第六十四話 召喚、召喚、召喚
サキがウルスラグナ召喚を発動する。すると彼女の目の前の地面に召喚の魔法陣が出現し、そこから黄金の装飾品を身に着けた美しい白い毛並みの馬が出現した。
「ヒヒーーーン!」
「馬!」
「ウルスラグナって馬だったのか!」
「ヒヒーーーン!」
ウルスラグナは、サキに背中に乗れと言ってるように鳴いて彼女のそばに近寄る。それを察したサキは、軽くジャンプしてウルスラグナの背中に乗る。
「おっ、凛子のアンヴァルみたいに、鞍がなくても乗り心地がいい!」
「ヒヒーーーン!」
サキに褒められてウルスラグナが喜ぶ。ウルスラグナもアンヴァルや影馬と同じく乗騎補助のスキルを持っていて、乗り手が長時間、背中に乗っていても疲れにくく、さらに絶対に振り落とされなかった。
「やっぱり、この世界では乗り物なら召喚士じゃなくても召喚できるのか」
「これで私も馬を呼べるようになったから、二人乗りは卒業ね」
「ちょっと待って! 私、スカートだから、サキの後ろじゃなきゃ馬に乗れないんだけど!」
「ああ、確かに自分で馬を走らすのに、横向きじゃきついわね」
「なら、アンヴァルに乗る時用の服を後で買うとして、今日は町までサキの馬に乗せてよ」
「しょうがないな」
「よし。じゃあ、次は私の召喚ね」
サキはいったんウルスラグナから降り、次に凛子がまだ使ったことのない召喚を試す。
「ティターニア召喚!」
凛子がティターニア召喚を発動する。すると召喚の魔法陣から、緑色のドレスを着て背中に蝶の羽根がある美しい大人の女性が現れた。
「私は妖精の女王ティターニアです。私を召喚したのはあなたですか?」
「はい!」
「ふむ。なかなかの魔力を持っているようですね。それで私が倒す敵はどこですか?」
「あっ、今は敵はいないです。あなたがどんな力を持ってるのか知りたいから呼びました」
「なるほど。私は氷の力が使えます。私の前に立ちはだかるすべての敵を凍らせましょう」
「ティターニアは氷系か。しかも広範囲に攻撃できると。あっ、ヒュドラ戦で使ってたら、もっと早く倒せたのにな」
「えっ? どういうこと?」
冬雅の言葉にサキが質問する。
「ヒュドラは爬虫類系だから、氷系が弱点なんだよ。だから雷系より氷系のほうが大ダメージを与えらるんだ」
冬雅はモンスター図鑑から、その情報を知っていた。
「そうなの。でも攻撃系の召喚は人前では使えないよね」
「あっ、そうだった。佐々木さんは、ギルドに魔法使いって登録してたんだった」
「では敵がいないのなら私は帰ることにしましょう。次は倒すべき敵がいる時に呼んでください」
ティターニアの足元に送還の魔法陣が出現し、彼女は自分の世界に帰っていった。
「よし、次は……アールマティ召喚!」
凛子がアールマティ召喚を発動する。する召喚の魔法陣から、鮮やかな青色の鎧を身に着け、腰に豪華な装飾が施された剣を携えた美しく若い女性の天使が現れた。
「私は天使アールマティ、契約者を守護する者です」
「おお、天使だ!」
「綺麗……。いや、さっきのティターニアも綺麗だったけど、こちらはまた違った綺麗さが……」
凛子は背中の翼に光をまとう天使アールマティの美しさに見とれている。
「それで敵はどこでしょうか? 邪悪な者の気配はないようですが」
「あっ、今回はあなたの力を知りたくて呼んでみたの」
「そうでしたか。私は光の力を使えます。邪悪な者達を私の光でかき消しましょう」
「まあ、天使だし光属性だよね」
ゲートオブアルカディアでは、天使は光属性、悪魔、魔族は闇属性というのが多かった。
「では今度は邪悪な者がいる時に呼んでください」
そう言って天使アールマティは、送還の魔法陣で自分の世界に帰っていった。
「氷と光だった。私が持ってない属性だからよかった!」
「さて、試す召喚も終わったし、今度こそベールへ帰ろう」
「あっ、アンヴァル。今日はサキの方に乗ってくから、ここまででいいよ。次からは私ひとりで乗るから、その時はお願いね」
「ヒヒーーン!」
アンヴァルも送還の魔法陣で自分の世界に帰る。そして冬雅は影馬に、サキと凛子はウルスラグナに乗って街道を走っていった。そして約二時間後、辺境の町ベールに戻ってきた冬雅達は、大衆浴場へ行った後、夕ご飯を食べてから、宿屋のサキと凛子が泊ってる二人部屋に集まる。
「じゃあ、装飾品合成するよ」
