第七十五話 魔族国軍 VS ラヴァ帝国竜騎士団
場面は西グライン砦の南側の城壁付近に変わる。ここにはラヴァ帝国の竜騎士団のラッパー団長と竜騎士団員、さらにラヴァ帝国騎士団がいた。今回、南の大国ラヴァ帝国からこの砦に来たのは、竜騎士団二百人と馬に乗った通常の騎士団四千人だった。
「サンドワームをせん滅しろ!」
「うおおおおおお!」
ラヴァ帝国の竜騎士団は全員がスタイリッシュな黒い全身鎧を身に着け、Bランクモンスター、ワイバーンに乗ってサンドワームと戦っている。そしてラッパー団長は、Aランクモンスター、レッドワイバーンに乗っていた。
「こっちに来るな!」
「攻撃しろ!」
「うわあああああ!」
さらに南の城壁の上や砦内にいたラヴァ帝国の騎士団も、城壁付近に現れたサンドワームと戦っている。
「団長! あれを!」
「むっ」
レッドワイバーンに乗ってサンドワームと戦っているラッパー団長が、一緒に戦っている竜騎士団員にそう指摘され西側の空を見る。
「あれは……ワイバーンとドラゴニュートか!」
「それも大軍です!」
ほかの竜騎士団員や騎士団員達も、魔族国軍の空戦部隊の存在に気づく。
「竜騎士団は全員、俺について来い! 騎士団はサンドワームをせん滅しろ!」
「はっ!」
サンドワームとの戦闘は騎士団にまかせ、ワイバーンに乗った竜騎士団は、ラッパー団長が先頭になり西側へ飛んでいく。
「むっ、ドラゴン……ブラックドラゴンか! それも三体も!」
空を飛んで西側へ向かう途中、ラッパー団長は魔族国軍の空戦部隊の後方にブラックドラゴンがいることに気づく。
「くっ、俺達だけであの戦力とは戦えない。グライン王国軍と連携して戦う必要がある。マイク副団長!」
「はっ」
「お前は百騎を引き連れて北側から回り込め。俺は百騎で南から攻める」
「了解しました!」
ラヴァ帝国竜騎士団は兵力を二つに分けて、西から迫ってくる魔族国軍の空戦部隊を、北側と南側から挟み撃ちにするために飛行していく。
場面は西側のグライン王国軍がいる城壁付近に変わる。
「傭兵部隊! サンドワームを倒せ!」
「わかってる!」
「いけーーー!」
グライン王国軍の砦内に待機していた冒険者などの傭兵部隊と、グライン王国の歩兵部隊が、地面から出現した複数のサンドワームと戦っている。
「敵がまだあんなに……」
城壁の上では、浅井達が疲れた表情で接近してくる魔族国軍の空戦部隊を見ている。彼等は初めての実戦で、肉体も精神も疲れているようだった。
「浅井! これからが本番だ! しっかりしろ!」
「そうだな。みんな。力を貸してくれ」
「おう」
「支援はまかせて!」
浅井、前田、黒田、立花の四人が、再び闘志を燃やす。そして彼等から少し離れた場所にいるゼル将軍も、魔族国軍の空戦部隊を見ながらつぶやく。
「ふん。地下からサンドワーム、空からワイバーンとドラゴニュート、そしてブラックドラゴンか。やってくれる」
「ゼル将軍! 竜騎士団が二手に別れました!」
ゼル将軍のそばにいるモアレ副団長がそう指摘し、ゼル将軍が後方の空を見る。
「奴等は北と南から攻める気だな。よし。敵の空戦部隊が近づいてきたら全力で迎撃しろ」
「はっ」
西側の城壁の上にいる浅井達やグライン王国軍の兵士達は、魔族国軍の空戦部隊の接近を待ち構える。
場面は南側にまわったラッパー団長率いるラヴァ帝国竜騎士団が飛んでる空に変わる。
「よし、グライン王国軍と三方から戦えば、ブラックドラゴンが相手でも勝てる」
ラッパー団長の部隊が、南側から攻めるために飛んでいると、西グライン砦の西側でグライン王国軍と魔族国軍の空戦部隊の戦闘が開始される。
「竜騎士団! 突撃!」
