第三話 お友達
アドリブ、アドリブ……
思ったより展開進まんかった。すみません。
女である。
女体である。
「──ふおおおおおおおおおッ」
前回のあらすじ☆
魔法使いと名乗る先輩にあった。
その人の部活(現同好会)に入部した。
部員を募れと言われた。
女体化した。
……最後意味わからん。
「これが合法オッパイ揉み揉みちゃんか……」
俺は今自宅にいる。夜。
あれから帰った自宅の自室で、自らの変形した女体を堪能中である。
……魔法すごくね?
……これチートじゃね?
■
「伊巫さん!」
次の日。
「朝から元気ね……なに?」
「すっっっげーですよこの能力! マジぱねえ! 本物ですよ? 本物の女体ですよ! 滾るッ!」
「そうねそれはよかったわね。……ところでここは教室よ」
そう、教室だ。二年A組、伊巫先輩のクラスである。
「部活の後輩ってことで! つかそうなんで!」
「声が大きい」
「あ、すみませ……」
周りにペコペコとお辞儀をする。
「しかし、本当に誰にもバレないんですね。いや、バレないっていうか、気にされないっていうか……」
「そう。あなたは女の子なの。親から見ても、クラスメイトから見ても、先生から見ても、近所の犬のポチから見ても」
「そういえば……ウチの親も、何も言わなかったっす。普通に、いつも通りでしたね」
「でしょうね。そうなっているんだから」
「あ、でもクラスの俺の友達からは避けられたかな。なんか、敬遠される感じだった」
「女の子だもの。シャイな男子は迂闊に関われないわ」
「じゃあ、俺の学園生活はどうすればよかですか?」
「主体性がないわね……普通よ」
「ふつう?」
「そう。フツウ。あなたは普通の、一般的な、至って平凡な女子高校生なの」
「じょしこうせい」
「ま、友達が作りたければ、クラスの女子とでも仲良くなれば? あと、部活勧誘も忘れないでよね」
「…………」
俺は少しの間頭が真っ白になった。
……女の子になって、女体を楽しむ以外に何をする?
……そもそも、女の子ってなにして生きてんだ?
「…………?」
「ま、深く考えないでいいわよ。せっかく女の子になったんだから、楽しみなさいな。人生は配られたカードでしかデュエルできないって、なんか耳の黒い白犬も言ってたわ。seize the day」
発音いいな。
「──りょ! とりま、あーし、ダチ公メイクしに、ゴーイングトゥーっぴ☆」
「……あなたの女子高生観がよくわかったわ」
「バイならっぴ☆ また、バック・トゥ・ザ・クラスルームっぴ☆」
「また来るの……?」
俺は教室を抜け、走り出した。
俺の冒険は、ここから始まるッ!
「コラァ、そこの女子生徒ォ! 廊下は走るなァ!」
「ひ、スミマセンッ!」
■
「えっと……こんちわ」
クラスの女子に話しかけている。
俺もその、シャイで迂闊に女子と関われない人種の男だった。
……いや、今は女か。
「ん? 藤見さん?」
「ひゃいッ」
自分から話しかけておいて、不審な驚きようである。
しょうがないよね、(元)男の子だもんっ。
俺は勇気を振り絞って、今女の子に声をかけた。
クラスの子だ。地味そうな、教室隅っこで本を読んでいる眼鏡っ娘。
まずはジャブだ。最初から飛ばしてはいけない。
あそこの窓際にたむろしている、ハイエナみたいなカースト上位の女子には……まだ、心の準備ができていない!
って、品定めしている時点で俺もけっこう浅い人間だけど……いかんいかん!
こんな調子じゃ、女の子と会話なんてできない!
もっと、シャキッと、気を張らなければ!
『きゃるん☆』
……ちがうな……
『キャピ☆彡』
……これも違う……
『うっふ~ん♡』
……俺的には好みだけど……
「あの……なんですか?」
「はう!」
見られていた。俺の不審な行為を。
「えっと、これは気を張っていたというか……」
「はあ……」
眼鏡っ娘は不審な眼で俺を見ている。
やばいやばい。女の子と目があった。
やばいやばいやばい。
「えっと、おはにゃししたいなー、なんて」
噛んだ! クソッ! オッパイ!
