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異世界でゲームのシステムで最強を目指す  作者: 霧野夜星


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第九十二話 帰国 

 戦後会議が終わり、ゼル将軍やモアレ副団長などのグライン王国の者達が会議室を出ていく。


(ふぅ、無事に会議が終わった。何もなくて良かった)

「リーナ師匠、俺達も早くここを出ましょう」

「お、おう」


 騎士に扮装した冬雅とリーナとランスロットが席から立ち上がり、素早く会議室を出る。


「トウガ、何をそんなに急いでいるんだ?」

「いや、ゼル将軍達が先に会議室を出たので、俺達を閉じ込めて毒ガスとか撒かれるかもしれませんし」

「はあ、お前は警戒しすぎじゃないか? さすがのグライン王国もそこまではしないだろう」

「いえ、念のためです。警戒して損することはありません」

(卑怯でずる賢い奴等はいっぱい見てきたからな。漫画やアニメでだけど)


 冬雅のその言葉を聞いてランスロットが口を開く。


「まあ、常に最悪の状況を想定して動くことは悪いことではないから、いいんじゃないか」

「あっ、そうだ。ランスロットさん」

「何だ?」

「黒竜の籠手とか魔法神の指輪とかって、どこで手に入れたんですか?」

「ああ、迷宮都市の大迷宮だよ」

「迷宮都市ですか!」

「そう、メイル国の王都から南にある迷宮都市ヘルムのことだ」

「なるほど、あそこの下層なら強い装備品が色々手に入るな」

「リーナ師匠も行ったことあるんですか?」

「ああ。Sランクパーティを解散する前にな」


 リーナは騎士団長になる前は、大陸中を冒険していたSランク冒険者だった。


「トウガ君達も大迷宮に行くのか? なら大迷宮のボスはSランクの……いや、ボスがどれだけ強くても、グレーターリッチを一撃で倒したあのスキルがあれば関係ないか」

「まあ、そうですね」

「なら気を付けるのはトラップとか、迷路のような入り組んだ通路とかか」

(トラップは罠看破のスキルがあるし、迷宮はマッピングのスキルがあるから何とかなりそうかな)


 そんな話をしながら冬雅達は中央役所を出て、西グライン砦の東部の泊っている屋敷に戻り、帰国の準備を始める。



 場面はグライン王国軍が宿泊している兵舎に変わる。そこの一階のロビーに浅井達四人がいた。そこへゼル将軍とモアレ副団長がやってくる。


「すみません。勇者である俺達が、魔王を一体も倒せませんでした」


 浅井達はグライン王国から伝説級の装備やスキルブックをもらい、レベル上げを手伝ってもらったのに戦果を上げられなかったので落ち込んでいる。その様子を見てモアレ副団長が彼らに声をかける。


「君達はまだ魔王と戦えるレベルじゃない。レベル1から二か月も経ってないのに30を超えてるだけでも凄いことなんだ。だから気にするな」

「は、はい」


 浅井は暗い表情でそう答える。それを見てゼル将軍が口を開く。


「魔王はまだ一体、残っている。これからグライン王国軍は奪われた領土を取り戻す戦いを始めるだろう。お前達はその戦いに参加してレベルを上げるのだ。そして最後の魔王をお前達に倒してもらいたい」

「は、はい!」


 ゼル将軍はそれだけ話し、兵舎にある執務室へ向かって歩いていく。それにモアレ副団長がついていき、二人はその執務室に入る。


「だいぶ予定と違いましたが、どうするんですか?」

「知らん! 宰相の言うとおりに動いたのに、何も上手くいかなかった。これからどうするかは、奴が考えるだろ」

「そうですね。しかしアンサズ宰相の立てた作戦が失敗するとは。今回の戦いで同盟国の兵力はほとんど減ってません」


 アンサズ宰相は、今回の西グライン砦での戦いに魔王が現れた場合、メイル国、聖王国、ラヴァ帝国の戦力を魔王との戦いで消耗させようと考えていた。その三国に多大な犠牲を払わせて魔王を倒すというのが、彼の考える理想の結末だった。だが三体の魔王は冬雅達が倒したので、各国の犠牲は最小限で済んでいた。


