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第六十二話 ランクアップ

「宮本さん! ごめん!」

「えっ? キャッ!」


 ヒュドラ変異種の三つの口が、自分達に迫ってきたのを見た冬雅は、サキをお姫様抱っこしてその攻撃を回避し、さらに急いでその場から離れる。その時、凛子の魔力チャージが完了する。


「二人とも! いくよ!」

「頼む!」

「サンダーブレイズ!」


 冬雅達が射線上にいないことを確認した凛子は、ヒュドラ変異種の頭を狙って大量の電撃を放つ。


「ガガガガガガガガ!」


 その電撃がヒュドラ変異種の九つの頭を感電させ、ついに九つの頭のうち、八つがその目に光がなくなり、力を失って床に倒れた。


「やった! あとひとつ!」

「上泉君、降ろしてくれる?」

「あっ、は、はい」


 サキをお姫様抱っこしていた冬雅は、急いで彼女を降ろす。


「後はまかせて!」


 サキは光の盾を構えながら、頭がひとつ残っているヒュドラ変異種に向かって走り出す。一方、ヒュドラ変異種は、度重なる冬雅達の攻撃によって、その場から動けなくなるほどダメージが蓄積していた。


「ソウルブレイク!」


 そこへサキがジャンプして最後のヒュドラ変異種の頭に、魂をも破壊する必殺の斬撃を放つ。


「ガアアアアアア!」


 その強烈な一撃によってヒュドラ変異種の最後の頭が、崩れ落ちるように床に倒れた。それと同時に冬雅達の頭の中に、レベルアップ音が鳴り響く。


「やった!」

「ふぅ。やっと倒せた」

「レベルも上がった!」


 冬雅とサキは、ステータスボードを確認する。同時に凛子は走り出して二人と合流してから、コロポックルと共にステータスボードを確認する。


「レベル46になった!」

「一気に五つも上がってる!」

「スキルも覚えたよ!」


 冬雅、サキ、凛子はレベル46、コロポックルはレベルが37に上がり、新たなスキルを習得していた。


 冬雅

 因果の刃

 十五分間、分身や分体にダメージを与えた時、

 本体にも同等のダメージを与える

 消費MP 35


 サキ

 ウルスラグナ召喚

 神獣ウルスラグナを召喚する

 消費MP 40


 凛子

 障壁強化

 障壁やバリアなどの防御スキルの強度が50%上昇


「因果の刃……これで敵の分身は怖くない」

「私、召喚、覚えたんだけど、何で?」

「ふふふ。私は攻撃も防御も完璧なった」

「わし、何も覚えとらん。活躍しなかったからかのう」

「ああ、コロじいは転職してないからだよ。転職した後、レベルにあったスキルを覚えるよ」

「なるほどのう。じゃ、後のお楽しみじゃな」

「そうだ。今のうちに報酬を……」


 冬雅は倒れているヒュドラ変異種のそばに近寄る。


『銀の地下迷宮、ダンジョンボス変異種討伐報酬をひとつ選んでください。

 白銀の剣×1

 毒蛇の鎧×1

 黄泉比良坂よもつひらさかのスキルブック×1』


「上泉君が選んで」

「わかった」


 冬雅はギルドマスター達にばれないように背中を向けながら、素早く「黄泉比良坂よもつひらさかのスキルブック」を選ぶ。一方、ギルドマスターと二人の職員は、冬雅達がレベルアップで喜んでいるのを見ながら話している。


