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第十二話 全ては壮大な妄想

 語り合った。

 結局俺はその幼女と、かなりの時間語り合っていた。

 いや、女児向けアニメって割と共有できないから(まあ俺の年齢だと当たり前田のクラッカー)、正直すごく楽しかった。


 しかもこの子びっくりするくらいプリ○ュアについて知っていた。

 だってこんなに幼いんだぜ?

 なのに、この子が生まれる前の昔の、歴代ほとんど網羅してたよ。

 すげえな。たぶん、親の影響ってやつだろうな。

 この娘の知識量からすると、親は相当のマニアと見えた。なんなら、歴代全話視聴済みみたいな。


「いやーしかし、こんなにプリ○ュアを語れる人は初めてだよ」


「お兄さんこそ、結構初期の知ってるじゃないですか。すごいですよ」


 いつの間にか幼女にお兄さんと呼ばれていた。

 尊敬されてるのかな?

 というか、めちゃくちゃ饒舌になってるよ、この四歳児。もうペラッペラ。

 しかも、敬語使えるんだ! 賢い!


「なんかごめんね。俺がハー○キャッチ〜ハピネ○チャージあたりが好きで、そこら辺が黄金時代って勝手に思ってて。それに話合わせててくれちゃったかな?」


「いえいえ。わたしも懐かしの歴代について語れてよかったです。でも、最近のも好きですよ」


「へー、例えば? ア○モードとか?」


「それもちょっと古いですよ……あたしが生まれてからのだと、『レッツ・スパークリングプリ○ュア』とか、『プリ○ュア・くるくるメモリアル』とか、あと『ユニバーサルプリ○ュア』、『ユニプリ!』ですねー」


「……うん?」


 今なんて言った?

 新出単語が出てきたぞ?


「『プリメモ』の最終回の、キュアペンダントとキュアフラッシュの再会は泣けましたねー。最終戦で敵に思い出アルバム(キズナ・ローグ)を燃やされて、それにリンクした二人の記憶も喪われて。二人とも、『あなたを忘れたくない』って号泣するんですよ。でも悲しきかな、忘却し、別れて、そこでエンディングが流れるんです。で、そこで終わりかと思いきや、そうじゃなかったんです。三年後、第一話で訪れた図書館で、二人は偶然居合わせるんですよ。でも、互いに相手を忘れています。そこで二人は同時に同じ本を取るんです。これも第一話を踏襲しているところが、脚本の妙ですよ。で、その始まりの本を手に取って、中に第十三話で二人が隠し挟んだアルバムの鍵を見つけたのをきっかけに、全てを思い出す! 何も言わずに見つめ合う二人、その瞳には笑顔の涙が……っていうのが、最終話のエピローグで無音の三十秒で描かれるんですよ!? あれはアニメ史上最高の最終回でしたよね、まんまと裏切られました。魔○使いとか、H○Gっと、トロピ○ル〜ジュのオマージュでもありましたね」


「え? え?」


「『スパプリ』は主人公が温泉旅館の跡継ぎが嫌で、部活に明け暮れて炭酸飲料をがぶ飲みするようなちょっとヤサグレ感ある珍しいヤンキー系ヒロインなんですけど、その『シュワッと弾けて漲るパワー!』って八重歯を覗かせつつ敵のポイステーたちをバッタバッタと薙ぎ倒していくとことか、若干初代寄りでカッコイイですよね。物理攻撃解放! まあ、保護者からのクレームは少々あったようですが。わたしはむしろ、そのアクティブな感じが好きですよ。あと、戦いの中でそのキュアサイダーが徐々に旅館のおもてなしとか人の心や繋がりの温かさに気付いていくとことか、昨今の社会趨勢を鑑みると結構考えさせられますよね。あと、テーマにリサイクルってのもあって、バ○ダイの発売したジュースのボトルに『のんだあとはリサイクル』って敵のポイステーたちが描かれてて、『お前が言うか!』って感じでしたよね。それと、追加戦士のキュアジューシーが有能でしたねー。お姉さんキャラだから、しょっちゅう突っ掛かってくるヤンキーのサイダーちゃんを猫っ口になりながら宥めるくだりとか。毎回美味しく視聴させていただきましたよ。あと、OP曲が神曲ですよね! イントロが跳ねるようなギターのパワーコード、Aメロはマイナーで始まって短めで、Bメロからちょっとずつ伴奏が加わるんです。で、サビでドーンと一気に転調、明るくなる! 締めはジャジャ・ジャ・ジャン! ってEメジャーで急に途切れるように終わるところとか、キュアサイダーの激情家な性格を表現してますよね」