「ふん。元々、無茶な作戦だったんだ! 机の上で考えた姑息な作戦など、上手くいくわけない! 俺は、そういう回りくどい作戦の指揮は苦手なんだ!」

「まあ、魔王を三体も倒すことに成功しましたし、グライン王国にはいい結果でしょう。これで奪われた領土を取り戻せます」


 四体目の魔王は魔族国のダンジョンから出てこないので、奪われた領土を取り戻すのはグライン王国軍だけで十分可能だった。


「それよりもモンスター死骸をすべて回収しろというのはどういうことでしょうか?」


 昨日の戦いの後、長距離通話の魔道具で、王都ニルヴァナにいるアンサズ宰相に今回の結果を報告していた。その時、彼は、残っているモンスターの死骸をすべて回収するようにと指示していた。


「さあな、宰相がすぐにここに来るらしいから、その時、説明するんだろ。ああ、宰相が来たら領土奪還の作戦が始まるかもしれん。準備しとけ」

「はっ」



 それからその日の午後になり、冬雅達は帰国の準備が終わってすぐ西グライン砦を出発して、メイル国へ繋がる街道をそれぞれの馬に乗って移動していた。冬雅達はしばらく進んでから変装を止めていつもの姿に戻っていた。


「宮本さん、佐々木さん。二人に考えておいて欲しいことがあるんだけど」


 冬雅は風月再起に乗りながら、近くにいるウルスラグナに乗るサキと、アンヴァルに乗る凛子に話しかける。凛子の肩の上のコロポックルは昼寝をしている。


「何?」

「考えて欲しいこと?」

「うん。ベールに帰ったら数日は休むとして、その後、どうするかを考えて欲しいんだ」

「あー、帰ってからの話か」

「帰る方法を探すにも図書館にも情報がないし、どうしたらいいんだろ」


 冬雅の言葉を聞いて、サキと凛子は色々考えている。


「一応、案としては、メイル国に迷宮都市ヘルムってのがあって、そこにレアな装備品やアイテムがあるらしいから、そこでレベル上げとクリアを目指すというのがひとつ」

「へー、迷宮都市ねー。宝石が手に入るなら行ってみたいかも」

「あと、メイル国の王都に行って、王都の図書館で帰る手がかりを探すというのがもうひとつ」

「なるほど、確かに王都の図書館なら、ベールより大きそうね」

「今のところ、俺が考えてるのはそのどっちかだけど、ほかに二人がやりたいことがあるかなと思って」

「わかった。少し考えてみる」

「私も、ベールに着くまで考えてみるよ」


 そんな話をしながら冬雅達は街道を進んでいく。それから数日後、帰国の途中で西グライン砦に向かっていたメイル国の歩兵部隊と遭遇する。だが歩兵部隊と一緒に帰ると時間がかかるので、メイル国騎士団は先行して街道を進み、西グライン砦から出発してから六日後、彼等は辺境の町ベールに帰ってきた。

 メイル国騎士団は、グライン王国へ行く時は三日で到着したが、それはポーションやマナポーションを惜しみなく使いながら無理して進んだからで、帰りは急がずに六日かけて帰ってきていた。


「はー、帰ってきた!」

「トウガ、今夜は祝勝パーティをするんだが、お前たちはどうする?」

「ええと……俺達は酒が飲めないので」

「ああ、酔っぱらいの相手をするのは嫌か。なら今夜はゆっくり休んで移動の疲れを癒すといい」

「はい」

「上泉! 浴場に行くよ!」

「今日はゆっくり湯につかれそうね」


 グライン王国からの移動で途中の町に寄って以来、皆、お風呂に入っていないので、彼女達は早く大衆浴場に行きたいようだ。その様子を見て、シャルロッテが冬雅に話しかける。


「トウガ君達は大衆浴場に行くんですか?」

「はい」

「なら私達も付き合っていいですか?」

「俺は構いませんが」

「いいよ! シャルロッテさんも一緒に行こう!」

「ではリーナ師匠、俺達はここで」

「おう、お疲れ」


 冬雅達とシャルロッテ達は、辺境の町ベールの城門でリーナ達メイル国騎士団と別れ、大衆浴場に向かって馬を走らせた。



 次回 魔王の魔石 に続く

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