第十一話 戦士たちの語らい
「パパ」
謎の幼女がこちらを見ている。
えー誰この子? 迷子?
まあ、迷子なのは俺のほうなんだけど。
「えっと……どちら様かな?」
俺は一人っ子だから、年下(子ども)への口の利き方(?)が全くわからなかった。
つーか、『パパ』ってなんだ? 新手の詐欺か?
こんないたいけな幼女を用いて、お小遣いでもせびろうってか?
そんな悲しい現実があるってか?
「わたしはモモです。四歳です」
丁重に名乗りながら、ビシッと指で四を決める。
あらやだかわいい。四歳ってこんなにしっかりしてるんだ。
「ちゃんとお名前言えてえらいねえ、律儀だねえ」
一瞬にして心が融解された。
多分今鏡を見たら、ものすごくだらしない顔をしているだろう。デレデレ顔だ。
家が無いとかどうでもいいや!
なんとかなるだろ!
それよりこの子めっちゃ可愛い!
「パパのお名前知ってるよ。イクミちゃんでしょ?」
「うん……?(なんか惜しいな)」
なぜに女性名?
つか、なんでパパって前提で話を進める?
イクミちゃんって名前のパパがいるんか?
ちなみに俺の名前は幾太だ。
「えーちがうのー?」
「(おお、よく違うって気付いたな、そんな顔に出てたか?)うん。お兄ちゃんのお名前はね、幾太くんっていうの。だからきみのパパとは違うね」
さり気にお兄ちゃん呼び洗脳。
「でも、パパはよく女の子になってるよ。ママに、パパとママのお部屋で、女の子の格好させてもらってるよ」
「は、はあ……」
おい、パパさんママさん。思っきし見られてんじゃねーか。
こんないたいけな子どもにそんなとこ見られてんじゃないっ!
つうか、どんな性癖プレイだよ。下着でもつけるってか?
……まあ、わからんことはないけどね!
「ふーん。パパじゃないんだ……おにいちゃん」
お兄ちゃんキターーーーーーーーー!
「うんうん!(歓喜) ところで、モモちゃんのお父さんは今どこにいるの? お仕事かな?」
「しらない」
知らないって。……悲しいな。パパさん。
「じゃあ、お母さんは?」
「ママはね、今お山にこもってるの。修行中なの」
「すげえな! きみのお母さん!」
あれか? 職人さんか?
それにしても、この現代で『山に篭もる』って発想が割とびっくりだな。そういうワードはアニメでしか聞かないと思ってたよ。
「あれかな。じゃあ家にはお祖父ちゃんお祖母ちゃんがいる感じかな?」
「ううん。お家にはママがいるよ」
……うん? ちょっと思考中……
ハッそうか、家が山の中にあるって可能性だ。こんなところに一軒家が! みたいな?
「お家はふつうのアパートよ。お山の中にはないよ」
……ん? なんで俺の思考がわかったんだ?
今俺口に出してたっけ?
「はあ……? 山じゃないの?」
「えっとねー。弟ができるの」
「…………?? (え、唐突だな)」
「ママがね、言ってた。赤ちゃんができるのは、まずパパが鉱山で赤ちゃん岩を採ってきて、それをママに渡すの。そしたらママが赤ちゃん岩をお山で、と……トウヤ? して、赤ちゃんをつくるの」
「…………」
すげえ吹聴だな、ママさん。
よく『コウノトリが〜』とか『キャベツ畑が〜』とか言うけど、そんな炭坑夫みたいな話は初耳だぞ。
あとこんな幼い子に『陶冶』とか難しい単語使ってあげんなよ……
「なるほどねえ。ママはお山(自宅)に篭もって、お腹の赤ちゃんとご静養中って訳か……」
じゃあ、一応保護者はいる感じだな。
よかったよかった。
「つか、お家はどこなの? こっから近い? 一人でこんなとこ来て大丈夫?」
と、俺は首を傾げた。
なにせ、ここは海だ。見晴らしが良いとはいえ、四歳児が一人で来るには心もとない。
近所の公園とかならまだしも。
「そもそも四歳児一人にさせたるな、ってな話だが……」
「大丈夫よ。お家は近いわ。こっから四十キロくらいよ」
「ハ!? よんじゅっきろ!?」
遠!
てか、どうやって来たんだ!? 車?
……て、ああ違うか。『実家が』ってこと?
四十キロ離れた実家から、ここまで家族で出掛けて来て、今一人で出掛けちゃったってこと?
ややこしいなあ。
「歩いてきたの」
「徒歩!?」
「ひとりできたの」
「一人で!?」
「あたし、まほーつかいなの」
「魔法使い!? って……」
ん? デジャヴ?
なんかおんなじこと言ってる女性を俺はつい二週間くらい前に見たぞ?
「そ、まほーつかい」
キラーン☆
ポーズを取った。
その小さな手にアイスの棒を掲げながら。
……マジカルステッキのつもりだろうか?
「まほーで遠距離恋愛もイケイケなのよ」
「はあ……恋してんの?」
「ちがう。ママのプレゼント採りにきたの。ほら、これ」
「貝殻……?」
「うん。ママお腹おっきくなってイタイイタイっていうから、鎮静化させる為に魔術結界用の小型式展開媒体の原料をゲットしにきたの」
「……」
なんか後半はよくわからんかった。
そういうご家庭なのかな?
というか、なんか子どもの言う事まともに聞いてるほうが間違ってた気がする。
話半分で、『わあすごいねー』とか言ってたほうがよかったか。
「わあすごいねー!」
「ふふん。そうでしょ? ママのお腹の中の弟も、あたしが弟ってママに教えてあげたのよ?」
と、幼女のつるペタぴったんこを誇らしげに張る。
いや、ロリに興味は無い。全く。
むしろどう接したらいいかわからないくらいだ。
でも、なんかこの子はすごく話しやすい。
傍から見たらどうなるんだという危機感は覚えるが。
まあ、俺も高校生だしお兄ちゃんって呼ばれたし大丈夫だとは思うけど……
「てか弟? なんで性別がわかんの? 出生前診断?」
でも、『教えてあげた』って言い方が引っ掛かる。
「しゅっせい……? なにそれ。あたしの魔法でわかったのよ!」
「……わあすごいねー」
やっぱ流行ってんのかな、魔法使い。
だとしたら、女児と同感覚という伊巫さんもそれなりにアレだが。
「あれか、プリ○ュアみたいなもんか……」
まあ、彼女らに胎児の性別判定できる魔法が備わっているとは思えないが。
「あ、お兄ちゃんもプリ○ュア好きなの? あたしも好きよ。ニチアサはリアタイに限るわよね」
「うお! いい趣味してる!」
食いついた。俺が。
何気なく古参ファンである。ヘビーユーザーと言ってもいい。
なんせ、初代から全話視聴済みだからな!(矜持)
ちなみにマイ・フェイバリットはス○イルとマ○ン。
「うん。ちなみにあたしの好きなのはス○イルとマ○ンちゃんよ」
「え!? 俺と一致してんだけど!?」
やばい。逸材か?
「え! お兄ちゃんもそうなの? やっぱそうだよね、ス○イルめちゃ良いよね! 特に四十三話とか感動!」
「まじ、あの良さわかる? あそこであの音楽流すのもはや卑怯だよね!」
「そうそう! それと響ちゃんの声優とかさ……」
「ウンウン、わかる! あと追加戦士が……」
「そう! そして作詞が……」
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「作詞とか声優がさ、マ○ロスと……」
「そうそう!」




