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第八十一話 策略

「もう隠さなくていいの?」

「うん。佐々木さんもステータスボードを確認してみて」

「やった!」

「わしも見てみるかの」

「私も!」


 レベルとスキルの確認をがまんしていた凛子が、自分のステータスボードを表示する。それと同時にサキとコロポックルも自分のステータスボードを表示する。


「レベル55になってる!」

「あの魔王で8もレベルが上がったよ!」

「わしは49じゃの」


 冬雅、サキ、凛子はレベル55、コロポックルがレベル49になっていた。さらに彼らは新たなスキルを習得していた。


 冬雅

 忍者歩法

 壁や水の上などを走ることができる


 爆発魔力手裏剣

 命中すると爆発する十字手裏剣を魔力で作り出せる 

 消費MP 30



 サキ

 姫騎士の祈り

 呪いを解除する聖なる光を作り出す

 消費MP 35


 アイギスの盾

 すべての攻撃を一度だけ無効化することができる

 クールタイム二十四時間

 消費MP 50



 凛子

 マジックミラー

 魔法を反射する壁状の障壁を作り出す 

 消費MP 40


 ヘカーテ召喚

 魔王ヘカーテを召喚する 

 消費MP 45



 コロポックル

 龍爪断

 龍化時、爪から真空の刃を放つ無属性攻撃スキル

 消費MP 30


 パーフェクトヒール

 仲間ひとりのHPを完全回復させる回復魔法 

 消費MP 35



「忍者歩法! さらに忍者っぽくなった! それに待望の遠距離スキルだ!」

「すべての攻撃を無効って凄っ。あとは呪いを解除か。あっ、これがあったら、さっきの呪いも解除できたのに」

「上泉が魔王を倒したら、私、魔王を呼べるようになったんだけど!」

「わしは龍のスキルが増えたの。回復スキルは、いざという時、頼りになりそうじゃ」


 冬雅達は新たな強力なスキルを習得して喜んでいる。


「レベル55って、私たちより上なんだけど」

「彼らは魔王を一撃で倒せるスキルを持ってるんだ。ランクはAだが、実力はSランクでも上位かもしれん」

「全員レベルが上がるってことは、経験値分配スキルかアイテムを持ってるのね。私達でも持ってないのに」


 冬雅達の会話が聞こえていたシャルロッテ達が驚いている。


「ああ、そうだ。宮本さん。これを……」


 そう言いながら、冬雅はアイテムボックスから豪華な鞘に入った剣、ドラゴンブレイカーを取り出す。ドラゴンブレイカーは豪華な飾りがついた立派な剣で、元々の攻撃力も高いが、ドラゴン族に対して大ダメージを与える能力も持っていた。