ラッパー団長率いる竜騎士団が、南側から魔族国軍の空戦部隊に向かって突撃する。同時に北側に移動していたマイク副団長率いる竜騎士団も突撃を開始する。
「グアアアアアアア!」
「ガアアアアア!」
「撃て! 撃て!」
「うおおおおお!」
ワイバーンに乗った竜騎士達は、投げ槍を投げたり、魔法で攻撃したりて魔族国軍の空戦部隊と戦っている。
「ドラゴニュートとワイバーンの相手はこれでいい。後は……」
ラッパー団長は、魔族国軍の空戦部隊の一番後方にいる三体のブラックドラゴンの方を見る。
「ブラックドラゴン三体を同時に相手するのは厳しい。まず一体を釣りだす。ビート! あのブラックドラゴンに近寄れ!」
「グオオオオオン!」
ラッパー団長が乗っているレッドワイバーン「ビート」が、ブラックドラゴンがいる方へ向かって飛んでいく。魔族国軍の三体のブラックドラゴンは、お互い距離を取って飛んでいて、元から三体が連携して戦うつもりはないようだった。その様子を見たラッパー団長は、持っていた投げ槍に魔力を込める。
「オーラジャベリン!」
ラッパー団長が一番南を飛んでいるブラックドラゴンを狙って魔力をまとわせた投げ槍を豪快に投げ、それがブラックドラゴンの胴体に突き刺さる。
「ガアアアア!」
その攻撃に怒りをあらわにしたブラックドラゴンが、胴体に投げ槍が突き刺さったまま、ラッパー団長に向かって突撃する。
「よし、かかった! ビート!」
「グワッ!」
ラッパー団長は味方の竜騎士団が多くいる場所を目指して移動していき、ブラックドラゴンはその逃げる彼を追っていく。
「ビート! 反転!」
「グワッ!」
味方の竜騎士団がいる場所に飛んできたラッパー団長は、彼等と共にブラックドラゴンを待ち構える。
「ブフアアアアアア!」
するとブラックドラゴンが、口から紫色の暗黒のブレスを広範囲に吐き出した。
「ビート! 火のブレス!」
「ブフアアアアアアア!」
暗黒のブレスに対し、ビートが口から超高熱の火のブレスを吐き出してそれらが空中で激突する。すると暗黒のブレスのほうが威力が高く、火のブレスが暗黒の中にかき消えるように消滅する。だが暗黒のブレスの勢いも弱まっていた。
「今だ! 散開!!」
竜騎士団は、威力が弱まった暗黒のブレスを回避しつつ、ブラックドラゴンを包囲するように移動し、さらに全員で攻撃する。
「オーラジャベリン!」
「オーラジャベリン!」
「コールドストーム!」
「サイクロン!」
竜騎士団の同時攻撃がブラックドラゴンに次々と命中し、さらに、
「スパイラルジャベリン!!」
ラッパー団長がアイテムボックスから取り出した新たな投げ槍に、らせん状の魔力をまとわせ、それを豪快に投げた。
「ガアアアアアアア!」
その螺旋の魔力をまとった投げ槍が、ブラックドラゴンの左の翼を貫く。それによってブラックドラゴンはうまく飛べなくなり、ふらつきながら落下していく。
「よし、追撃しろ!」
ブラックドラゴンを包囲していた竜騎士団が、落下していくブラックドラゴンを追って下降しながら攻撃していく。
次回 死霊の魔王 に続く
マイク副団長
竜騎士団 |ーーーーーー
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ブラック 魔族国軍→ |西グライン砦
ドラゴン 空戦部隊→ |グライン王国軍
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↑ |
ラッパー団長 |ーーーーーー
竜騎士団
七十五話の状況です。
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