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第九十五話 王都ガントレットへ

 冬雅はテーブルの上の地図を指さしながら、サキと凛子にこれからの行動案を話す。


「だから王都ガントレットに行って図書館で帰る方法を探してから、迷宮都市ヘルムに行くってことでいい?」

「私はそれでいいよ」

「私もオーケー」

「わかった。ああ、俺達もベールをしばらくの間、離れることになるから、冒険者ギルドに行ってギルマスに伝えておこう。ヴリトラの報酬の受け取りも帰ってきてからになるだろうし」

「あっ、その前に魔王の魔石で装飾品合成する?」

「いや。今は止めておこう。迷宮都市で強い装飾品が手に入るらしいから、それと今持ってるのを合わせて、どれを合成するか決めよう。Sランクの魔石は貴重だから」

「なるほどね。じゃあ、冒険者ギルドに行きましょ」


 冬雅達は宿を出て冒険者ギルドに行って、ギルマスに王都と迷宮都市に行くことを伝え、その後に旅の準備を整えてから、その日のうちに辺境の町ベールをそれぞれの馬に乗って出発する。



 場面はグライン王国の西グライン砦に変わる。魔族国軍との戦いから数日が過ぎ、王都ニルヴァナから、アンサズ宰相や魔法使いのような姿の部下達がやってきていた。


「ゼル将軍、モンスターの死骸は北の塔へ運んでくれ」

「それはいいが、モンスターの解体はどうするんだ?」

「解体などしない。そのまま神召喚のための供物にする」

「は? 神召喚?」

「そうだ。古代の神を召喚して、その力を陛下が手に入れることになっている。神召喚の準備が出来次第、ここに陛下がやってくる予定だ」

「なっ! そんなことが可能なのか?」

「可能だ。実は勇者召喚は、この神召喚のための実験に過ぎなかったのだ」

(古代の神を召喚して、その力を手に入れるとか絶対無理だ。たぶんその場にいたら、その神に皆殺しにされるな。何か理由を考えて俺がその場にいないようにしないと)


 ゼル将軍はそんなことを表情に出さずに考えていると、ひとつ疑問が浮かぶ。


「ん? ちょっと待て。モンスターは解体してその代金を支払うと、ほかの国の奴らに約束したんだぞ。それはどうするんだ?」

「心配無用だ。奴らには数が多すぎて解体に時間がかかっていると伝えておけばいい。そうしているうちに支払う必要がなくなる」

「!」


 その言葉を聞いて、ゼル将軍はアンサズ宰相がメイル国、ラヴァ帝国、聖王国と戦う気なのだと推察する。


「いや、ラヴァ帝国と聖王国はなんとかなっても、メイル国には覇竜の牙がいる。奴らは三体も魔王を倒せるほどの力を持っている。それと戦うのは得策ではないぞ」

「ふふふ、正面から戦うことだけが戦いではない。いくらでもやりようがあるわ。まあ、今は先のことは考えなくていい。ゼル将軍は、軍と勇者パーティを率いて魔族国に奪われた領土を取り戻し、さらに進軍して旧サイム国領をも我らの領土にするのだ」

「いいだろう。残った引きこもり魔王はダンジョンから出てこないだろうし、こちらには魔王に強い勇者もいる。そちらはまかせておけ」


 その後、ゼル将軍率いるグライン王国軍は、準備を整えて魔族国に侵攻を開始する。



 場面は辺境の町ベールの東の街道に変わる。その道を冬雅達はそれぞれの馬に乗って王都ガントレットを目指して走っていた。彼らは神話級の馬に乗っているので、通常よりかなりの速さで王都への街道を進んでいる。


「あっ、あれはシルバーウルフ!」

「風月再起! ゆけっ!」

「ヒヒーーン!」

「私達も行くよ!」

「ヒヒーン!」


 街道にモンスターが出現しても、風月再起、ウルスラグナ、アンヴァルの高速の走りによって、彼らは戦わずに走り抜けることができた。それで通常なら一週間以上かかる道のりを、彼らは三日で走破して王都ガントレットに到着した。


