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第〇〇七話 アイテムボックス

 冬雅は周囲に人がいないことを確認し、ポケットの中の袋を取り出して金貨を数える。それを見てサキと凛子も、同じように数え始める。


「残ってる金貨は二十八枚か」

「私は二十七枚」

「私は二十九枚だったよ。私が一番お金持ち!」

「はいはい。それで私が使ったのが二十三枚だから、もらった金貨はやっぱり五十枚だったのね」

「初日で半分くらい使ったけど、城の人は五十枚で三か月は暮らせるって言ってたから、まだ余裕はあるな。それともうひとつ試したいことがあるんだ」

「もうひとつ?」

「俺のスキルなんだけど、ちょっと待ってて。ステータス、オープン!」


 冬雅はステータスボードを表示させ、スキル欄のアイテムボックスをタッチする。すると、


 アイテムボックス

 使用者のレベル×100キロのアイテムを異空間に収納できる

 異空間内は時間が停止している

 微生物以外の生物は入れることができない


 とウィンドウに表示された。


「なるほど、使い方は書いてないけど……アイテムボックス!」


 冬雅はアイテムボックスを使う意思を込めてアイテムボックスと言葉に出す。すると彼のそばに直径一メートルくらいの円状の黒い異空間への入り口が現れ、同時に何も表示されてないウィンドウも現れた。


「アイテムボックス?! それってあのアイテムボックス?!」

「何? それ?」


 サキはアイテムボックスのことを知っていたが、凛子は知らなかったようだ。


「この中の異空間にアイテムを収納しておけるんだよ」


 そう言って冬雅はかばんの中にあった瓶に入ったジュースを異空間の入り口に入れる。すると何も表示されてなかったウィンドウに


 リンゴジュース×1


 と表示されていた。


「よし、使い方はわかった」


 そう言って冬雅はかばんを異空間の入り口に入れる。さらにポケットの金貨の入った袋も入れる。するとウィンドウに


 リンゴジュース×1

 かばん×1

 袋×1

 

 と表示されていた。


「何それ! どうなってるの?」

「この異空間に俺のレベル×100キロまでのアイテムを入れておけるんだ。それにこの中は時間が止まってるから、ジュースをずっと入れてても劣化しないんだよ」

「それずるい! 私も欲しい!」

「欲しいと言われても……いや、俺のスキルはあげられないけど、もしかしたらアイテムボックスのスキルブックがあるかもしれないし、魔法のかばんみたいな物もあるかもしれない」

「アイテムボックスの代わりになる魔法のかばんか。あっても多分高そうね」

「じゃあ、今は上泉ので我慢しとくか。はい、私のかばんもよろしく」

「あっ、私も」


 そう言いながら凛子とサキは、持っていたかばんを冬雅に渡そうとする。


「かばんを持ったままじゃ戦いづらいしね」

「そうそう。それに瓶のジュースなんて持って戦ったら、割れるかもしれないし」


 三人はかばんの中に制服を入れていたので、瓶のジュースと瓶のポーションをその制服で衝撃から守るように入れていた。


「じゃあ、預かるよ。そうだ! ポーションはかばんとは別に入れておいた方がいいかもしれない。いざという時、早く取り出せるし」

「うん、それがいいわね」


 サキと凛子は、かばんからポーションを取り出しかばんと一緒に冬雅に渡す。それを冬雅が受け取りアイテムボックスに入れる。彼も一度かばんを取り出し、ポーションとかばんを別にして入れなおす。


「よし。これでいい」


 冬雅が収納するものはもうないと考えると、アイテムボックスの入り口とウインドウが消える。


「あっ、私達のかばんには、まだ着替えとか下着とは入ってないから、漁っても意味ないからね」

「そ、そんなことしないよ!」

「ん、そうか。私達の制服なら、ある層には需要が……」

「もう、凛子。上泉君をからかうのはそろそろ終わりにしなさい」

「へーい」

「じゃあ、気を取り直して先に進みましょう」


 三人は王都東の森へ続く道を歩いていく。すると草原から体長が一メートルを越える一本の角が頭にあるネズミが、彼等の前の道に現れた。


「うわっ! 何? あれ!」

「ネズミ? でかっ!」

「ネズミのモンスターだ!」


 冬雅のモンスターという言葉を聞いて、サキは腰の軽鉄の剣を抜き、さらに軽鉄の盾を構える。凛子は魔法で攻撃しようと魔導士の杖をネズミのモンスターに向ける。そのとなりで冬雅も腰から鋼鉄の剣を抜いて中段の構えをとる。