「何か凄そうな剣ね」

「これはドラゴンに強い剣だから、敵によって光の剣かこれかを使い分けるといいよ」

「わかった」


 冬雅はドラゴンブレイカーをサキに渡し、彼女は腰のウエストポーチ型の魔法のかばんの中に入れる。


「そろそろ、お話してもいいですか?」


 そう言いながら、シャルロッテが冬雅達に近寄って話しかける。


「な、何でしょうか?」

「さっきの魔王を倒したスキルのことなんですけど、あれだけ強力なスキルなら、発動に何か条件とかあるんですか?」

「特別なのはありませんよ。消費MPが多めなのと、クールタイムが二日ってことくらいです」

「それだけか。いやいや。クールタイムのこととかは人には言わないほうがいいぞ。こっちが聞いておいて何だが」


 そう言いながらランスロットも会話に加わる。


「ああ、確かにそうですね。じゃあ内緒でお願いします」

「それはいいが、君達には、ほかにもいろいろ秘密がありそうだな」

「ああ、じゃあスキルのこととは違う質問を。トウガさん達が勇者アサイ達に正体をばれたくないって言ってましたけど、彼らと敵対してるんですか?」

「いえ、違います。むしろ逆で、彼らは俺達の仲間です」

「なるほど。なら何か複雑な事情があるんですね。まあ、彼らは悪人には見えなかったので、そういうことならよかったです」

「あっ、リーナさん達が来た!」


 サキは東側からリーナ率いるメイル国騎士団が近づいてきているのに気づく。彼女達は西側に魔王が現れたという情報を伝令から聞き、馬に乗って西側へ向かっていた。


「おーい!」


 リーナが冬雅達がいる場所に来て止まって馬を降り、メイル国騎士団も行軍を止める。


「こんな所でどうしたんだ? 西側に魔王が現れて大変なことになってると聞いて来たんたが」

「魔王ならもう倒しました。彼らが」

「は?」


 シャルロッテの言葉を聞いて、リーナは冬雅の方を見る。


「本当に倒したのか?」

「はい。今はほかの国の人達が、残ったゾンビモンスターと戦ってます」

「はぁ、まさか本当に魔王を倒すとは。それも誰も怪我した様子もないし」

「ああ、それはですね……」


 シャルロッテがリーナにこれまでの状況を話している。



 場面は西グライン砦からさらに西の、魔族国軍四万のモンスターが集まっている場所に変わる。


「リッチの奴。人間どもにやられたぞ」


 頭がフクロウで、上半身は狼で背中にフクロウの翼を持ち、下半身は蛇の姿のモンスターが、寝そべっている巨大な紫色のドラゴンに話しかける。


「何っ?」

「使い魔の目で見てたから間違いない。リッチは倒され、死骸はアイテムボックスに回収されていた」


 冬雅達が戦っていた場所の近くの建物の屋根の上に黒いカラスがいて、頭がフクロウのモンスターは、その目を通して彼らの戦いを見ていた。


「ふん。お前が立てた策とやらも、たいしたことなかったな。確か二千の兵で攻めるふりして、油断してる相手に空と地下の部隊とリッチで奇襲する、だったか」

「俺の策が悪かったわけではない! リッチの奴が無能だったから失敗したんだ!」


 今回の作戦を立てたのは、頭がフクロウのモンスター、悪魔王アモンだった。アモンは魔族国の四魔王の一体で、元はAランクモンスター、アークデーモンだったが、変異して魔王になったモンスターである。

 アークデーモンは青色の肌で頭に角がある人型のモンスターだが、アモンは変異種になり、頭がフクロウ、上半身が狼、下半身が蛇というまったく違う姿に変化していた。


「やれやれ。俺達の戦力は王都ニルヴァナを攻めるために温存させるとか言ってたのにな」


 そう言いながら巨大な紫色のドラゴンが立ち上がる。


「策など使わずに、全軍で正面から攻めればよかったんだ」

「それではつまらんだろ。策を使い、こちらは被害を抑え、敵に大打撃を与えるのが面白いんだよ」

「だが失敗しただろ」

「ふん。策士なら二の矢、三の矢を用意しているものだ。その二の矢を使うとしよう。全軍! 進軍せよ!」


 アモンの号令で、この場にいる四万のAランクからEランクまでいるモンスターの軍団が、西グライン砦へ向けて行軍を始める。


「おい、ヴリトラ! お前、飛べるからって先に行くなよ!」

「ばれたか。俺一人で暴れてこようと思ったのに」


 紫色の巨体なドラゴンの名は魔竜王ヴリトラ。魔族国の四魔王の一体で、元はAランクのブラックドラゴンだったが、変異種となり体が巨大化して強大な力を手に入れたドラゴン族のモンスターだった。


「勝手なことをするな。お前の存在も俺の次の策の一端を担っているんだからな」

「ちっ、まあいい。そのお前の策とやらを見させてもらおう」



 場面は西グライン砦の西側の城壁の上に変わる。すでに残っていたブラックドラゴンやゾンビモンスター達は討伐され、グライン王国軍の兵士達が、城壁の上で周囲にモンスターが残っていないか確認している。


「なっ!」

「どうした? 魔族国軍の残党でもいたのか?」

「ち、違う! 残党じゃない! 数えきれないほどのモンスターがこっちに来てる!」



 次回 魔竜王ヴリトラと悪魔王アモン に続く

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