「え? え? え?」


「『ユニプリ!』はテーマの勝利ですね。世界中の人々が幸せになるにはどうしたらいいか。最大公約数的幸福の追究。ちょっぴり重たいテーマですけど、それをやさしく子どもたちに教育できるのも、プリ○ュアの醍醐味ですよ。製作陣の才覚が遺憾なく発揮されている本作です。内容も前代未聞のベンチャーな感じですよね。何もかもが普遍的な主人公の女の子が、その自身の凡庸さに悩みつつ無気力な毎日を送っている。歴代の、明るくキラキラ元気よく! ってな作風が、第一話からないんですよ。そこにやってくるサイヤーク、敵のロボットです。これはハピ○スチャージとモロ被りって言われてますよね。で、人々の幸福な一時を吸収して我が物にしようと企む宇宙人の彼らを、拳を交えるなかで、しかし言葉で説得していくんです。もちろん、女児でも理解できるような言語力で。これも脚本家の腕の見せ所ですね。するとエピソードが進んで、語っていくうちに、主人公たちは敵の宇宙人の事情も知っていくんです。相互理解ってやつですね。彼らは母星が異常気象と争いによって滅亡した種族なんです。それで、生き残った幹部の人たちが地球を発見して、その人類の笑顔に嫉妬を抱いたんです。だから、人間たちからハッピーエネルギーを奪った。宇宙船に落ち込みながら生き延び暮らす、同族たちに送るために。同族ってところは、家族とも置き換えられるんですけど。そして、主人公と戦って、話すうちに、でもそうじゃないって気付き始めるんです。幸福は絶対量のあるものじゃない。資源でも、資産でもない。自ら隣の人々へ、分け与えられるものだと。最終話では、宇宙人たちは主人公と、戦いの拳を握手に変えて、地球を去るんです。彼らは知らなかっただけ、戦い以外の、言葉というもっと温かなコミュニケーション方法を。そしてそれは、主人公も同じでした。自分の平凡を自覚しながら、それを言い訳にして、行動を起こさなかったんです。主人公のキュアフレアと宇宙人のリクエスターたちは、一年の時を掛けて、お互いに学び合って別れたんです」


「…………」


「あ、『ユニプリ!』のキャラはキュアフレアだけじゃないですよね。キュアモンスーンとか、キュアファートル、キュアミストもいますもんね。みんな魅力的ですよ。特にあたしは、ス○イルのマーチも好きだから、風属性のモンスーンちゃんとかお気にです。青キャラのミストちゃんとの関わり方が『8(はいぱー):(な○れい)40(たいむ)』を意識してるのかってファンの間では炎上しているそうです。制作陣は黙秘ですけど、でも絶対そうですよね! あれは意識してますよ!」


「…………」


「あ、それと……」


「いや、もういいや。ありがとう」


 ……なんなんだ、これは?

 え? 新しいプリ○ュアって出たの? いつの間に?


 いやでも、歴代全話完全視聴済み、現在進行形でニチアサ・リアタイウォッチを慣行している俺がそれらを把握してないってことがあるのか?


 いや、無い!(断言)

 じゃあ、これはなんだ? 何情報だ?

 この子がデタラメを言っているだけか?

 そういえば、さっきもこの子──モモちゃんは、魔法使いとか言ってたぞ。

 なんかもう、そういう虚言癖妄想癖というか、幼児特有のイマジネーションが活発に発動しちゃうタイプの子なんだろうか?


 つうか、なんだそのプリ○ュアたちは。

 めっちゃ観てみたい。


「ねえ……きみ、本当に四歳児? なんか出会った時よりも確実に漢字変換が多くなってる気がするんだけど……」


「わたしはモモです。よんちゃいです」


「今更いたいけな!?」


「これからの時代は年齢で判断しちゃいけないんだよ。人の内面や能力は単純な生誕してからの経過日数では測りきれないからね。って、ままがいってたのー」


「『ママ』と『言う』って文字を平仮名にするな! 竜頭蛇尾過ぎないか!?」


「おにいちゃんこわい……」


「あ、いや、ツッコミが激しくなっちゃって。……てか、もういいです。降参! いずれにせよ、幼女に大声とかツッコミとか大人げないしな……」


「ようじょのまえで、ようじょっていうなよ」


「きみは幼女だけど幼女じゃない!」


「うるさいわね」


「ゥビクウ! すみません、すみません!」


 と、幼女が振り翳したアイスの棒に、俺はなぜか鋭い恐怖を感じた。


 やっぱこれ……デジャヴ?



 ■



「あたしねー。キュアマンダリンとキュアエスプレッソもすきなのー」


「(だめだ、全然わかんねえ……)」

プリ○ュアのネタは即興で書きました。

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