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いふ☆いふ 〜先輩は魔法使い〜  作者: 岩流佐令
5月 体育祭&家庭訪問
29/59

第二十八話 ミッション:《ホイップ》

「うん? お前ら何やってんだ?」


「うおっ。藤見ィ!?」


 前回と全く同じ導入である。……ごめんね?

 体育館倉庫。そこに俺は居た。ドアを開けたところだ。


 斎藤と吉井だ。そいつらが、なんか知らないその他二人ほどの男子生徒(上級生かな?)とう○こ座りしてたむろしていた。吉井だけ跳び箱の上でくつろいでる。

 その床に、数冊の魅力的なオ〜〜ラを放つ灰色の雑誌を拡げたまま。


「あー藤見くん、さすがだね。さっすが『覗き見の藤見くん』だね」


「だから俺にそんなあだ名ねえっての、吉井! もう本当にやめてくれよぉ……」


「うん? おう、お前一年の王子じゃね?」


 と、見知らぬ上級生の一人が言う。

 ……俺に? ああ、俺にっぽい。

 つか、『王子』? 何なんだそのダサいあだ名。まさか俺のことじゃねえよな。

 と、また別の一人が俺を手招きする。


「おーうホンマや。王子王子。おいお前もこっちゃ来いよ。カムカム」


 関西弁(エセ?)の上級生に来い来いされて、俺は自然と足を歩ませた。なんとなく、反射的に。たどり着く。

 その人にハンドジェスチャーで座るように促され、その通り、座る俺。


「藤見ィお前何しに来たんだよ。鍵掛かってたハズだろ、倉庫の鍵。どうやって開けた?」


 と、斎藤が俺に向いた。その親指は倉庫のドア、さっきまで俺が突っ立ってたところ、を指す。


「いやどうやっても何も、普通に鍵でだよ。俺なんか、いつの間にか用具係に任命されてたらしいからさ。ほら」


 ちゃりん。鍵だ。

 俺が先生から渡されたやつ。手に持っている。

 用具係──本当に、俺が任命された役職である。今度の体育祭の。


 この前のホームルーム。

 俺が睡眠中、やる気ナッシングの学級委員に、勝手に出席番号順で割り振られた事件、前回参照。

 まさか係さえも適用されるとは思わなかった。つーか、普通に『係の人数』と『学級の人数』は釣り合わない。当たり前だ。


 が、それを無理矢理強引に、出席番号一番・相生から始めたクソ適当学級委員・山田。

 で、ちょうどピッタで俺・藤見が最後の役職(用具係)だったわけである。

 つまり、本田も松沢も吉井も渡辺もセーフゾーン、役職ナシ。

 もちろん、山田も。あんにゃろう図ったな?


 つーか、皆も反対しろよ。何ちゃっかり合意してんだよ。マジ適当過ぎんだろ。何の意義があんだよホームルーム。

 別に山田が特別、権力者な訳では無い。皆も全くやる気ナッシングなのだ。

 若いね〜〜。


「はーそういや、そうだったな藤見ィ。俺ゃてっきり、()()()の匂いを嗅ぎ付けて来たんだと思ったぜ。勘繰ったぜ」


「そうそう。ハンターだからね藤見くん。その目利きで、女体をGET♪ エロスをGET♪ ついでに伊巫先輩もGET♪ だね♪」


「なんだよそれ吉井!? 俺がいつそんなムフフ発見機(?)みたいな存在になったんだよ!」


 斎藤と吉井が交互に言う。斎藤の方は()()()と指しながら、体育倉庫の床に散らばっている、魅力的なオ〜〜ラを放つ灰色の冊子を示している。

 いや、本当に交互に言ってくれるから、地の文で説明しなくてもいいよね? 口調とかでキャラ察してね?

