表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/59

第二話 女体化

見切り発車で書いてます。

どーなるかわかりません。

「センパイ! ぼく()()()になりたいんです!」


「……あなたは入部早々なにを言い出すの?」


 俺は今、伊巫(いふ)さんに入会届を提出した。

 そしてたった今、彼女に土下座している。


「見てください、この華麗な土下座を! 伊達政宗もびっくりです! なんならもっとスタイリッシュにアクロバティックにテイクオフしちゃいますヨッ。 全日本土下座芸術選手権大会連続完全優勝のボクの実力ナメんといて下さい!」


「勝手におかしな選手権大会作らないでよ……それで?」


「はいッ! 先ほどのセンパイのご勇姿、ご活躍、とくと拝見させて頂きました! センパイは本物の魔法使いにあらせられます! かかる具合にて、伊巫さまのご威光にあやかり、ボクをその偉大なるパゥワーにて『おん・にゃの・子』! に変じさせて頂ければと愚考及び所望する所存でありますッ!」


「はあ……」


 伊巫さんはよくわからない、といったふうにキョトンと首を傾げる。

 まるで怪しい人を見る目つきだ。眉が怪訝そうにひそめられている。


「ボクが入部したのには、その理由にございます!」


「不純ね」


「正直です!」


 俺は食い下がらない。もう、言ってしまったことは戻らないんだ。なら、毒を食らわば皿までってやつだ。

 そうじゃなくても、彼女にはどうせさっきの読心術で色々と読まれているでしょーから。……


「ってか、今さらですけど入部ってなんですか? ここは何部なんです?」


「それすらもわからずに入ったのね……」


 伊巫さんは嘆息すると、にわかに咳払いして説明する。


「『歴史研究部』。まあ、今は部員が私しかいないから、同好会ってことになってるけど」


「はい!」


「つまり、ここは『歴史研究同好会』ね。だからあなたは正確に言うと、入部じゃなくて入会ってことになるかしら」


「はい!」


「ぶっちゃけ、この会の名称はさっき筆者がテキトーに付けたから、物語にはあまり関係ないわね」


「はい!」


「……はいはい、うるさいわね」


「はい!」


「……元気ね」


「はい!(さっきから土下座でローアングルからおぱんつが見えるから、息子のほうも)元気です!」


 シュパアアアアアアアンンンンンン!!


「ッ、()ってーーーーーッ!」


 背中を打たれた。哀れな仔羊(ボク)の土下座の背中を、乗馬鞭で。


「──だからッ。そのココロ読むのやめてくださいよ! なんちゃら違反ですよッ」


「あなたが不埒なこと考えているからよ」


 伊巫さんは距離をとってスカートを手で押さえた。

 嫌われる勇気ッ!


「って、『部』じゃないんですか? 同好会? 一人だけって……」


「……そうね」


「じゃあ、俺が二人目ってことですか?」


「そうなるわね」


「……へー。表に『部員募集』って書いてあったから、てっきり俺は部活なのかと思いました。(ってことはこの()()の年上のお姉さんと密室に二人きりってことか。ムフフの予感……)」


 サッ。


「ゥビクウ! だからその鞭を構える動作ヤメてください! おしっこ漏らしちゃいますよっ」


「……まあいいわ。今回は不問。嬉しいことも言ってくれた──というか、思ってくれたし」


「え? 先輩おしっこフェチなんですか?」


 ヒュパアアアアンンンンンンンンン!!!


「ぎゃー痛い痛い! ぶちましたね!? しかも二回も! 親父にも以下略!」


「……そうね」


「え?」


 と、ここで、伊巫さんはなにやら思案顔になった。

 おトイレに行きたいのかな?


「サッ」


「ヒエっ」


 ごめんなさいごめんなさい!


「──そうね、部員が欲しいわ」


「は?(()()ーーー()、←電子音(意味深)が欲しい?)」


「……もうツッコまないわ。部員が欲しいのよ。このままだとあと半年くらいでここは強制的に解散されるらしいの。だから同好会のままじゃ駄目なのよ。正式に部活に昇格されるには、あと──私達で二人だから、都合三人ってとこね」


「なんか設定がふわっとしてますねぇ」


「仕方ないじゃない。筆者が高校生活とかまともにやってないんだから。サワリは大体目的がわかっていればいいのよ」


「そういうもんですか……それで、俺は何をすればいい感じですか?」


「そう、それよ──あなたを女の子にしてあげる」


「……はァ!?」


 いや、何びっくりしてんだ、俺。

 自分が最初に言い出したんじゃないか、こうやって土下座までして。

 というか、まさか本人から言ってくるとは思わんかった。

 しかもこんな、やすやすと。

 つーか、出来んの!?

