第五十五話 新たな武器と防具
「今後の行動って?」
「私達の目的は、強くなってこの世界で生活できるようになることと、帰る方法を探すことでしょ」
「うん」
「私達、かなり強くなったし、そろそろ帰る方法を探したいんだけど」
「ああ、確かにそろそろ探し始めてもいいか」
「それと帰る方法が判明したとして、魔族軍はどうするの? 私達は魔族軍から、この世界の人々を助けるために呼ばれたでしょ」
「そうか。勇者の浅井達が、魔族軍を倒さないと帰れないのか」
冬雅は少し考える。
「理想は、俺達が帰る方法を探して、浅井達が魔族軍を倒して、全員一緒に帰ることかな」
「もし帰る方法が判明して、まだ浅井達が魔族軍を倒してなかったら……」
「俺達が手伝うしかないか」
「やっぱそうよね」
「魔族軍と戦うかもしれないから、もっと強くなる必要もあるのか」
冬雅達は色々な状況を考えながら話し合う。
「お嬢ちゃん達、帰る場所があるのか?」
「そう。あっ、私達が日本に帰ったら、おじいちゃんはどうなるの?」
「コロじいはここに残るか、俺達と一緒に日本に行くか」
「おじいちゃんはどうしたい?」
「うーむ。それならわしも一緒に行くぞい。お嬢ちゃん達と離れるのは寂しいしの」
「やった! よかった!」
「まあ、日本に連れて帰っても、小さいし大丈夫でしょ」
「それで、そろそろ帰る方法を探さない?」
「そうしよう。じゃあ、今日は図書館に行ってみる?」
「あー、私は本を読むのは無理。漫画なら、いくらでも読めるけど」
「凛子は途中で寝ちゃいそうね」
「それもあるし、文字がいっぱいの本を読んでも、内容が頭に入ってこないし」
「あんた、教科書はどうしてるの?」
「私の成績、知ってるでしょ。そういうことだよ」
「……」
「まあ、人には得意なことと不得意なことがあるから、無理することないよ。できる範囲で、できることをやればいいよ」
「なら一応、私も図書館に行くよ。私が読めそうな文字が少ないのがあればいいんだけど」
冬雅達は朝ご飯を食べてから外出の支度をして、辺境の町ベールにある大きな図書館に行く。
「勇者召喚に関する本があるか探してみよう」
「なければ転移魔法とか、召喚魔法とか、別の世界に関する本とかか」
「召喚? ならそれは私が探してみよ」
三人は図書館内の魔法に関する本がある場所で何冊かめぼしい本を見つけ、机に座って読み始める。そして数時間後、
「勇者召喚の本はないみたい」
「こっちも何の手がかりもなかった」
「zzzzzzzz……」
三人は元の世界に帰る方法は見つけられなかった。
「今日はこのくらいにしとこう。ずっと細かい文字を見てると疲れるし」
「そうね。また明日にしましょう。帰るよ。凛子」
「うーーん。もう少し……むにゃむにゃ」
冬雅達は図書館を出て、大通りの飲食店でお昼を食べたり、買い物したりしてその日が終わる。その次の日も、冬雅達は朝から図書館に向かって歩いていく。その途中、町の住人達が大通りで何か騒いでいるのに気づく。
「あっ! あれは!」
「レッドドラゴンだ!」
「すげー!」
「騎士団が倒したのか!」
冬雅達は巨大な台車に乗ったレッドドラゴンの死骸が、騎士団によって運ばれていくのを見る。その騎士団は、冒険者ギルドへ向かって進んでいた。
「おお! お前達!」
「リーナ師匠!」
その騎士団の中にリーナがいて冬雅達と合流する。
「ちょうどよかった。今から冒険者ギルドにレッドドラゴンを持っていって解体してもらうんだ。お前達も来い。私達で倒したんだからな」
リーナは周囲の人々に聞こえるようにそう話す。それに冬雅も乗っかって話す。
「はい! 師匠!」
冬雅達は騎士団と共に冒険者ギルドに行って、レッドドラゴンの死骸を解体場の倉庫へ運搬するのに付き合う。
「これは立派なレッドドラゴンだな」
「腕がなるぜ!」
「おい! いちばん切れるやつを持ってこい!」
解体場の職人はレッドドラゴンの解体を始める。
「こちらが受取証になります」
買取担当の職員がリーナにレッドドラゴンの預かり証を渡す。