「おお、あれがメイル国の王都か」

「ベールより大きいね」

「グライン王国の王都といい勝負かも」


 彼等は王都ガントレットの巨大な城壁を見ながら、西門からAランク冒険者ギルドカードを城門の兵士に見せて無料で王都内に入る。


「とりあえず宿を探しましょう」

「お金はあるんだし、また豪華な宿屋でいいよね」

「うん。ここは奮発して、いい宿屋を探そう」


 冬雅達は西門から続く大通りにある豪華な宿屋で三部屋とって、今日の宿を確保する。


「宿屋の人に聞いたら、図書館は大通りを進んでガントレット城の近くにあるって」

「じゃあ、今日はもう遅いし、明日にしよう」


 冬雅達は豪華な部屋と豪華な食事で、ここまでの移動の疲れを癒し、その日が終わって次の日になり、王都の図書館にやってきた。


「やっぱ王都の図書館はでかいわ」

「ほんと。ベールの三倍以上あるんじゃない?」

「本もいっぱいあるみたいだし、勇者召喚についての本か、異世界についての本を探してみよう」


 冬雅達は図書館にいる職員に聞いて、それらしい本がありそうな本棚の前まで案内してもらう。


「このあたりに勇者召喚についての本がいくつかあります」

「ありがとうございます。後は俺達で探します」


 職員は元にいた場所に帰り、冬雅達は本棚を探す。


「あっ、ほんとにあった!」

「こっちにもあったよ!」

「さすが王都の図書館だ」

「はい。上泉」


 凛子は見つけた本を冬雅に渡す。


「私は細かい文字を読むと眠くなるから、ほかに何かないか、また探してみるよ」

「わかった。じゃあ、さっそく読んでみよう」

「あそこで読みましょう」


 冬雅とサキは、空いてるテーブルの席に座って見つけた本を読み始め、凛子は図書館の本棚を見て回っていく。そして冬雅がその本を読み終えると、凛子は見つけた複数の本をテーブルの上に置いて、サキのとなりの席で眠っていて、コロポックルもテーブルの上で寝ている。


「うーん。勇者召喚のことは書いてあったけど、元の世界に戻る方法は書いてなかった」

「こっちも同じ。何百年も前に存在していた国で勇者召喚が行われたけど、その国はもうなくなってるって」

「こっちの本には、別の世界から人を呼び出すには大量の魔石が必要だということと、勇者召喚は、召喚士が召喚獣や精霊を呼び出すのとはまったく違う技術だと書いてあった」

「へー。ああ、この本の勇者は、魔王を倒した後、行方不明だって」

「じゃあ、帰るための方法の手がかりはなしか」


 その後も凛子が見つけてきた色々な本を呼んだが、元の世界へ帰る方法までは載ってなかった。


「はー、もう疲れたから今日は帰ろうか」

「そうね。凛子、帰るよ」

「ふあああ、昼寝しすぎた。今日は、夜、眠れそうにないや」


 冬雅達は図書館を後にして食事や買い物や大衆浴場に行ってから、宿屋に帰りその日が終わる。そして次の日。


「今日も図書館に行くの?」

「そうよ。早く帰る方法を見つけたいでしょ」

「まあね。もぐもぐ」


 冬雅達が宿屋の一階の食堂で朝ごはんを食べながら話していると、凛子がふと思ったことを話す。


「あっ、そうだ。異世界ものの漫画とかアニメの帰る方法ってどんなの?」

「ああ、色々な方法があって、その世界を管理してる女神が戻してくれるパターンとか、召喚した人が戻してくれるパターンとか」

「召喚した人がっていうのは、今回は駄目じゃん。なら女神様に頼めばいいんじゃない?」

「そりゃあ、そんな女神がいるんなら、いくらでも頼むけども」

「女神様がいるとしたら、どこにいるんだろ」

「聖王国とかかな? 何かの神を信仰してるんだよね。あっ、そういえば私、女神アルテミスの加護を持ってた!」



 次回 迷宮都市ヘルムへ に続く

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