 俺、女の子デビューしちゃうの!?

 合法オッパイ揉み揉みちゃんワッフルワッフル!?


「…………」


 やばい、伊巫さんがこちらを見ている!

 なかまに なりたそうに こちらをみている!

 ……じゃなくて、すこぶる怪訝な顔だ。

 ビークールになれ、動詞重複。

 深呼吸ー。スーハー、スーハー、ん~~まんだむ。


「……あなたを女の子にしてあげる。ただし、条件があります」


「はあ……」


 なんかテンションが上がりきって逆に落ち着いてきた。これが賢者モードってやつかい。


「なんです? 条件って」


「部員を見つけてくるのよ」


「ボクが?」


「あなたが。正確に言うと、女の子になったあなたが」


「男のままじゃダメなんですか?」


「あなたが男の状態で誰かを勧誘して、入ってくれると思う?」


 ……それ、ヒドくないですか?


「あなたも女の子になりたいんでしょ? 一石二鳥じゃない」


「まあ……そういえばそうで菅原道真(すがわらのみちざね)……」


「なら、話は決まったわ。脱いでちょうだい」


「はッ!? 脱ぐ!? ボク、()()()の子にされちゃうッ!?」


「誰が。……違うわよ、そうじゃないと上手くイメージできないの。間違ったら、トゲアリトゲナシトゲトゲとかパンケーキリクガメとかになっちゃう」


「なぜそんなマニアック生物に偏ってるんだ……」


「ま、いいからちゃっちゃと脱いで。どうせ誰も見やしないから。つーか価値ないから」


「ヒドイ! 価値ないとか言わないで! 一人ひとりが世界に一つだけのワンダーフラワーなの!」


「はいはい、ちゃっちゃちゃっちゃ」


「きゃーやめて! 脱がせないでッ! おヨメに行けない!」


「おらおらおら」


「ちょ、待、いやあーーーーーーーーーーーん!」



 ■



「いやーん、いやーん、いやーん……って、アレッ!?」


 ……俺の、自分が発した声が、いつの間にか女子のそれになっていた。

 目を開けると──そこには女体があった!

 それも、俺の意識と地続きの肉体で!


「な……これは」


「うん、まずまずね」


 見上げた──伊巫さんがいた。

 彼女は、一仕事を終えたような、満足げな面持ちだった。

 夢じゃない、現実だ。


「ほら、立った、立った」


「お、おう」


 奇妙な感覚だ。自分の中から、自分じゃない声──女の子の、高い声が出ている。

 気道が男より小さいのか、なんとなく声が小さいし、息苦しい。

 それに全身なよなよしてて、手首なんて片手ですっぽり握り締められそうで、華奢だ。

 起立すると、前の自分と比べて筋肉が全然なく、とても頼りない。

 ──それに、


「あれ。先輩、そんなに身長高かったですっけ」


「あなたが縮んだのよ──って、これも定番ね」


 伊巫さんは笑った──その流れるようにきれいな、肩に届くか届かないかぐらいの短めの茶髪が、さらりと揺れる。


「ほら。あたしの体操服。今日が体育の授業があってよかったわ。その体型だと元の服よりこっちのほうが合ってるでしょ?」


「ああ……」


 見ると、俺の身体はブレザーが脱ぎ散らかされて、ほぼ半裸の状態だった。さっき伊巫さんに無理矢理剥がされた、その残骸である。

 傍から──いや、自分からみても異様にエロティックな光景である。

 それにしても、服は──元男の俺のブレザーは、だぼだぼだった。明らかに、サイズがあってない。

 ……これが彼シャツってやつ?


 自分のだが。


「あ、ありがとうございます」


 俺は伊巫さんから体操服を受け取った。素肌の上から着ると、花のようなふわりと柔らかい匂いが鼻腔をつく。


「あの……俺はこれからどうすればいい感じでござんしょ」


「主体性がないわね……まあ、いいわ。とりあえず慣らしからよ。もう下校時刻だから、帰ったほうがいいわね。明日になったら、部員集めに取り掛かりましょう」


「帰ったほうが──って、このまま?」


「そう。大丈夫よ、誰も違和感を感じないように設定してあるから」


「はあ……」


 伊巫さんは、くるりと振り返りカバンを取ると、スタスタと部室の扉から出ていった。

 ──と思いきや、またクルっ、とこちらを向き、捨て去るように、言った。


「じゃ。──さよなら」



 ■



「どうせなら()()()にして欲しかったなー」


「サッ」


「ゥビクウ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