「それで解体した素材はどうしますか? すべて買い取って現金化しますか?」
「そうだな……」
「師匠! 俺はレッドドラゴンの魔石が欲しいです!」
冬雅がリーナにそう話す。
「ああ。レッドドラゴンを討伐した記念に、魔石くらいあった方がいいか。よし、では魔石以外を現金化してくれ」
「わかりました。解体には時間がかかると思うので、終わり次第、騎士団のほうへ連絡します」
「うむ。よろしく頼む」
冬雅達は手続きが終わり、解体場から冒険者ギルドの中を歩いていく。
「騎士団長のリーナだ!」
「さすがは元Sランク。あのレッドドラゴンを討伐するんだからな」
「一緒にいるのは、騎士団長の弟子達か!」
「あれがひかりのつばさか。騎士団長の弟子の」
「あいつら、ランクアップ試験で飛び級したらしいぞ」
「そりゃあ、レッドドラゴンを倒せるくらいだから、飛び級くらいするだろ」
リーナと一緒に歩いている冬雅達のことを、ギルド内にいる冒険者達が噂している。
「俺達がリーナさんの弟子ということは、もう広く知れ渡ってるみたいです」
「これでお前達にちょっかいを出す奴はいないだろ」
「はい。これもリーナさんのおかげです」
「まあ、どこからかちょっかいを出す奴が出てきたら報告してくれ。それ相応の対応をしよう」
「はい。ありがとうございます」
そんな話をしながら、冬雅達は冒険者ギルドを出る。その後、冬雅達は図書館で日本へ帰る方法を探したり、冒険者ギルドの掲示板の依頼を受けたりしながら日が進み、三日後、レッドドラゴンの解体が終わって、冬雅達は冒険者ギルドの応接室にリーナと共にやってきた。
「こちらが解体費用を差し引いたレッドドラゴンの素材の代金、白金貨で240000ゴールド(白金貨二百四十枚)と魔石です」
応接室のテーブルの上に、積み重なった白金貨と巨大な魔石が乗っている。この国では白金貨一枚は、金貨十枚の価値があった。
(凄い大金だ。桁が多すぎて、紙に書かないと計算できない)
(白金貨なんて初めて見た)
(白金貨って、プラチナだっけ?)
冬雅、サキ、凛子は、積み重なった白金貨を見ながら表情には出さず色々考えている。
「じゃあ、魔石はトウガにやろう。ゴールドは四等分にするか」
「俺もいいんですか? 魔石をもらいましたが」
「今回の討伐ではトウガが活躍しただろ。それの報酬だ」
「ありがとうございます!」
冬雅達は240000ゴールドを四等分にして、冬雅はアイテムボックス、リーナ、サキ、凛子は魔法のかばんに収納する。実は今回の報酬をどうするかは事前に決めていて、その通りに分配した。
「それとひかりのつばさは、ワイバーン二体を倒したと騎士団から報告がありました。その権利はひかりのつばさにありますが、売却しますか?」
「はい。すべて売却します」
「ではワイバーンの代金と討伐依頼の報酬は、また後日支払われます。こちらがワイバーン二体分の預かり証です。それと今回のレッドドラゴンの買取のランクアップポイントを、ひかりのつばさのみなさんのカードに付与します」
冬雅達は冒険者ギルドカードを渡してポイントを付与してもらって返してもらい、加えてワイバーン二体の預かり証ももらう。そして冬雅達は冒険者ギルドを出てリーナと別れ、彼女に紹介された武器屋に再び訪れた。
「大金が手に入ったから、一番強いのを買おう」
「私はもっといっぱい入る魔法のかばんも買いたいから、お金を残しとかないと」
「私は強さだけじゃなくて、デザインも重視して選ぶよ」
冬雅は雷魔法が付与された魔法の剣と、美しい飾りのついた精霊の胸当て、サキは光の魔法が付与された光の剣、光の鎧、光の盾、凛子は魔法を大幅に強化する賢者の杖と、美しい刺繍が特徴の真っ赤な賢者マントを購入する。
冬雅
轟雷の剣 攻+80 雷魔法付与
精霊の胸当て 防+55 魔法耐性30%
サキ
光の剣 攻+80 光魔法付与
光の鎧 防+65 闇無効
光の盾 防+40 魔法耐性30%
凛子
賢者の杖 攻+40 魔+40 魔法強化30%
賢者のマント 防+40 魔法耐性40%
次回 Aランクダンジョンへ に続く