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ホームセンターごと呼び出された私の大迷宮リノベーション!  作者: 星崎崑
第四章

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第67話 不審者だ!

「……ところでフィオナ。あれ誰だと思う?」

「あー、あの人ね。私も実は気になってたんだ。見たことない人だけど……」


 私とフィオナがそれとなく視線を送る先には、風采が上がらない中年男性がいる。

 建物の陰に隠れながら、こっそりとダンジョンの様子を窺っている姿は、怪しいなんてもんじゃない。


「捕まえて尋問する?」とフィオナ。

「やろっか。強面を招集するよ」

「いや、セーレさんはやめといたほうがいいよ。マホはわかってないけど、ホントに怖いから」

「現地人のはずのアイネちゃんは完全にほの字だけど」

「アイネさんは変人だから……」


 すでに変人の烙印を押されているアイネちゃんに幸あれ。

 セーレにも全然相手されてないけど、猛烈アタックを続けていればいつか変化する時が来る……かもしれない。いや、ゴメン。自称神が考えることは、私にはよくわからんのだ。


 いやアイネちゃんの恋路はどうでもいいのだ。

 問題は謎の中年男性である。


 ちらちらとダンジョンの前に集まる探索者たちをチェックしているように見える。


 フィオナに頼んでジガ君を呼んできてもらい、その間に私はそれとなく謎おじに近づき観察することにした。


 フィオナによると、私はかなり魔力の感じが幼くて警戒に値しないらしい。この世界では妙に幼くみられるのはそれが原因だ。決して見た目が子どもっぽいからではない。断じてない。


 とはいえ、位階そのものは最下層の魔物を倒して上がっているのは確実なのに、そのわりには強そうな感じが全然なくて不思議……とのこと。まあ、私はホームセンターのオマケだから、そういうこともあるだろう。転生者のアイネちゃんとは違うのだ。


 とにかくモブ感が強いということだ。

 だから、近づいてもまったく気付かれない。

 いや、それはそれでどうなんだ。あたしゃ忍者かい。


「う~む、なぜだ……? どこで計画が狂った……? いや、しかしまだわからんはず……」


 ブツブツと何事かつぶやいている。


 怪しい。

 もしかしたら、家族があるのに探索者の夢を諦めきれない系おじさんの可能性も考えたが、どうも違うっぽい。

 あと、すごく疲れた風体だからおじさんかと思ったが、よく見たらまだ二十代っぽい。


 そうこうしている内にフィオナがジガ君を連れてきて、おじさんをあっという間に拘束した。

「やれ」「はい」の呼吸である。


 ジガ君に取り押さえられたおじさんは、顔面を真っ青にさせて、マジビビりしている様子。

 まあ、ジガ君は見た目こそまだまだ少年だけど、なんたって獣人だし、レベルだって高い。

 最初は逃げようとしたが、わりとすぐに無駄だと悟ったようだった。


「で、何者?」

「わ、私はなにも……! ただ、迷宮が珍しくて見ていただけで……」

「珍しいってことはないでしょう? あの迷宮はずっとあそこにあったんだから。それに、あなたのそれ、王都訛りですね。わざわざ王都から?」


 フィオナが厳しく詰問する。

 訛りなんかあったんだ。確かに少しイントネーションがこのあたりの人と違うかな? とは思ったけど。


「私は仕事でたまたまこのあたりに来ていただけですので!」

「仕事って?」

「と、土地調査の……」

「土地調査ねぇ。領主の許可は?」

「いえ……それは」

「ふぅん。まあ、隠したって無駄だしいいんだけど」


 嘘が下手なおじさんだ。そもそも、名乗らなかった時点でほとんどアウトである。

 だってこっちにはドッピーがいる。私たちに隠し事をするのは無駄である。


「いちおう忠告しておいてあげるけど、正直にしゃべっといたほうがいいよ?」

「正直と言われましても、私は……」

「ま、別にいいけどね」


 こっちが情報を得るのと、このおじさんを私たちがどう扱うかは別の話だ。

 正直に言うのであれば情状酌量の余地があるが、そうでなければその限りではない……ということ。

 いや、実際にただのおじさんという可能性もあるわけだが、私の直観でも、それはないと告げている。


 というわけで、ドッピーを呼んでシェイクハンドしてもらった。

 おじさんはジガ君と待っていてもらい、私とフィオナはギルドの空き部屋で、おじさんへと変身したドッピーと答え合わせを行う。


「うそ……。まだ諦めてなかったなんて」

「まさか迷宮管理局とはねぇ。こうして人を寄こすこともあるんだ」


 おじさんは迷宮管理局の職員だった。

 しかも、エヴァンスさんのところにはちょいちょい顔を出していた人だったようで、メルクォディアの担当だった模様。


 なぜ私たちに正体を隠したのかはわからないが、管理局だと知られたら殺されると思ったのかもしれない。真っ青な顔をしていたし。


 私は現代日本出身で性根が平和だから、こんな感じだけど、おじさんは言ってみればスパイだ。産業スパイだか、政治スパイだかわからないが、野蛮な世界なら殺される可能性は普通にありえるのかもしれない。身元不明の死体となれば、誰の気にも止まることなく、それで終了だ。


「ふ~む。とりあえずどっかに監禁しておきたいね。牢屋とかあるんだっけ?」

「いちおうあるよ。犯罪者とか一時的に置いておくとこ」

「じゃあ、そこに突っ込んでおこうか。情報はドッピーから引き出せばいいし、あのおじさんの処遇はまた後で決めよう」


 本当はまだ営業始まったばっかだし、迷宮前でトラブル発生に備えてたかったけど、まさにこれ自体が特大のトラブルだ。

 口惜しいが、迷宮のほうはスタッフさんたちに任せておいて、こっちを先に対応しよう。


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― 新着の感想 ―
[一言] メルクォディア大迷宮があんな寂れてたのがきな臭くなってきましたかねえ
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