 ……ありがたい。


「その罪……重いぜ?」


「ついでに伊巫先輩も?」


「だああぁもう! もうもう! 伊巫さんはそんなに重くない! 四十四キロだ!」


「ほう。王子の情報入ったぞ。『二年A組出席番号六番・伊巫杏子の体重(イコール)44kg』。よし、記録した」


「いい仕事やね、王子」


「へええ!? いつの間に俺、情報提供者になってる!」


 と、拳を付いてくる関西弁上級生。と、灰色の冊子の裏表紙にメモを取る普通上級生。


「つか、呼びづらいので名前教えてくれませんかね?」


「人に名乗るまえに自分から」


「あ、そっすね……うん? 日本語間違ってません?」


「お前藤見だろ。知ってる。有名人」


「え! 俺有名人!? 何でですか?」


「俺、六雲(むつも)。名前の由来は、今筆者が適当に決めた」


「ワイは蓑路(みのじ)やで。名前の以下略、上に同」


「はあ……」


 六雲と自己紹介した二年生、蓑路と以下略三年生。前者は緑色ネクタイ、後者は紺色ネクタイ。

 ちなみにこの高校は学年ごとにネクタイの色で分かれており、


 一年→赤

 二年→緑

 三年→紺


 となっている(今決めた)。


「まー見つかったなら、しゃーなしやな。おう六雲。コイツも仲間に入れへんか?」


「うーん。会員は少ないほうがいいんだけどな。人の口に戸は立てられず。うっかりバラされでもしたら……」


「あーそれなら大丈夫ですよ六雲先輩。僕こと吉井が太鼓判押します、藤見くんはウソ絶対付けません」


「おーそうか。なら、だいじょばないな。全然だいじょばない」


「まあ藤見ィ誘うのは止めときましょうよ先輩方。こいつにはこんな崇高で高尚なる任務は任せられねえって」


「ちょっとあなたら、当人である俺を差し置いて色々言わないで下さいよ! 全く追いつけません!」


「うん。まあ藤見くんはこっちゾーン来なくていいから。はい、『びいー』」


 びいー、と手でラインを引く吉井。隔離される俺。蓑路が、魅力的オ〜〜ラを纏ったその灰色ブックを隠す。


「え、何なんですかその魅力的オ〜〜ラを醸し出す灰色ブックは。なんで隠したんすか? ちょっと俺にも見せてくださいよ」


「まあまあまあ。これは原本というか永久保存版というか、ヒラ会員でもお目にかからせられない特別なヤツだから。王子にはまだ早いかな」


「だから、その『王子』って何なんです? まさか俺の呼び名……?」


「えーだってそうじゃないの藤見くん。こないだ伊巫先輩おんぶしてたじゃん。噂によると、朝学活の前にどっかの廊下で、大胆にもお姫様抱っこまで敢行したらしいじゃないか」


「あ、それ俺見た」


「マジっすか六雲ォパイセン! え、どこどこ」


「いや二年A組の目の前だよちょうど。俺もクラス隣だからさ、すぐダチに『こっち来いよ』って呼ばれて、で、無事野次馬」


「ハッハッハ。やるやんけジブン。そりゃあまさに『王子』だな。王子王子」


「ちょっと会話文多いんで整理させて下さい」


 んーと、つまり? Now Loading……↓


 たぶん、蓑路先輩が隠した灰色冊子は、例の『学校ガイドブック(裏)』で間違いないだろう。で、話の流れからすると、会員制らしい。

 その上層部っぽい、こいつら四人。ヒラ会員ではないそうだ。今隠したのは、その原本みたいなやつ。特別で大切な感じ。

 で、それの会員(恐らく上の方)に誘われた俺。が、不採用。ガイドブックは秘匿にされる。


 それと、俺が『王子』呼ばわりの理由。

 これはめっちゃ単純だろう。つまり、俺が伊巫さんを抱っこしたことだ。

 そういや、緑市(みどりいち)さんにもそんなふうに呼ばれてたな(二十一話参照)。

 何なんだろう。安直過ぎん? もうちょいひねってよ。何かダサいじゃん。

 俺、嫌だよ? そのあだ名(あだ名というのは、大抵本人の意思が届かないステージにある)。


 ──と、いうわけだ。


「つか、そういえば俺、用具係の仕事あるんでした。すみません、ちょっとそこ通っていいですかね?」


「ああ、すまへんね」


「おう、すまんな」


 蓑路、六雲が退く。その奥の縄跳びを取り出す俺。丁度いい長さを選ぶ。

 うん、これで良いかな。運び、ドアまで歩く。


「ああ。入ってきたってことは、あなたたちもドアの鍵持ってるってことですよね? 最後一回締めといて下さい。しばらく出しておくので」


「えー僕たちそんなの持ってないよ」


「そうそう。全部斎藤がやってくれたんだぜ?」


「え? どうやってだ斎藤?」


「裏ルートってやつよ。へっへっへ」


 ほくそ笑む斎藤氏。こいつは、そういえば学校の忍び込み方もマスターしてたな(十四話参照)。

 というか、体育館倉庫に裏ルートってなんだよ。マジでどうやって這入ったのか謎だ。


「……まあ、一時間後くらいにまた戻って来るので、それまでには出払ってて下さいよ。鍵締めるんで」


「オッケーオーケー藤見くん」


「まあ任せとけよ王子。いってらっさい」


「はあ……」


 吉井と六雲に見送られ、倉庫を後にする俺。ちなみにこの学校に倉庫は二つあって、地下アリーナ(体育館)のと、校庭のがある。

 校庭の方は今清掃中らしいから、俺はわざわざ地下の方まで来た。階段を下って。


 つか、こいつらもなんでわざわざ、こんなところでたむろしてんだろう。もっといい場所あるだろ。無いのか?

 それに、結局何やってたんだろうな?

 なんか来たときの雰囲気は作戦会議っぽかったけど。皆輪になって仲良く座ってさ。


 ま、いいけど。どうでもいい。

 だから、俺が倉庫を去る、その背後から、



「で、どうよ? 『ミッション・ファーストエンジェルホイップ』の進捗状況は?」


「うん。僕のバイト先のコネで、特殊窒素封入手法を手に入れたよ」


「ふ、上出来だ吉井ィ」


「やるなあ吉井はん。ワイの方も『ホイップ』の目処は付いたでえ。色、粘度、透明度。匂い以外は完全再現や」


「さっすが吉井、蓑路。仕事が早い」


「いいえ。これも六雲先輩の的確な指示とその敏腕のお陰ですよ」


「そうやな、そうやな」


「いやいや。俺は大したことないよ。時に斎藤、リストアップは終わったか?」


「いやーまだなんす六雲ォ先輩。ちと厳選に時間が掛かりまして……」


「うん。慎重なのはいいことだ。……俺たちのミッション。その全てが終わったら、祝杯を上げよう!」


「「おう!」」/「うん、そうだね」



 ──と聞こえたことも、俺には関係ない。

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