第三十話 繧オ繝舌う繝舌Ν繧イ繝シ蜴カ
「あれ、衛府さん。お久しぶりです、珍しいですねぇこんな所で。ハッハ、奇遇奇遇」
「え、藤見くん!? 何やってんのこんな所で!」
「ふぇ?」
俺は首を傾げる。少し間抜けな声を出しながら。その目線の先には、衛府さんがいた。
久々の登場だ。十五話目以来だろうか。地の文だけなら、二十一話でも出てきたが。
そして現在、彼女は何故か迷彩服で匍匐前進している。(回想↓)
俺は、例の部室『歴史研究同好会(仮)』へと向かう途中だった。今日も今日とて、伊巫さんと部活(会活?)だ。
と言っても、何もすることはないのだが。
先週金曜、つまり三日前に、彼女と二人三脚プレイをした。で、それは中庭であった。
中庭は人通りが少ないと言えど、やはり放課後でも若干は生徒がいる。
それが掃けないと、練習が出来ない。
そう、俺は二人三脚の練習を、律儀にも伊巫さんとしてあげようと思ったのだった。
この前、金曜日の第一回に引き続き、今回は第二回目。
今日は月曜日である。週が明けた。
もちろん、土日に練習などしてないが。当たり前だ。
ちなみに前回の練習は結局、全然上手に走れなかった。
伊巫さんヨチヨチ転びまくり。困惑・俺、棒立ち。
どうせ伊巫さんは放課後、だいたいこの部室に鎮座している。
だから、下校時刻ギリギリになって、中庭の人がいなくなるのを見計らいつつ、またそれを待ちながら。
図書館で借りてきた本でも読んでよっかなと考えた俺。
まあ、練習しなくてもどっちでもいいけどね。俺に伊巫さんの競技の勝敗は、関係ないし。
でも、いずれにせよ、部室(会室)には来たほうが良いかなと思いを巡らせ。
現在、この離れ校舎・一階。
上階の、部室へと続く階段を昇ろうとしたところ。
謎に迷彩服で匍匐前進を敢行中の衛府さんと、エンカウントした俺なのであった。
(回想・終)
「回想長くてすまん。ところで衛府さん、何やってんすか、そんな陸上自衛隊みたいな格好して。軍服女子? ミリタリーファッション?」
「何やってんすかはこっちのセリフだよ藤見くん! 質問二回目! 重複! 罰金!」
「ええ、罰金!? 嫌ですよ衛府さん、俺今二十円しか持って9th」
「はーシケてんな。シッケシケですね藤見くん。というか、ここ今封鎖中ですよ。なんで入って来てるんですか、なんでパンピーがいるんですか本題突入!」
「ふぇぇ? 閉鎖チュウ?」
「そーですよ。今、体育祭の前哨戦が行われているんです」
「体育祭の前哨戦!? つか、体育祭に・前哨戦!?」
「シッ。敵に気付かれます。声のトーンを落としやがれ」
「は、はい……」
衛府さんに命令され、小声になる俺。
なんかこの人も怖い。Sのオ〜〜ラ。
……こういうキャラだったっけ?
いかんせん、登場が二週間くらい振り過ぎて、全くキャラを覚えていない。
割と初期から出た人だったが(何気に初出は第三話、この物語の出場キャラ三人目)。
見切り発車過ぎて、完全に忘却曲線マイナス値なのだ(そんなものは多分ない)。
「で、えっと……前哨戦って何なんですかね? ちょっと想定範囲外の単語にびっくりで、頭が混乱で、びっくりなんですけど」
「え、藤見くんプログラム読んでないの? 体育祭の」
「プログラム? ……ハッ」
思い出す俺。その脳裏に、先日伊巫さんが持っていた、あの謎の国語辞典みたいな分厚さの冊子のイメージ。
たしか彼女も『プログラム』とか言っていた。体育祭の。
何なんだ結局、あの伏線は? というか、衛府さんもご存知ということは、生徒の共通認識なのか?
全員に配布された、学校公式な物なのか?