冬雅達は持っている装飾品を集めてテーブルの上に置く。
「合成の前に、私のネックレスを調べてよ」
「はいはい」
サキは魔法王のネックレスを手に取り装飾品合成を発動する。
魔法王のネックレス 魔法・スキルの消費MP25%カット
「だって」
「おお! これで大魔法使いにまた一歩近づいた!」
凛子は嬉しそうに魔法王のネックレスを身に着ける。
「じゃあ、今度こそ装飾品合成を始めるよ」
サキは皆と話し合いながら、色々な指輪を作り出していく。
睡眠無効の指輪 スキルや魔法による睡眠状態を無効化
混乱無効の指輪 混乱状態を無効化
↓
睡眠・混乱無効の指輪 睡眠状態と混乱状態を無効化
毒・麻痺無効の指輪 毒状態と麻痺状態を無効化
睡眠・混乱無効の指輪 睡眠状態と混乱状態を無効化
アルケニーの魔石 魅了状態を無効化
↓
精霊王の指輪 毒・麻痺・睡眠・混乱・魅了状態を無効化
疾風の指輪 速+10
疾風の指輪 速+10
グリフォンの魔石 速+10%
↓
風の精霊の指輪 速+15%
大魔力の指輪 魔+10
大魔力の指輪 魔+10
ヴァンパイアの魔石 魔+10%
↓
超魔力の指輪 魔+15%
生命の指輪 HP自動回復
生命の指輪 HP自動回復
シルバーゴーレムの魔石 防+10%
↓
大地母神の指輪 HP自動大回復 防+10%
魔導士の指輪 MP自動回復 魔力+5
魔力回復の指輪 MP自動回復
ヴァンパイアの魔石 魔+10%
↓
大魔導士の指輪 MP自動大回復 魔+10%
冬雅は風の精霊の指輪、サキは精霊王の指輪と大地母神の指輪、凛子は超魔力の指輪と大魔導士の指輪を装備する。
「ああ、それとヒュドラ変異種の討伐報酬なんだけど」
そう言って冬雅は黄泉比良坂のスキルブックを、アイテムボックスから取り出す。
「これを選んだんだ」
「いつも通り、スキルブックね」
「まあね。ほかは武器と鎧だったよ」
「えーと、黄泉比良坂って聞いたことあるような」
「そう。日本神話に出てくるやつだよ。それでこれはゲートオブアルカディアにもあるスキルなんだ」
「どんなスキル?」
「ゲームでは敵を一撃で倒せるスキルだった」
「一撃で?」
「そう。死後の世界の入口が開いて、そこに敵の魂を引きずり込むスキルだったよ」
「それは……なんか物騒なスキルね」
「でもそんなの絶対強いじゃん。で、だれが使うの?」
「ぜひ俺が欲しい! ゲームと同じスキルを使ってみたい!」
「へー。上泉君がそんなに欲しがるなんて珍しいわね」
「まあ、いいんじゃない。上泉のやる気が上がるんなら」
「そうね。それは上泉君が使っていいよ」
「やった! じゃあ、早速……」
冬雅はスキルブックを開いて「黄泉比良坂」を習得する。
「よし、確認してみよう」
冬雅達は自分のステータスボードを表示する。
上泉冬雅 17歳 人間
職業 忍者
称号 魔族キラー ドラゴンキラー
レベル 46
HP 3927/3927
MP 438/438
攻撃力 102(+80)(+15%)
防御力 90(+70)
魔力 77
速さ 179 (+15%)
経験値 431297
スキル
言語理解 アイテムボックス
ゲートオブアルカディア 斬撃強化
異性運上昇 錬気斬 気配察知
後の先 罠看破 気配遮断結界
クリーン 見切り 竜牙一閃
剣速強化 マッピング 危険察知
天羽々斬 影縛り 影馬召喚
軽業 分身 ドラゴンオーラ 気配遮断
因果の刃 黄泉比良坂
仲間
宮本サキ レベル46 姫騎士
佐々木凛子 レベル46 召喚士
コロポックル レベル37 龍王
装備
轟雷の剣 攻+80 雷魔法付与
精霊の胸当て 防+55 魔法耐性30%
破壊王の指輪 攻+15%
風の精霊の指輪 速+15%
達人の籠手 防+15 会心率+10%
「だいぶ強くなったなー。でも情報量が多くなってきた」
さらに冬雅は新たなスキルの詳細を表示する。
黄泉比良坂
巨大なイザナミの手が現れて敵の魂をつかみ取り
死後の世界に引きずり込む
神族には無効
クールタイム 四十八時間
消費MP 60
「おお! ゲームと同じような効果だ。でもクールタイムが二日か。それはゲームとは違う。それと神族には無効……なら魔王には使えるのか? ゲームではボスには無効だったけど」
冬雅は魔族国の四人の魔王も、このスキルで倒せるのではと考える。
「いやいや。そんなに簡単に魔王が倒せるわけが……」
次回 修行 に続く