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透明になる薬

エヌ博士は、ついに人間が透明になる薬を発明した。飲めば、体に作用して全身がガラスのようにケイ素化してしまうのだ。つまりガラスのように透明になる訳だ。透明人間の出来上がりである。そこで、エヌ博士は考えて、まずは自分でこの新薬の作用を試してみようと決意した。しかし、エヌ博士も男であった。すけべえ精神が沸いて出てきたのである。ひとつ、この薬を飲んで、女風呂に忍び込んでみよう。薬の効き目は見事に成功して、透明人間となった博士は、町にある銭湯の女風呂に忍び込んだ。そこまではよかったが、風呂にゆっくりと浸かっている最中に、薬の作用が切れたのか、たちまち、もとの姿を現せた博士に、女風呂の女性たちが、大パニックとなり、ほうほうの体で、博士は逃げ帰ってきた。失敗である。しかし、エヌ博士はめげなかった。次に博士は、金に目を付けた。銀行強盗である。再び透明となった博士は、都市銀行に忍び込むと、厳重な警戒網を潜り抜けて、金庫室に侵入し、大金の札束を袋に詰めていった。しかし、その行動に気づかない警備員は、そのまま定刻になると施錠してしまい、寒い一夜を裸で空気の薄い金庫室で過ごす苦しみを味わう羽目になってしまった。またまたの失敗である。これは、すべてが国の政治の悪いことから来ている。そう結論付けた博士は、とうとう怒り狂って、一丁の拳銃を取り出すと、国会議事堂へ乗り込んだ。総理大臣を撃ち殺してやる。それで、博士は薬を飲むと、ばれないように、質疑応答に立つ総理の至近距離まで近づこうとしたが、その時、採択された議案に不満ごうごうの野党の人々が暴徒と化して総理に詰め寄り、見えぬ博士は、野党の足蹴にされて床の上で、ぺしゃんこにされた。踏んだり蹴ったりである。

 そして、ついに博士は妙案を思い付くに至った。彼には妻がいた。悪妻である。ことごとく彼に文句をつけて研究の邪魔をしてくる。そこで博士は、妻がやって来るタイミングで例の薬を飲むと、姿を消してしまった。

 妻は、彼がいなくなってはどうしようもない。文句のつけようもないのである。これは上手く行った。

 そこで、博士は、透明になる薬を、悪妻対策薬と改名して、今や、家庭常備薬のひとつとして、大事に保管している、という次第であったのだ。

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