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第七十八話 ブラックドラゴン戦

「ギャオオオオオオオオオ!」


 覇竜の牙のエミリの雷系上級魔法によって感電して地面に着地していたブラックドラゴンが、気合を入れるため咆哮を上げる。それを見てシャルロッテが冬雅に話す。


「ブラックドラゴンを迎撃します。トウガさん達も協力をお願いします」

「わかりました」


 Aランクのブラックドラゴンならシャルロッテ達だけでも倒せるが、今回は素早く倒すため、彼女は冬雅達の力を借りる判断をする。


「テンプルナイトのみなさんは、サンドワームの方をお願いします」

「君達だけでブラックドラゴンを倒せるのか?」

「一応、私達はSランクなので」

(メイル国のSランクということは、この女性が光の英雄か)


 聖王国のブレット神官長は、光の英雄のことを知っていた。メイル国のSランク冒険者パーティ「覇竜の牙」の名は聖王国まで知れ渡っていた。


「ではブラックドラゴンはまかせよう」

「はい。兄さん!」

「おう。パワーブースト!」


 ランスロットが剣を掲げて、仲間全員の攻撃力を強化するスキルを発動する。


「マジックブースト!」


 さらにエミリが杖を掲げて、仲間全員の魔力を強化するスキルを発動する。これでシャルロッテ、ランスロット、エミリ、カイトの攻撃力と魔力が上昇した。


「よし、俺達も。ドラゴンオーラ!」

「戦乙女の誓い!」

「魔力高揚! からの魔力チャージ!」


 一方の冬雅達も能力強化スキルを発動する。冬雅は防塵ゴーグルとマフラーで顔を隠し、サキは光の兜を被り、凛子はカラー眼鏡をかけてフードを被っていて正体がバレないようにしている。


(ドラゴンオーラ? 初めて聞くけど能力強化系のスキルかしら)

「ギャオオオオオオオオオ!」


 冬雅達が戦いの準備をしていると、ブラックドラゴンが咆哮を上げながら翼を羽ばたかせ、空を飛んで接近してくる。


「兄さん!」

「おう!」


 剣と盾を構えたシャルロッテとランスロットが、突撃してくるブラックドラゴンに向かって走り出す。


「上泉君。私達も行きましょ」

「うん。俺は宮本さんの後をついてくよ」

「了解」


 光の盾を構えながらサキが先に走り出し、その後を轟雷の剣を持った冬雅がついていく。ブラックドラゴンは闇属性のモンスターで、闇属性攻撃は光の盾で無効化できるので、冬雅は彼女の後方を走っていく。


「あなた、それ、スキルを使ってるの? 凄い魔力を感じるけど」


 魔力をためている凛子の近くにエミリがやって来て、彼女に声をかける。


「これは魔力チャージだよ。これをしてから魔法を使うと威力が上がるの」

「へー。それは凄いスキルね」

「エミリさん。僕はどう戦えばいいんですか?」


 二人がいる場所にカイトもやって来てそう質問するが、エミリの前に凛子が話す。


「あっ、私もわからない。いつもは仲間が戦い方を指示してくれるのに、二人共行っちゃったし」

「ええと、ブラックドラゴンの暗黒のブレスはクールタイムがあってすぐには使えないから、まずは魔法で攻撃して、その後は魔法障壁をいつでも展開できるように準備かな」

「わかった」

「あなたは魔法使い系だよね。雷魔法、使える?」

「火の魔法と雷の魔法が使えるよ」


 エミリの質問に、魔力チャージ中の凛子がそう答える。


「おっ、なら私と一緒に雷魔法を使いましょ。合体雷魔法よ」

「それ、面白そう!」

「僕は?」

「カイトは念のため魔法障壁の準備をしといて。ブラックドラゴンはブレスだけじゃなく、暗黒弾っていうスキルも使ってくるから」

「わかりました」

「じゃあ、攻撃魔法が使える隙ができたら一緒に攻撃ね」

「わかった」


 凛子は魔力チャージしながら、エミリとカイトと一緒に、前方のブラックドラゴンの様子を見ている。


「ブフアアッ!」


 そのブラックドラゴンが、接近してきたシャルロッテとランスロットを狙って、直径一メートルくらいの球状の闇の塊の「暗黒弾」を口から吐き出した。その暗黒弾を二人は高速の動きで回避しつつ、さらに接近する。


