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第七十七話 魔族国軍 VS 聖王国テンプルナイト

「完全障壁!」


 グレーターリッチが、体の前に物理攻撃と魔法攻撃の両方を防ぐバリアを壁状に展開して、ゼル将軍が放った風の魔法剣を防ぐ。


「ふん」


 するとゼル将軍は、身に着けているウエストポーチ型の魔法のかばんから赤い石を取り出し、グレーターリッチの足元に投げる。


「むっ、これは……」


 グレーターリッチが足元に転がってきた赤い石を見る。その瞬間、その赤い石が爆発した。


「逃げるぞ!」

「はっ!」


 ゼル将軍とモアレ副団長は、この隙に城壁の上からジャンプして砦内に着地して、走ってこの場から離れていく。


「爆発の魔石か」


 その爆発の煙が消えると、完全障壁を展開したままのグレーターリッチが無傷で立っていた。爆発の魔石は、魔力を込めてから衝撃を与えると爆発するという高価なアイテムだった。


「つまらん……。この場で一番強い人間が、まともに戦わずに逃げ出すとは。見どころのある人間がいれば、アンデット化して配下にと思っていたが」


 グレーターリッチが西側の城壁の上から、この場から離れていくグライン王国軍の様子を見ている。


「まあいい。さあ、狩りの始まりだ! 我がしもべ達よ! 人間どもを狩りつくせ!」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」

「グオオオオオオオン!」


 ゾンビ化したモンスター達や、グレーターリッチが乗っていたブラックドラゴンなどが、逃げていく人間達を追って砦内を進軍していく。



 場面はラッパー団長率いる竜騎士団がブラックドラゴンと戦っている場所に戻る。


「スパイラルジャベリン!」

「ガアアアアアアアア!」


 ラッパー団長が投げた、らせんの魔力をまとう投げ槍が、ブラックドラゴンの体を貫く。その一撃が致命傷となり、全身が傷だらけのブラックドラゴンが地面に倒れた。


「よし、何とか倒せた。だが事態は深刻だ」


 ラッパー団長はグライン王国軍が西側の城壁から撤退していくのを見ている。さらにグレーターリッチが放つ強大な魔力にも気づいていた。


「魔王……おそらくグレーターリッチだ」


 ラヴァ帝国竜騎士団がこれまで倒したワイバーンやドラゴニュートがゾンビ化して蘇ったので、彼は死霊を操るグレーターリッチがこの場に現れたのだと推察する。


「ラッパー団長! ブラックドラゴンが!」

「わかってる! 全軍、後退するぞ!」

「はっ」


 ラッパー団長と竜騎士団は、グライン王国軍と同じようにこの場から急いて離れていく。すると倒したはずのブラックドラゴンのゾンビ化が始まる。


「グオオオオオオオオオオ!」


 全身がぼろぼろになっていたブラックドラゴンが立ち上がり、この場から離れていく竜騎士団を歩いて追っていく。そのブラックドラゴンゾンビは背中の翼を損傷していて、空を飛べなくなっていた。


「ちっ、ゾンビ化することはわかっていたから、倒さずに瀕死の状態のままにしとけばよかったか。いや、生命力の強いブラックドラゴンは、瀕死の状態でも脅威だ。やはり倒してゾンビ化したブラックドラゴンをまた倒すしかない」


 そんなことを考えながら、ラッパー団長達がラヴァ帝国騎士団がいる南側の城壁へ戻るため飛んでいく。その様子に気づいた北側にいたマイク副団長率いる竜騎士団もその場から撤退し、ラッパー団長達に合流するため飛んでいく。



 場面は西グライン砦内の中央付近の道路に変わる。そこを冬雅達とシャルロッテ達が馬に乗って西側へ向かって走っている。


「カイト君、ちょっといい?」

「はい。なんでしょうか?」


 風月再起に乗った冬雅が、馬に乗った覇竜の牙の召喚士の少年カイトのとなりに移動して話しかける。


「うちの仲間も召喚が使えるんだけど、それを隠したいんだ。だから彼女が使った召喚を、カイト君が使ったっていうことにしてもらいたいんだ」

「それはいいですけど、その人の手柄が僕のものになってしまいますよ」

「ああ、手柄より彼女の召喚を隠したいんだよ」

「わかりました。元々、手柄をもらうかわりにレアアイテム渡すということでしたから」

「ありがとう」

「上泉君! 前で誰か戦ってるよ!」


 ウルスラグナに乗って走ってるサキが、望遠眼で道路の先で起こってる戦闘を見ている。


「あれは聖王国のテンプルナイトだな。サンドワームと戦ってるようだ」


 馬に乗りながら走っている覇竜の牙のランスロットも望遠眼のスキルを持っていてそう話す。


「私達も手伝いましょう」

「はい」


 冬雅達は全力で馬を走らせていく。


「こいつら! 倒したのに何で動けるんだ?」

「闇の魔力を感じる。これはゾンビ化だ!」

「なら光の力を使え! 我等の光で魔の者を滅ぼすのだ!」

「ライトオーラランス!」

「ホーリーアロー!」


 白馬に乗り、白い鎧を装備した聖王国のテンプルナイト達が、光をまとわせた槍や光の魔法でサンドワームゾンビと戦闘を開始する。

 聖王国テンプルナイトは、サンドワームが砦内に現れたので、テンプルナイト千人を北側の城壁の守備に残し、残り千五百の兵力でサンドワームを討伐するため砦内で戦っていた。


「サンドワームゾンビを取り囲め! 四方から攻撃しろ!」

「ブ、ブレット神官長! あれを!」

「むっ」


 テンプルナイトを率いている中年の渋い男性の聖王国のブレット神官長が、仲間が指摘されたほうを見る。


「ドラゴン! ブラックドラゴンか!」

「ギャオオオオオオオン!」


 グレーターリッチを乗せていたブラックドラゴンが、この場に向かって飛んできているのを彼等は目撃する。


「魔法で迎撃するぞ!」

「はっ」


 魔法が使えるテンプルナイト数人が、魔法を発動する準備をしてブラックドラゴンを待ち構える。


「ブフアアアアアアアア!」


 その時、ブラックドラゴンが口を大きく開け、暗黒のブレスを広範囲に吐き出した。それがテンプルナイト達に襲い掛かる。


「ブレスだ!」

「うわわわわわわわ!」

「魔法障壁を展開しろ!」


 テンプルナイト達が壁状に魔法障壁を展開して暗黒のブレスから身を守る。その隙を突いてブラックドラゴンが急接近してくる。


「グオオオオオオオオ!」

「サンダーストーム!」


 その時、テンプルナイト達がいる後方から嵐のような雷が放たれ、ブラックドラゴンの全身を感電させて動きを止める。


「ガアアアアアアアア!」

「た、助かった」

「今の魔法は?」


 ブレット神官長がその雷魔法が放たれた方を向く。すると馬に乗った冬雅達とシャルロッテ達が見えた。今の雷魔法は覇竜の牙のエミリが放った魔法だった。


「私達はメイル国の冒険者です! 加勢します!」

「おお、助かる!」


 テンプルナイト達と合流した冬雅達は、馬から降りて武器を手に取りブラックドラゴンの方を見る。



 次回 ブラックドラゴン戦 に続く

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