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第七十一話 グライン王国へ

「ああ、すまんすまん。それで何が言いたいのかと言うと、覇竜の牙も今回の魔族国軍との戦いに参加するんだ」

「おお! それは心強いですね」

「二週間くらい前にメイル国の王家から指名依頼があったので、私達は今日のために色々準備してたんですよ」


 グライン王国が魔族国に敗北し滅びたら、次はメイル国が魔族国に狙われてしまうので、メイル国の王家は確実な勝利のため、覇竜の牙に参戦を依頼していたのである。


「それでトウガ。お前達は今回の戦いで目立ちたくないんだよな」

「はい。俺達の力を狙ってる組織(グライン王国)があって、そいつらにバレると大変なことになるんです」

「でもグライン王国にいる友人達を助けるため戦いたいと」

「はい」

「というわけでシャルロッテ達に頼みがある。トウガ達が魔族国軍との戦いで戦果を上げたら、その功績をシャルロッテ達の物にして欲しいんだ」

「なっ、本気ですか?」

「ああ。それでいいよな」

「はい。ぜひお願いしたいです」


 リーナは、冬雅達が今回の戦いで目立たないようする作戦を考えていた。それに冬雅が同意する。


「ほら、こいつらもそう言ってるし、もしこいつらが魔王を倒したら、お前達が倒したことにして欲しい」

「えっ? それはさすがに……」

「いや、問題はそこではなくて、彼等なら魔王も倒せるとリーナさんは思ってるってことですか?」


 リーナとシャルロッテの会話にランスロットが入ってくる。


「可能性はあると私は思ってるよ」

「……失礼ですが、トウガさん達の冒険者ランクは?」

「Bランクだったか?」

「いえ、この前、Aランクになりました。ヒュドラ変異種を倒したので、ギルマスがAにしないとおかしなことになるとか言われて」

「なっ、ヒュドラの変異種だと?」


 冬雅の言葉に、リーナや覇竜の牙のメンバー達が驚く。その様子を見て冬雅は、ポケットからAランクのギルドカードを取り出して見せる。


「確かにAランクカードだ」

「だが、ヒュドラの変異種が現れた話なんて聞いたことないぞ」

「ああ、倒したのは一週間くらい前で、ギルマスがヒュドラの変異種の魔石を王都に提出しに行こうとしたら、今回の魔族国軍の侵攻が始まったから、王都行きは延期すると言ってました」