「!」


 その時、ネズミのモンスターが凛子めがけて猛スピードで突進してきた。


「速っ! こんなの当てられな……」

「危ない!」


 ネズミのモンスターが、ジャンプして頭の角で凛子を攻撃しようとする。その時、彼女の隣にいたサキが凛子の前に立ち、ネズミのモンスターを盾で弾き返す。


「ギャッ!」

「うりゃあ!」


 ネズミのモンスターが盾で弾かれ地面に着地した瞬間、鋼鉄の剣を中段に構えていた冬雅が、ネズミのモンスターの体を狙って突きを放つ。


「ギギャアッ!」


 冬雅の鋼鉄の剣がネズミのモンスターの体を貫き、致命傷を負ったネズミのモンスターは目から光がなくなり動かなくなった。


「た、倒した……」


 冬雅が鋼鉄の剣をネズミのモンスターの体から引き抜くと傷口から血が出て、さらに鋼鉄の剣の剣身にも血がついていた。


「……」

「……」

「……」


 三人は倒れているネズミのモンスターの死骸を見ている。


「こ、これがモンスターとの戦い……」

「私、何もできなかった」


 魔法を使う暇もなかった凛子は落ち込んでいる。


「あんな速く動かれたら、しょうがないよ」

「うん。守ってくれてありがとう」


 凛子はサキにお礼を言う。


「それにしても上泉君。剣の扱いが上手かったんじゃない。もしかして剣道とかやってた?」

「いや、やってないよ。ああ、中学の時の友達が剣道をやってて、そいつが休み時間にふざけてエア剣道をしかけてきたんだよ。その時の真似をしただけなんだ。こう、中段に構えてタイミングを計って、一歩踏み出しながら攻撃するみたいな」

「へー。じゃあ、その友達に感謝ね」

「まあ、本物の剣道とは違うとは思うけどね」

(それにしてもこの中段の構えはよく考えられているな。最小限の動きで突きと斬撃の二択を使える。これなら速く動くモンスターにも対応できるはずだ)


 冬雅は中段の構えの凄さに、剣を使ってみて初めて気付く。


「さっきの連携はよかったんじゃない。凛子が囮で、私が盾で弾いて、上泉君が止めを刺すっていうの」

「私は囮かよ!」

「大丈夫、あの速さの敵を斬れといわれたら難しいけど、盾で弾くだけなら百パーセントできるから、凛子に危険はないよ」

「まあ、それならいいけど」

「じゃあ、このネズミのモンスターと戦う時は今の連携で戦おう。一度に複数現れた場合は……まあ、臨機応変にね」

「わかった……それでこれ、どうする?」


 凛子はそう言って、地面に倒れているネズミのモンスターの死骸を指さす。それに冬雅が答える。


「冒険者なら倒したモンスターを解体して素材にすると思うんだけど」

「解体?」

「そう、皮を剥いで、牙とか爪とかもぎ取って……内臓とか取り出して……」

「私には無理!」

「私も!」

「俺も!」

「……」


 三人はネズミのモンスターの死骸をどう処理するか考える。


「上泉のアイテムボックスにそのまま入れとけばいいんじゃない? 時間が止まってるから劣化しないんでしょ」

「まあ、モンスターの死骸は冒険者ギルドで解体してくれると思うからそれでいいんだけど、ネズミの死骸を触るのも、ちょっと……」


 ネズミのモンスターの死骸からは血が出ていて、冬雅はあまり触りたくなかった。


「ちょっと試してみるか」



 次回 レベル上げ に続く

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