「お話し、ですか?」
「えっと、まあ、その……」
エットエットうるせえわ!
おのれはエット星人か!(混乱)
「なんのお話でしょう?」
アドリブ、アドリブ。……
「は、はい、お、俺……私と、オトモダチになら、なりませぬかなー、と」
もうやだ。グダグダ。
この娘、いい子過ぎる。こんなうん○こみたいな俺の存在を認識して、傾聴して、その限りある生命である時間の一瞬一瞬を俺のために費やしてくれるなんて……(泣)
「はあ……友達、ですか?」
──お?
「……ッ、はい! 友達ですッ」
──イケるっ!
「はあ、友達……」
──イクッ!
「お、わたすと、とみだちになってくださいッ」
……また噛んだ! クソ! マンッッ!
っつーか、わたすって何だよ!
どすこいって感じじゃねーか!
ドスコイ系女子か!?(狼狽)
「あ、はい、いいですよ」
──おお?
「そ、そんなぬ、簡単ぬ!?」
「はい、『友達』……でしたよね? 別にいいですよ?」
「ホントに!? 嘘言わない!?」
「はあ、まあ、そんくらいなら別に……」
──うおおおおおおおおおおッ!?
「あ、ありがろん! ございます!」
「はあ……」
「あの、お名前は!?」
「え……知らなかったの……?」
「いえ! 存じ上げております!」
た、たしか、えー、エー、……『エなんちゃら』。
「いや、エット……その、ッハ!」
そうだ、出席簿に書いてある!
ダダダッ……あった! 確認ッ。
『衛府』だ!
「えいふさん!」
「エフです……」
「あ!」
……やあっちまったああああああああ!!!
「……ああああ、ああああああ…………」
「──くすッ」
……なんだ?
……何故この少女は笑っている?
俺を、崩折れた俺を……世界に一つだけのダーティーフラワーを……卵のカラザにも満たない存在を……エ○ァに乗れないシ○ジ君以下の、この俺を……
「いえ、あなたの反応が面白くって──ユニークですね」
反応っつーか、挙動(不審)っつーか。
「それに、まだ入学して一週間ちょっとですし、名前覚えてないのは仕方ないですよ。大丈夫です」
天使だ!
天使がここにいるッ!!
「友達、ですね。不束者ですが、よろしくお願いします。ぺこり」
そう言って、衛府さんは丁寧にお辞儀をした。
俺にである。
座りながらくるりとこちらを振り返って──いつの間にか読んでいた本を机に置いて、椅子を横に座るような感じで、上体を俺に向ける。──
『どすこい!』
瞬間、俺の脳裏に、そんな効果音が流れた。
なんと、衛府さんは胸が大きかった。
間違いない、Fカップ以上はある。
オッパイッ!
『ぼいーん』、じゃない、『どすこい!』 である。
これがホントのドスコイ系女子か!
「い、逸材だ……」
「はい?」
「いやいや、何でも何でも何度でも──ッハ」
『あと、部活勧誘も忘れないでよね』
伊巫さんの言葉を思い出した。
「あ、ああのよろしければ、本当、お手隙の際で構わないんですが、っていうか……。ボクの部活に入部してもらえませんかね? っといっても、今は同好会なんですが……」
「あ、私テニス部で忙しいから無理です」
ノオーーーーーーーンンンン!
「ハハ、左様でゴザイマスか……」
俺はヘコヘコお辞儀をすると、教室を走り出た。
青春の涙の味を噛みしめながら。……
──つか、テニス部!?
あのビジュアルで!?
教室の隅っこで読書してる文系美少女キャラじゃないの!?
「コラァ、そこの女子生徒ォ! 廊下は走るなァ!」
「ひ、スミマセンッ!」
■
「今回地の文カッスカスね……怠慢ね」
「すみません」
駄作っぴ☆
……ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。