「……」


 シャルロッテ達の冬雅達を見る目が変わる。


「ヒュドラは、Aランクでも上位グループのモンスターだ。それの変異種ならSランクに近い強さだろ」

「レッドドラゴンと同じ……いや、それ以上でしょうね」

「ああ、レッドドラゴンならトウガ達は倒してる。それも一方的な戦いだった。私がこの目で見てたから間違いない」


 リーナのその言葉を聞いて、シャルロッテは冬雅達の力が本物だということを確信する。


「わかりました。トウガさん。本当に今回の戦いの功績を私達に渡していいんですか?」

「はい。俺達にとって目立つことのほうが問題なので」

「ではあなた達からもらった功績に応じて、私達からレアアイテムを進呈しましょう」

「いいんですか?」

「はい。私達もただで功績をもらうのは気が引けますし、私達がこの大陸のあちこちにあるダンジョンで手に入れた物の中から差し上げます」

「わかりました。ではそれでお願いします」

「それなら、トウガ達はシャルロッテ達と一緒に行動するようにしたほうがいいな」

「そうですね。表向きは、私達、覇竜の牙が支援のためにAランク冒険者を雇ったということにしましょう。それなら一緒に行動しても怪しまれないでしょう」

「はい。お気遣い感謝します」

「よし。話は決まった。グライン王国への出発は九時だ。もう周辺の拠点から来た騎馬隊が、西門の外に集まってるはずだ。私達も行くぞ」


 冬雅達は、リーナ達と一緒に騎士団の詰所を出る。


「馬に乗っていくか。全員、馬を持ってるよな」

「はい。風月再起召喚!」

「ウルスラグナ召喚!」

「アンヴァル召喚!」


 冬雅達はそれぞれの馬を召喚して背中に乗る。


「じゃあ、私も。ティシュトリヤ召喚!」


 シャルロッテも美しい毛並みの白馬を召喚する。


「俺達も」


 同じようにランスロット、エミリ、カイトも自分の馬を呼び出し、リーナも馬を呼び出して背中に乗る。


「よし、西門まで行くぞ」


 リーナが先頭に立って、冬雅達は辺境の町ベールの大通りを馬に乗って進んで行く。そしてその西門から外に出ると、ベール騎士団と周辺の拠点から来ていた騎馬隊を合わせて三千騎が集結していた。


「おお! これがメイル国の騎馬軍団か!」

「思ってたよりいっぱいいる!」

「この規模で戦うのね。これが戦争か」


 冬雅達は初めて三千の騎馬隊を見て驚いている。ここに集まったのは三千人の騎兵と馬で、荷馬車や普通の馬車は一台もなかった。この世界にはアイテムボックスや魔法のかばんがあるので、食料や野営の道具などを馬で運ぶ必要がなく、騎馬隊は素早い移動が可能だった。


「リーナ団長! もう出発の準備はできてます!」


 リーナの姿を見た騎士団員のレイラが、馬に乗って走ってきてそう報告する。今回のメイル国騎士団の団長は、ベール騎士団の団長のリーナが務めることになっていた。


「なら少し早いが出陣するか。全軍、グライン王国に向けて出発!」


 ベール騎士団の精鋭騎士のリチャード、サイモン、アレクなどがメイル国騎士団の先頭に立ち、冬雅達はリーナやシャルロッテ達と一緒に騎士団の列の中盤くらいの位置で馬を走らせていく。その後、メイル国騎士団は国境を越え、グライン王国の街道を長蛇の列で進んでいく。そして辺境の町ベールを出発して三日目の午前中に、グライン王国と魔族国の国境付近にある西グライン砦が見える位置まで到着した。


「よし、速度落とせ!」

「速度落とせ!」

「速度落とせ!」


 リーナはメイル国騎士団の行軍スピードを落とさせ、さらに指示する。


「旗を掲げろ!」

「はっ」


 リーナの命令で複数の騎馬兵が、メイル国の国旗を掲げてゆっくり進んでいく。


「俺達もそろそろ」

「わかった」

「ほーい」


 冬雅はアイテムボックスから黒いマフラーと防塵ゴーグルを取り出して身につけ、サキは魔法のかばんから光の兜を取り出して被り、凛子は魔法のかばんからカラー眼鏡を取り出して身に着け、フードを被る。


「あれが西グライン砦。でかいですね」


 初めて西グライン砦を見た冬雅が、その大きさに驚く。


「あの砦は元は城塞都市だったんだが、グライン王国の西側の領土を取られて魔族国に一番近い都市になってから、住人達は避難して軍が砦として使ってるんだ」

「なるほど」


 そんな話をしながら冬雅達が進んでいくと、


「あれはメイル国の旗だ。門を開けろ!」


 西グライン砦の城壁の門を守っているグライン王国兵士が、門を開けてメイル国騎士団を向かい入れる。


「よーし、止まれ」


 西グライン砦の中に入ったメイル国騎士団が行軍を停止する。すると門の近くにいた馬に乗ったグライン王国の数人の騎士が、リーナのいる場所にやってくる。


「リーナ騎士団長ですね。自分はグライン鉄騎兵団の副団長、モアレです。長距離の移動、お疲れ様です」

「モアレ殿。これからよろしく頼む」

「こちらこそ。メイル国の皆さんが駐屯するのは東地区になります。案内するのでついてきてください」


 モアレ副団長とリーナが先頭に立ち、メイル国騎士団は、西グライン砦内の東側に向かって進んでいく。



 次回 魔族国軍襲来 に続く

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