「お、俺にだけ配られてない……?」
「は? ホームルームで言ってたじゃんし」
急にギャル語になる衛府さん。かなり雰囲気がピリピリしていらっしゃる。
まるで戦場人だ。いや、格好はまさにその通りなのだが。
「あ! もしかして、木曜日の帰りの会ですか? 俺、寝てました……」
「ええ、寝てたの? はー、じゃあ知らないか、プログラム。『教室の後ろに積んどくから持ってけ』って、学級委員の山田くんが言ってたのに」
「学級委員の山田くんが言ってたんですか。えー、だとしても、俺が起きた時、そんなのありませんでしたよ」
あんな分厚いのあったら確実に気づく。俺でさえだ。
が、俺が目が覚めて、部室に行こうとした放課後。その時も、そんな珍妙な物体は、教室のどこにもなかったと断言できる。
あったら気づく。俺でさえだ。(二回目)
「ああ、じゃあ誰かが二個三個持ってったんですね、おそらく。私はもちろん一冊だけです。
もしくは、人数分発行されてなかったとか。そこら辺は、学級委員の山田くんの領分でしょうけど」
そう簡潔に推理し、まとめた衛府さん。割と会話がスムーズ、優秀だ。
つーか、また山田だよ。学級委員の山田くん。
出席番号順に種目を割り振った張本人。ついでに係も同。今回のゴタゴタ、諸々の戦犯。
や、山田〜〜。ちゃんと働けよ〜〜。
まあ、そんな大事な時に寝ていた俺も俺だが。
というか、誰か起こしてほしかった。……
「あ、そういえば藤見くん。伊巫さんの人生伴走者任命なんだって? おめでとうございます&ありがとうございます」
「いやー『人生』ではなかですよ。普通に普遍に一般的に至って平凡に、今度の体育祭オンリーJUSTです。期間限定技です」
「へー期間限定メニューか。いいねー美味しい展開だね。青春ッ」
「ハッハッハそんなもんじゃ長門ですよ。そういや衛府さん、」
「ところがドッコイしょ!」
「へえ?」
と、いきなり俺の背に隠れて衛府さん。
隠れたというよりかは、俺を盾にして躱したと言ったほうが正しいか。
後方に回られ、ガッシリとホールドされる俺、わけがわからない一瞬。
ガッシリと俺の背広をホールドするミリタリー衛府さん。素早い動作で、既に匍匐前進モードは解いている。
ホールドして盾にしたわけか。上手いね。
それにしても、今まで彼女はずっと匍匐前進の形でいたわけだ。その体勢のまま、これまでの会話を俺と紡いでいた。
なにげにシュールな構図であった、今思えば。俺も衛府さんの軍服のファーストインパクトで、一周回って何も疑問を感じないようになりつつあったが。
すげえポーズだった。
衛府さんのFカップおっパイが地面に潰されて、『どすこい!』って感じだった。
その『どすこい!』が見事なまでにうつ伏せになった上体、胴体と学校廊下の床にサンドウィッチされて、いい感じにひしゃげ、歪み、たわみ、縺れ、弾け、縮み、広がり、圧迫し、潰され、反射し、緩み、反発し、和らぎ、こねくり回し、動き、這って、止まり、揺れ、押され、抑え、膨らみ、崩れ、保ち、壊れ、蘇り、撞き、伸び、攻め、守り、呼び、応じ、与え、受け取り、差し出し、拒み、解き、繋ぎ、迷い、振り返り、遮り、前を向き、歩き出し、振り切り、断ち切り、手を伸ばし、掴み、光へ、未来へ。……
ッタアアアアアアアンンンンンンン!