「あいつら、全員レベルが上がったのか?」

「そういえば、デュラハン変異種を倒した時も、全員レベルが上がってたような」

「おそらく経験値分配のスキルか装備品を持ってるんでしょう」

「それが奴等の強さの秘密か」


 この部屋の入口でギルドマスター達がそんな話をしてると、反対側の入口から冒険者風の四人の女性が入ってきた。


「凄っ!」

「ほんとに倒しちゃったよ!」

「これで助かったわ!」

「ようやくダンジョンから出れる!」

「あっ、月下の華!」


 女性職員が、救助対象の月下の華の四人全員の生存を確認する。


「やはりこの先のセーフエリアにいたんですね」

「無事でよかったわ」

「とりあえず話を聞きに行くか」


 ギルドマスターと二人の職員は、冬雅達と月下の華と合流するため部屋に入る。同時に反対側の入口から月下の華の四人もこの部屋に入ってきて、冬雅達に声をかける。


「ありがとう! あなた達のおかげで助かったわ!」

「ええと、あなた達が月下の華ですか」

「そうよ。このヒュドラのせいで出られなくなって困ってたの」

「けが人とか食料とかは大丈夫ですか?」

「大丈夫。けが人はいないし、食料もまだ残ってるわ」

「節約しながら食べてたから、お腹はすいてるけどねー」

「あなた達、凄いわね。三人でヒュドラ変異種を倒すなんて。そういえば初めて見る顔だけど、どこかの国から来たSランクなの?」

「いえ、俺達はベールを拠点にしてるBランクですよ」

「は?」


 月下の華の四人は、冬雅達のランクを聞いて驚く。


「ヒュドラ変異種を倒せるのに、Bっておかしいでしょ」

「俺達はギルドに登録して、まだ一か月くらいなので」

「ああ、元から強かったパターンか」

「そのお前達のランクの件だが」


 冬雅達と月下の華の会話に、ギルドマスターが加わる。


「ひかりのつばさは、ギルドに帰ったらAランクな」

「えっ? どういうことですか?」

「ランクアップ試験は?」


 冬雅とサキが、ギルドマスターにそう聞く。


「Aランクアップ試験は受けなくていい。ベールにはSランクの試験官がいないからな」


 ランクアップ試験の試験官は、これまではランクが上の冒険者が担当していたが、Aランクを試験するSランク冒険者が辺境の町ベールにはいなかった。


「Sランクがいない場合、ギルドへの貢献度とか、ランクアップポイントとかでAランクになれるんだよ。俺の推薦も必要だが」


 ギルドマスターに続いて二人の職員も説明に加わる。


「普通はAランクになるための貢献度は簡単には上がらないんですが、ひかりのつばさは、レッドドラゴンの討伐、Aランクダンジョンの救助依頼、そしてAランクダンジョンのボスの変異種を倒したので、もう十分でしょう」

「ほんとうならボスの変異種は、国の軍隊やSランク冒険者パーティが動いて討伐するのよ。だからあなた達には、メイル国から報酬がもらえると思うわ」

「そうなんですか」

「それじゃあ、国に討伐の証明を提出するために、ヒュドラ変異種の魔石を取り出しましょ」

「ほかの部位も解体していいですよね。月下の華の無事を確認できましたし」

「ああ、ヒュドラの変異種の素材は貴重だ。全部解体して持ち帰るぞ」


 ギルドマスターと二人の職員は、倒れているヒュドラ変異種の解体を始める。


「解体には時間がかかりそうね」

「私達も手伝おうか」

「その前にお礼をしちゃいましょ。ええと、あなたの名は?」

「トウガです」

「じゃあ、トウガ。私達がこのダンジョンの宝箱から手に入れた物の中から四つあげるわ。武器、防具、装飾品とかあるけど、どれがいい?」

「ええと……なら装飾品がいいです」

「じゃあ……」


 月下の華のリーダーの女性が、彼女のアイテムボックスから指輪を四つ取り出す。


「これを受け取って。ちなみに私達四人を助けてくれたから、四つね」

「なるほど、では遠慮なく」


 冬雅は月下の華のリーダーから四つの指輪を受け取って、自分のアイテムボックスに収納する。


 生命の指輪×1

 魔力回復の指輪×1

 睡眠無効の指輪×1

 混乱無効の指輪×1


「じゃあ、ちゃっちゃと解体しちゃいましょ」

「あなた達は休んでていいよ。激戦の後だしね」

「はい。ありがとうございます」


 ヒュドラ変異種の解体に月下の華の四人が加わって、その後、解体作業が終わり、冬雅のアイテムボックスやギルドマスター達の魔法のかばんに、牙や皮などの素材を収納する。


「ヒュドラ変異種の魔石は、ギルドで預かっておくぞ。王都に持ってって提出すれば、報酬をもらえるからな」



 次回 コロポックル転職 に続く

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