第五十六話 Aランクダンジョンへ
武器屋で買い物が終わった冬雅達は、辺境の町ベールにある魔道具屋に行き、サキと凛子は80キロの魔法のかばんを10000ゴールドで購入し、今まで使っていた物は売却した。
「これで今日もらったお金、ほとんど使っちゃった」
「私も」
「俺はまだ残ってるけど、いざという時のためにとっとくよ」
今日の報酬 60000G(一人あたり)
冬雅
轟雷の剣 20000G
精霊の胸当て 18000G
サキ
光の剣 20000G
光の鎧 20000G
光の盾 12000G
魔法のかばん 10000G
凛子
賢者の杖 25000G
賢者のマント 18000G
魔法のかばん 10000G
「ねえ、サキ。60000ゴールドって、日本円だといくら?」
「私は考えるの止めたわ。ここと日本じゃ、物の価値が違うし」
「確かに日本で、魔法のかばんなら、一億円くらいで売れるかも」
「しまった! それなら前のやつ、日本に帰った時のために、売らなければよかった!」
「いやいや。日本で魔法のかばんを売ったら、色々やばいことになるよ」
「そうなの?」
「やばい組織に狙われて、何されるかわからないよ」
「うわー。ならやめとくか」
「あっ、そうだ。レッドドラゴンの魔石の件だけど」
「ああ。じゃあ、今から宿屋に帰って調べてみましょ」
冬雅達はいったん宿屋に帰り、サキと凛子の部屋で、サキが装飾品合成を試してみる。
「ええと、レッドドラゴンの魔石の効果は、火無効だって」
「それは凄い! それで作った装飾品があれば、ドラゴンの火のブレスはもう怖くなくなる!」
「確かに凄いわね。そういうことなら、全属性の無効装飾品を全員分、揃えてみたいけど」
「で、どれとどれの合成で、この魔石を使うの?」
凛子はテーブルの上に並んでいる指輪を見ながらそう聞く。
「これは悩むわ。貴重だから、簡単には決められない」
「そうだ。オーガキングの魔石の使い道も決めないと」
「確か、攻撃力10%アップだっけ?」
「そう。そうだ! 力の指輪を二つ買ってきて合成して、怪力の指輪を作って、それと今ある怪力の指輪と合成して、攻撃力特化の指輪にしよう」
「ならレッドドラゴンの魔石の方は?」
「こっちも守りの指輪を二つ買ってきて、防護の指輪二つと合成して、防御特化の指輪にしよう。ああ、指輪の代金は俺が出すよ。力の指輪と守りの指輪、二つづつなら買えるはず」
そう決めた冬雅達は大通りにある武器屋に行き、力の指輪二個、守りの指輪二個を買って、また宿屋に戻ってくる。そしてそれらを合成した後、サキはAランクの魔石を使った装飾品合成を始める。
怪力の指輪 攻+10
怪力の指輪 攻+10
オーガキングの魔石 攻+10%
MP40
合成しますか?
はい いいえ
サキは、はいを選択し、新たな指輪が完成した。
破壊王の指輪 攻+15%
さらに、
防壁の指輪 防+10
防壁の指輪 防+10
レッドドラゴンの魔石 火無効
MP40
合成しますか?
