イタズラ好きの彼女ーたった1分で読める1分小説ー
丘の木の下で、一人の若い男が立っていた。
十年後、もしお互いのことが好きだったらこの木の下で会おう。
そして、お互いが渡すプレゼントをタイムカプセルに入れて、
それを開けよう。
十年前、彼がまだ幼い子供だった時、
ある女の子とそんな約束を交わした。
彼女は可愛くて元気で、
そして何よりイタズラ好きだった。
彼は彼女によくからかわれたが、
彼女の無邪気な笑顔を見るのが、
本当に大好きだった。
その恋愛感情は、
子供時代によくある淡くはかないものではなかった。
彼は彼女を想い続け、
片時も忘れたことがなかった。
そして今日が、その約束の日だった。
彼は緊張と興奮に押しつぶされそうになりながら、
ただひたすら彼女の姿を待ち続けた。
しかし彼女は、
待てど暮らせどあわれなかった……。
「……そうだよな。
子供の頃のことだもんな」
彼は濁ったため息を吐き、
熱くなった目頭を手の甲でこすり上げた。
ただせっかくここまできたのだ。
タイムカプセルだけは掘り返すことにした。
彼の方は、桃色の髪をした女の子が描かれたヘアピン。
当時流行ったアニメのグッズで、
十年後に彼女に渡そうと考えたのだ。
喜んでくれるといいけど……。
そうわくわくしながら、
タイムカプセルを埋めたっけ。
その十年前の自分の姿を思い出して、
彼はぐずっと鼻をすすった。
一体、彼女は何を入れたんだろう?
気はとがめたが、
彼は開けることにした。
そこには封筒に入った一枚の便箋があった。
便箋にはこう書かれていた。
「バーカ、後ろを見ろ」
彼が反射的に振り返ると、
そこには美しく成長した彼女がいた。
してやったりといった感じの、
当時と変わらない、
太陽のような笑みを浮かべて。