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干支の神様と現代の神様

うさ神様と、うざ神様

作者: 城壁ミラノ

 神の国、お正月。

 十二年に一度。


 うさ神様の年がやってまいりました。


 こちらは神様たちが集う大神様のお屋敷。長い座敷の奥で待つ大神様に挨拶するため、今年の主役、うさ神様が一番に入場してまいりました。


 うさ神様とは、その名の通り、うさぎの神様です。


 この神様に拝むと、耳が良くなる、逃げ足が速くなる、可愛いくなれる、にんじんに恵まれるなどの、ご利益があります。


 うさ神様の見た目は、大きなうさぎです。


 大きな耳は天に向かいピンと伸びていて、赤い目はきゅるるんと輝き、今日のために念入りに洗った白い毛はふわふわのもふもふです。


 まんまるのしっぽをふりながら、ぴょんぴょんと可愛らしく飛び跳ねて大神様の元へまいります。


「大神様、新年あけましておめでとうございます」


 うさ神様は後ろ足で立って、ていねいに前足をあわせてお辞儀しました。


「うさ神よ、あけましておめでとう。今年は、そなたの年じゃ。しっかり頼んだぞ」


「かしこまりました。おまかせください」


 こんな挨拶をかわしましたが、うさ神様がなにをするか特に決まっていません。

 ただ、うさぎ年はなにかとあちこちから呼ばれて忙しくなるのです。


「さぁ、主役の席に座り、他の神の挨拶をうけなさい」


「はい」


 うさ神様は大神様に一番近い席に座りました。


 そこへ、次々と神様たちが入場してまいりました。


 神様たちはまず、大神様にご挨拶をしたあと、同じように丁寧に、うさ神様にも挨拶をしました。


 年寄りの神様は、


「最近、耳が遠くなりましてな。一つ、ご利益を頼みます」


 と拝んだりします。


 そのたびに、うさ神様は長い耳をなでさせてご利益をさずけます。


 女神様たちは、


「きゃっ、うさ神様可愛いー。私も可愛くしてー」


 などと言っては、うさ神様に抱きついてもふもふします。


 そのたびに、うさ神様は頭をなでさせてご利益をさずけました。そうやっているうちに、ほとんどの神様が席につきました。


 今年一番最後にやってきたのは、うざ神様でした。


 うざ神様とは、その名の通り、うざい神様です。


 この神様に拝むと、というより家に住みつかれたりしてしまうと、みんなから、うざがられるようになってしまいます。

 こんな神様を信仰したり拝んだりする人はいないので、人の国ではもう知られていない神様です。


 うざ神様の見た目は、ごてごてぎらぎらしていて、神様としては相応しいのですが、やりすぎ感があってうざい空気を出しています。性別はないので、男にも女にもみえます。


 言葉使いもうざく、距離感も近すぎるため、神様たちが席について並ぶ間を歩くだけでうざがられます。


「あけましておめでとさーん」


 などと馴れ馴れしく挨拶しながら顔をジロジロみたりするからです。


 うざ神様は大神様にも、


「あけましておめでとうございまーす」


 と適当に挨拶して、適当に頭をさげました。


「今年もよろしくお願いしまーす。まずはお年玉くださあーい」


 大神様の顔前に手をつきだして、ヒラヒラさせます。


 これには大神様も、


「うざっ」


 と思いながら手をどかせて、用意していたお年玉をあげるのです。


 お年玉はねだらなくても、あとから平等に配られるのですが。うざ神様はそれを知っていても場をわきまえずねだってくる、うざい神様なのです。


 そんなうざ神様でも、うざがられてかわいそう、と思ってくださった心優しい読者さま大丈夫です。


 うざ神様はうざがられてなんぼ、やったと満足します。

 うざがられないと終わりなのです。


 うざ神様は次に、うさ神様の前にきました。


「うさ神様、今年の主役だそうで」


 顔に顔を近づけてはジロジロみて、理由もなく両手でもふもふします。


 うさ神様は、今年の主役なのだからと、じっとたえていました。


「新年あけましておめでとうございます。うざ神様」


 うざ神様は適当に挨拶をかえすと、


「それにしてもー、うさ神と、うざ神。名前は似てるのに見た目も扱いも、ずいぶん違うと思いませんかあー?」


「まぁ、それは、大神様の決めたことですので」


 うさ神様は困りながら、そう答えるしかありませんでした。


「大神様、うさ神様ばっかり可愛くてずるいですよおー」


 うざ神様は大神様に抗議すると、


「うさ神様ばっかり、ずるいずるいずるい」


 ずるいずるいと言いながら、うさ神様の耳をくいくい引っぱりつづけました。 


 それはもうしつこいくらいに。


 これには、うさ神様も、


「うざっ」


 そう思ってしまいました。


 見ている神様たちも、うざ神様にからまれる、うさ神様に同情していました。


「うざ神よ、それくらいにしておきなさい」


 見かねた大神様がやめさせました。


「うざ神よ、そんなに、うさ神の可愛さが羨ましいなら、うさ神の頭をなでるといい。可愛さのご利益をもらえるから」


「へえー」


 うざ神様はさっそく、うさ神様の頭をなではじめました。


「これで、本当に可愛くなれるんですかー?」


 疑いながら、なでなでなでなでなでなでとそれはもうしつこいくらいに。


 うさ神様はまた、


「うざっ」


 と思いそうになりましたが、これはお役目なのだと我慢しました。


 それに一生懸命頭をなでる、うざ神様が、うざいなりに可愛く思えてきたのです。


「これくらいにしとくか」


 満足したうざ神様は、ようやく頭から手をはなしました。


「さぁ、気がすんだら席につきなさい。宴をはじめますよ」


「はーい」


 うざ神様の返事も、どこか可愛く座敷に響いたことにみんな気がつきました。


「せっかく、ご利益をいただいたんだ。うさ神様のように跳ねてみるか」


 うざ神様は陽気にぴょんぴょん跳ねながら、席までむかいました。


 その様子をみた神様たちは、


「うざいけど可愛い」


 そう思いました。


 こうして、うざ神様は一年の間、うざがられるけど可愛がられもする、うざかわいい神様として過ごしました。


 それまでよりは好意を持つ神様も増えて、うざかわ神様本人も満足だったようです。


 皆様にも、うざ神様の、じゃなかった、うさ神様のご利益がありますように。

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