「ぐぶふうッ」
俺は撃たれた。狙撃された。
胸から赤いものが見える。俺のYシャツが朱色に染まりて、天を穿つ。
ああ、魂が燃ゆる。全ての生命の光を解き放ち。
生と死を分かつ、最後の血潮が道しるべとして大地を流れ込む。
分解し、崩壊し、瓦解し、全壊され、その原子たち、炭素は、水素は、酸素は、窒素は、次なる世代へと受け継がれ。
俺の魂は、さらなるステージへと、今、誘われる。
その全ての記憶と想いすら置き去りにして、躊躇いを犠牲にすることあたわず、末の世を思いて、憂いを僅かに残す、それさえも化作は無上の罪なのだと。……
「ラッキー、藤見くんありがとう♪ ナイスぅ!」
「えー衛府さん何なんですかこれ……」
「前哨戦だよ♪ きゃふっ」
「クソっ。可愛いな……」
「じゃー、パンピー藤見は立ち入り禁止区域を跋扈した罪で。滅亡! バイバイ!」
「いやちょっと待って下さいよこれ、わけワカメっす説明プリーズ」
「グーテンターク♪ オ・ルボワール♪」
「クソっ。なんて可愛いんだ、卑怯だろ……」
「フッ、」
と、衛府さんは猛烈に前転すると(めっちゃスマートで綺麗すげえ)、すぐ隣の教室へと侵入、潜伏、離脱した。
その先──旧理科室だ。ここ、離れ校舎の。
離れ校舎はもともと、専科授業の教室が組み込まれていたらしい。
それが何年か前の大規模な校舎一新工事、その改修により、ほとんど使われない建築物となった。本校舎にあらゆる役割が移送されたのである。
で、たまにこうして伝統的に、イベントの際だけ使用されるのだ。
普段ほぼほぼ使われないし、生徒も全然いないから(部室として使用している伊巫さんくらいのもの)、こういう派手なドンパチやるにはフィールドとしてちょうどいいらしい。
そして、今現在行われているのはそのイベントの一つ、通称『前哨戦』と呼ばれる、体育祭一週間前の予選みたいなものである。
前回、疑問に思ったこと。体育祭プログラム、その分厚さ。
無論、当日一日間では終わらない内容である。ここいらでも屈指の部活奨励校である、この高校。部活ごとの競技種目が鬼のように多いのだ。
その当日入り切らない分を、一週間前から(月曜〜金曜、土曜までの五日間)の放課後、ここ離れ校舎で執り行ってしまおう! ……という考えらしい。
ちなみに、今日月曜日はサバゲー部の領域。
衛府さんはテニス部のエースでありながらも、兼部してサバゲー部にも所属している。すごいね。
──という情報を、俺が知ったのは後の話。
現在の、狙撃された俺は横たわって、ただただ困惑するばかりである。
「チッ。防いだか」
パラタタタタ、ダダダダ、ッタァンン!
タァン! タァン! タァンンン!
ジャコ、ガチャ。ゴトッ、パキッ。
ダンッ。ガッ、パラタタタタ。……
「衛生兵、衛生兵ッ。またもや衛府にやられましたッ。これで被害者は九つでありますッ」
「クソッ。手強いッ」
「え、衛府め〜〜ッ」
『おい、何やってんだッ。相手は一人だぞッ』
「わかってらぁ……お?」
ッタアアアアアアアンンンンンンン!
「ぐぼあッ」
『おい、どうしたッ』
「ああ、隊長ッ」
「た、隊長が、」
ッタアアアアアアアンンンンンンン!
ッタアアアアアアアンンンンンンン!
「がべふッ」
「びぎゃちッ」
『!? おい、どうしたッ。応答せよ、応答せよッ』
「……」
「……」
「……」
『〜〜? 〜〜、〜〜〜〜!?』
ッタアアアアアアアンンンンンンン!
『……』
「ふいー、終わりましたぁ。あ、パンピーくん滅亡か。うーん、わざわざ戻って来なくて良かったな。てへぺろ☆」
「……」
お、俺はどうすればよかですか?
衛府さん。……
今更ですが、九話の終わり方をまあまあ変更させていただきました。
『帰ろう』の後に、ドアノブの色々を挿入した感じです。
それに合わせて二十一話も若干修正しました。(昼飯、伊巫さんじゃないの? の下り、まあどうでもいいです)
後の壮大な伏線にしようと思っておりますが、ちゃんと果たされるかはわかりません。
それと、今後も色々ウニャウニャと改稿するかもしれません。(無駄足掻きかも)
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。m(_ _)m