はい いいえ
と表示され、サキは、はいを選択して新たな指輪を作り出す。
火竜の指輪 防+20 火無効
「じゃあ、破壊王の指輪は俺が使うよ。火竜の指輪は宮本さんが使って」
「わかった。ありがとう」
サキは守りの指輪二つのお金を出した冬雅にお礼を言う。
「これで、今日一日で、かなり強くなった」
「でも魔族軍と戦うことになるなら、もっと強くなる必要があるよね」
「まあね。軍ということはモンスターの大軍と戦うことになるし、それを率いる魔族もかなり強いはず」
「じゃあ、今日は帰る方法を探すのは止めて、ギルドのモンスター討伐系の依頼を受けてみない?」
「そうしよう。新しい装備を試してみたいし」
「私も新しい召喚獣の力を試したいから賛成!」
「じゃあ、冒険者ギルドへ行こう」
冬雅達は宿屋を出て、冒険者ギルドに向かう。そして到着して中に入り、巨大掲示板の前に行って、辺境の町ベールの周辺にいるモンスターの討伐依頼がないか探し始める。その時、
「あっ、ひかりのつばさのみなさん!」
受付嬢が慌てた様子で、冬雅達のいる場所に走ってくる。
「どうかしましたか?」
「みなさんにやってもらいたい依頼があります! 会議室まで一緒に来てください!」
「何か急ぎの依頼みたいですね」
「はい。Aランクダンジョンの銀の地下迷宮で、Aランクパーティが行方不明になったんです。その救助を手伝って欲しいんです」
「わかりました。そういうことなら急ぎましょう」
冬雅達は受付嬢と一緒に二階の会議室に入る。すると室内にギルドマスターと、ジーク率いるAランクパーティ「アイアン・スピリッツ」のメンバーがいた。
「ギルマス! ひかりのつばさの皆さんが手伝ってくれるそうです!」
「おお、お前達か。それは助かる。とりあえず座ってくれ」
冬雅達は会議室の椅子に座り、受付嬢は部屋を出ていく。
「よし、ではひかりのつばさに状況を説明する。銀の地下迷宮に入ったAランクパーティ「月下の華」から救難信号が送られてきた。お前達は、救助隊と共に銀の地下迷宮に行って、彼女達四人を探し出して救助して欲しい」
「その銀の地下迷宮はどこにあるんですか?」
「このベールから南に馬を走らせて二、三時間くらいの場所だ。銀の地下迷宮はメイル国が直接管理していて、その名の通り、銀が手に入るAランクのダンジョンだ」
「銀ですか。それで地下迷宮の地図はありますか?」
「ああ。今、ダンジョンの地図を用意させている。あと、水と携帯食とハイポーションも用意させているから、後で受け取ってくれ」
「わかりました」
その時、受付嬢がまた会議室に入ってくる。
「ギルマス、「不死鳥の火」も救出作戦に参加してくれるそうです。今、ほかの場所にいるメンバーに知らせに行ってもらってます」
「よし。Aランクパーティ二組に、騎士団長の弟子なら何とかなるかもしれん。準備が出来次第、銀の地下迷宮へ出発するぞ」
「あの……俺達、ダンジョンの攻略の準備をまったくしてないので、買い物に行って来てもいいですか?」
冬雅がギルドマスターにそう聞く。
「おお、そうだな。いきなりの話で準備が必要だな。ではいったん別行動にして、後で南門に集合することにしよう。お前達は馬は持ってるか?」
「はい」
「なら馬車は必要ないな。ジーク達も馬はあるだろ」
「はい。俺達も馬車は必要ないですよ。俺達も準備が出来次第、南門へ行きます」
そう言って冬雅達とジーク達は会議室を出ていく。
「まさか、お前達が騎士団長の弟子だったとはな。というかレッドドラゴンを倒せるのに何でBランクなんだ?」
「俺達はギルドに登録して、まだ一か月くらいなんですよ」
「そうだったのか。ならランクアップポイントさえ稼げれば、お前達ならすぐにAランクになれるだろうな。ああ、俺達は魔道具屋に行く。お前達は?」
「俺達は食料を買いに行きます」
「なら南門で合流しよう」
そう言って冬雅とジーク達は冒険者ギルドを出て、ダンジョンに入る準備を始める。そして買い物を済ませた冬雅達は、辺境の町ベールの南門に行く。すると冒険者ギルドマスターと数人の職員が待っていた。
「おお、来たか。これが迷宮内の地図と救援物資だ」
冬雅は職員から、地図、大量の携帯食と水、ハイポーション十本、キュアポーション五本をもらい、アイテムボックスに収納する。そしてしばらくすると、「アイアン・スピリッツ」と、四人組のAランクパーティ「不死鳥の火」がやってきて、彼等も地図と救援物資を受け取る。
「よし、そろったな。では銀の地下迷宮に出発する」
集まった冒険者達とギルドマスターと職員が馬で南門から出発し、二時間半かけて銀の地下迷宮の入口に到着する。そこには巨大な神殿のような建物があり、その入口付近に小さな建物があって、その付近にメイル国の兵士が四人立っていた。
次回 銀の地下迷宮 に続く