「光竜剣!」

「ハイオーラブレード!」

「ギャアアアアア!」


 シャルロッテとランスロットは得意の剣技を放ち、ブラックドラゴンにダメージを与える。


「俺達も攻撃しよう」

「了解!」


 続いてシャルロッテ達のそばに、冬雅とサキが近づいていく。その時、ブラックドラゴンが四人をまとめて薙ぎ払おうと、巨大な尻尾を振るって攻撃する。


「ガアアアアアアアアアア!」

「危ない!」

「俺にまかせ……」

「はっ!」


 ランスロットが持っていた盾でその攻撃を防ごうと動く前に、サキが先に動いて光の盾でブラックドラゴンの尻尾攻撃を完璧に受け止めた。


「なっ、あの巨体の尻尾を、ひとりで受け止めるとは」

「竜牙一閃!」


 その直後、冬雅が高速の動きでブラックドラゴンに接近し、魔力をまとわせた轟雷の剣で斬撃を放つ。それに続いてサキもブラックドラゴンに接近して、光の剣に魔力をまとわせ斬撃を放つ。


「竜麟斬り!」

「ガアアアアアアア!」


 サキはドラゴン族に大ダメージを与える剣技を放ち、ブラックドラゴンの体の黒いうろこを切り裂く。


「おお、あの二人やるな」

「兄さん、射線!」

「おっと、感心してる場合じゃなかった」


 冬雅とサキは、ブラックドラゴンに攻撃した後、その場から急いで離れていく。それを見たシャルロッテとランスロットも、その意図を組んで急いで離れる。


「今よ! ライトニングサンダー!」

「サンダーブレイズ!」


 豪華な杖を掲げたエミリと、魔力チャージを完了して賢者の杖を掲げた凛子が、同時に雷系最上級魔法を発動する。その雷魔法の威力は彼女達のスキルや装備品の効果で極限まで強化されていた。


「ガガガガガガガガガガガガガガ!」

「うわっ!」

「なんて雷だ!」


 彼女達の凄まじい威力の合体雷魔法が直撃し、全身が感電して大ダメージを受けたブラックドラゴンは、それが致命傷になり全身の力を失ってそのまま地面に倒れた。そして冬雅、サキ、凛子がレベル47、コロポックルがレベル39に上がった。だが彼等は新たなスキルは習得しなかった。


「今の雷魔法は凄かった!」

「ああ、あんなの見たことないぞ!」

「これがSランク冒険者パーティの実力か!」


 周囲ではテンプルナイト達が、今のとんでもない威力の雷魔法に驚いていて、エミリも驚きながら凛子に質問する。


「今、あなたが使ったの、雷系の最上級魔法だよね」

「そう。雷魔法の一番強いやつ」

「やっぱりそうか。最上級魔法って、いくつか種類があるって聞いてたけど、私のと違うのは初めて見たわ。それにあなたの魔法の威力、とんでもなかったんだけど」

「それは魔力チャージのおかげだよ」

「なるほどね。大魔導士の私でもそんなの持ってないのに、うらやましいわ」


 エミリの職業は、魔法使いの上級職である大魔導士だった。


「今の雷魔法、凄かった……っと兄さん。ゾンビ化するかもしれないから、その前にお願い」

「まかせろ」


 ランスロットが、倒れているブラックドラゴンに手をかざして、彼のアイテムボックスにその巨大な死骸を収納する。その様子を見て冬雅が驚く。


「す、凄い! ランスロットさんのアイテムボックスの容量はいくつなんですか?」

「いや、違うんだ。俺のは個数型アイテムボックスなんだ」


 彼のアイテムボックスは、キロ数型ではなく個数型なので、どんなに巨大で重くても、ひとつと数えて収納できる特殊なタイプだった。


「個数型ですか。そんなのもあるんですね」

「まあな、って、ん?」


 冬雅との会話の途中、ランスロットが西側の異変に気づき、その方を見る。その様子を見て冬雅達も西側を見る。


「あれは……グライン王国軍と、空を飛んでるのはラヴァ帝国の竜騎士団だ」

「兄さん。こっちに向かって来てない?」

「ああ、確かにこちらに来ている。ということは、西側から撤退してきたのか」

「あっ、あの人達の後ろからモンスターが追っかけて来てます!」


 サキは、グライン王国軍が走ってくる後方の空に、ワイバーンやドラゴニュートなどの魔族国軍のモンスターがいることに気づく。


「どうしよう? 私達も逃げたほうがいいかしら?」



 次回 死霊の魔王グレーターリッチ に続く

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