うん、まあ。地面から三ミリ浮いてるから私」


「そういう問題なんですか……?」


 俺は仰向けに寝っ転がったまま、伊巫さんに尋ねた。色々で疲れてるから、まだ起き上がる気力なし。


 そして、普通に応えた伊巫さん。顔の赤みも、もう消えている。どうやら彼女の方は色々で落ち着いたらしい。


 その伊巫さん。未だボンテージ。


「……」


 復活したのは、俺の魂だけではなかったらしい。俺のエクスタシードリーム、略してエクストリームも同じであった。オナじであった。


 正座する伊巫さん。気品のある佇まい。しかし、その衣装はどスケベ女王様ルックである。しかも首輪付き。大いにそそる。そそりました。滾りました。ありがとうございました。


 鎮まれ俺のエクストリーム……ここはお前の主戦場じゃない。帰ったらいっぱい構ってやるからな? な? だから、今はその昂りを鎮めるのだ。啓蒙せよ。


「藤見くんどうしたの?」


「先輩近いです」


「なんか顔色が悪いわ。大丈夫?」


「南無阿弥陀仏」


「様子がおかしい。ちょっと熱測るわね」


「近い近い見える見えてる南無妙法蓮華経」


「浄土宗なの日蓮宗なのどっちなの。やっぱ様子がおかしい。保健室まで運ぶわ……よいしょ」


「無理です無理です伊巫先輩。なんであんたが大の男運べるとでも思ってんですか。無謀過ぎますよ近過ぎですよ」


「為せば成る。為さねば成らぬ?」


「『何事も』。ってか訊かないでくださいよ。あと近い近い近い」


「ん? 藤見くん()()携帯持ってるの?」


「ああーそれゔぁ携帯というか俺の最終形態というかー……あふん」


「? どうしたの?」


「当たってます当たってますナニが! それに見えてる見えてるさっきからグランドキャニオン上から覗いてますって。あれ思ったよりあるな伊巫先輩、隠れ富士山っすか?」


「さっきから藤見くんが何を言ってるのか私わからない」


「え、わからないんですか?」


「……?」


「えっ」


「?」


「…………」


 あれ? 知らないの? ()()知らない?

 え? 伊巫さん、もしかして。……



 ガラッ。


「〜〜〜〜♪ ワイが来たで〜〜♪ やがて来たで〜〜♪ 正義の味方〜〜♪ 蓑路ッ」


「吉井ッ」


「ふたり合わせて〜〜!?」


「あ、僕は合わせなくていいかな」


「ズコーッ。……うん?」



 いきなりドアが開いた。その前にも鼻歌は聴こえていたが、伊巫さんのゴタゴタで、意識して気を付けていなかった。


 ドアの前では蓑路と吉井が突っ立っていた。なんで来たのだろう。ここは体育倉庫だ。それも、絶対に誰も来るはずがない。


 なのに、来た。それも二人も。なぜ来たのかはわからない。蓑路と吉井、意外な組み合わせだったのもあった。俺は硬直していた。


 ただ、その二人の視線が薄暗闇の先客の存在に気づき、一瞬だけチラッと、例のサッカーボール上のシュークリーム積みに向けられたのは察知した。


 そして向けられるその視線。


 の、先は俺。

 と、伊巫さん。

 が、床の上。

 で、もつれ合う。

 ような、光景。

 を、凝然と立ち尽くし。

 ながら、見ている男二人。

 は、わなわなと震え。

 まるで、見てはいけないモノを見てしまった。

 かのように、すぐさまそのドア。

 から、逃げるように。

 して、立ち去った。

 けど、ちゃんと律儀にそのドアの隙間。

 には、一ミリの空間。

 さえ、無く閉まってい。

 て、残された俺たち。


 もう、希望などあるはずがなかった。


「伊巫さん……」


 傍らを見遣る。彼女の顔は無表情だった。ただひたすらに、無表情だった。


 俺は彼女の顔の前で、手をひらひらやる。が、反応は無い。


 ──伊巫杏子、沈没。(二〇XX年五月某日)


 ボンテージハレンチコスチューム伊巫さんは、下級生とイチャコラしている(ように端からは見えていただろう)間に、その姿を別生徒に見られ。


 あえなく、しかし果敢に、その生涯──学生生活を、閉じた。……



最後の方むちゃくちゃ強引。

(そもそも六割ほど助詞ですらない)

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