表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/122

第七十四話 魔族国軍 VS メイル国騎士団

 望遠眼のスキルを発動しているリーナとサキが、東側の街道を進軍してくる武装したスケルトンの集団を注意深く見ている。


「スケルトンアーチャーもいるようです」

「そのようだな。よし、伝令兵!」

「はっ」

「西側の城壁にいるゼル将軍に、スケルトンソルジャーとアーチャーが五百程度、現れたことを伝えてきてくれ」

「了解です」


 リーナの近くで待機していた伝令兵が、城壁を降りて馬に乗って砦内の道を走っていく。


「それにしても、あのスケルトンはどこから来たんだ?」

「確かにこっちは魔族国の反対側ですよね。迂回してきたんでしょうか?」

「いや、迂回させるなら機動力のある部隊を使うはずだ。わざわざ足の遅いスケルトンの部隊にさせるわけない」

「じゃあ、あいつらはどこから……」

「グライン王国内のダンジョンかもしれません」


 冬雅とリーナの会話にシャルロッテが加わる。


「ダンジョンか」

「はい。グライン王国内のあちこちのダンジョンで、魔族の目撃情報があったと聞いてます」

「そうか。魔族はこの戦いに使える戦力を集めようとしてたのか」

「はい。でもあれだけの数で、この砦を落とせるとは思えませんが」

「そうだな。敵が戦力を分散させて攻めてくるなら、それを各個撃破すればいい。よし。そろそろ迎撃準備だ!」

「はっ」


 メイル国騎士団の騎士達は、城壁の上から弓や魔法で攻撃する準備を整え待ち構える。すると覇竜の牙のカイトが、リーナに近寄り話しかける。


「リーナさん。ぼくが先制攻撃していいですか?」


 カイトは冬雅達と同じくらいの年齢の黒髪の少年で、黒いローブを身に着け、豪華な杖を持っている。


「そうだな。頼めるか」

「はい!」


 やる気になっているカイトは、騎士達と共に敵の接近を待ち構える。


「ああ、トウガ達は見てるだけでいいぞ。こんなところで力を見せる必要はない」

「わかりました」


 冬雅達はリーナのそばで待機している。その後、スケルトンソルジャーとスケルトンアーチャーが、西グライン砦の近くまで迫ってきた。


「よし、カイト! 始めてくれ!」

「はい! ベビードラゴン召喚!」


 カイトは空中に召喚の魔法陣を作り出し、そこから体長三メートルくらいの全身が黄色のうろこで覆われた小型のドラゴンを召喚した。その様子を見て冬雅が驚く。


「えっ? 彼は召喚士なんですか?」

「ああ、そうだ。言ってなかったか?」

「聞いてないです」

「ベビードラゴン! 猛火のブレス!」

「ブフアアアアアアアア!」


 ベビードラゴンはスケルトンの集団に飛んで近づいて口を大きく開けて猛火のブレスを吐き出し、それが地上にいるスケルトン達に降り注ぐ。すると火が弱点のスケルトンは次々と骨を焼かれて倒れていき、攻撃を終えたベビードラゴンはその場で帰還する。


「よし! 攻撃開始!」


 続いて城壁の上にいる騎士団員達も、弓や魔法で攻撃を開始する。対するスケルトンの集団はスケルトンアーチャーが城壁の上を狙って矢を放つが、圧倒的に数が足りず大した攻撃にはなってなかった。スケルトンソルジャーにいたっては城壁の上への攻撃手段がなく、東側の城門の前にわらわらと集まっていく。そこへリーナは騎士団の攻撃を集中させ、スケルトンソルジャーが次々と倒れていく。


「壊滅は時間の問題ですね」

「……」

「リーナさん。どうしたんですか?」


 勝利目前だというのに、リーナが何かを考えているような表情をしていたので冬雅がそう聞く。


「おかしい……魔族国軍がこんな無意味な戦いをするわけがない。魔族国が無能なら、グライン王国が国土の西側を取られるわけがない」

「ということは、この少ない戦力で攻めてくるのに何か理由があると」

「……」


 リーナは魔族国軍の真意をつかみそこねている。その時、


「な、何だ?」

「地震か!」


 騎士達が、足元の城壁が揺れているのに気づく。


「うわーーー! モンスターだ!」

「地面からモンスターが!」


 その揺れの後、西グライン砦の城壁の内側に、巨大な茶色のミミズのような姿のモンスターが複数同時に現れた。


「あれはサンドワームだ!」


 そのモンスターを見たリーナがそう叫ぶ。サンドワームは体長が十メートルを越える巨大な体のBランクモンスターで、その頭に巨大で丸い口があり、さらに口の中には無数の鋭い牙が生えていた。そしてサンドワームは地中を土を掘って移動することができた。


「今の揺れは、サンドワームが城壁の下を掘り進んでいたからか!」

「ブフアアアアアアア!」


 地面から出てきた一体のサンドワームが、口から土のブレスを吐き出した。それが東の城門の内側に待機していた騎士達に襲い掛かる。


「サンダーストーム!」


 その様子を見て、覇竜の牙の白いローブを着たエミリが、城壁の上から渦巻く大量の雷をサンドワームを狙って放つ。その雷系上級魔法によって全身が感電したサンドワームは、致命傷を負い地面に倒れた。だが周囲では今でもサンドワームが次々と地面から出現している。


「うわあああああ!」

「攻撃だ! 攻撃しろ!」

「リーナさん!」

「どうした?」

「あ、あれを……」


 サキがリーナに西グライン砦の西側の空を指さしながらそう話す。そしてリーナも望遠眼でその方を見ると、


「あれは……ワイバーンか!」

「それにドラゴニュートもいます! それもたくさん!」

「確かに数えきれない……魔族国の空戦部隊か!」

「あ、あれは……」


 さらにサキは魔族国の空戦部隊の後方を注意深く見る。


「ド、ドラゴンです! 黒いドラゴンがいます!」

「あれは……ブラックドラゴンだ! それも三体も!」


 リーナとサキは、ワイバーンとドラゴニュートの部隊の後方にブラックドラゴンの姿を発見する。ブラックドラゴンとは全身が黒いうろこで覆われている巨大な竜で、闇属性の暗黒のブレスを吐くことができるAランク上位のモンスターだった。


「トウガ! シャルロッテ!」

「はい!」

「何でしょうか?」

「お前達はここを降りて西側に進んでくれ。お前達ならブラックドラゴンでも倒せるだろ」

「わかりました」

「了解です」


 冬雅達とシャルロッテ達は、急いで城壁の階段を降りていく。


「リチャード! サイモン! アレク!」

「はっ!」


 名前を呼ばれた三人の騎士団員がリーナにの元に集まる。


「私達も下に降りてサンドワームを討伐する。城壁の上には五百人程度残しておく。レイラ!」

「はっ!」


 名を呼ばれたレイラもリーナの元にやってくる。


「お前はここに残り、五百の騎士団の指揮をとれ」

「はっ!」

「よし! 下に降りるぞ!」


 リーナとメイル国騎士団の主戦力は、城壁から降りて近くにいるサンドワームとの戦いを開始する。



 次回 魔族国軍 VS ラヴァ帝国竜騎士団 に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