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第五十二話 レッドドラゴン

「グオオオオオオオオオン!」


 レッドドラゴンが飛行しながら雄たけびを上げる。レッドドラゴンは全身が硬い赤色のうろこで覆われた空を飛ぶ竜で、Aランクモンスターである。この場に現れたレッドドラゴンは体長が三十メートルを超えていて、口から爆炎のブレスを吐き出すことができた。


「な、なんでレッドドラゴンが……」

「撤退だ! 全員、撤退しろ!」

「早く逃げろ! 奴のブレスがくるぞ!」

「うわわわわわわ!」

「撤退だーーー!」


 この場にいる騎士団員と冒険者達は、リーナの指示で急いで撤退を始める。


「五日前の偵察では、この付近にレッドドラゴンなんていなかったはず。その五日のあいだにここに現れたのか……何て運の悪い」

「リーナさん。あいつと戦わないんですか?」

「ああ。レッドドラゴンは、レッドワイバーンと同じAランクなんだが、強さがまったく違う。レッドドラゴンは限りなくSに近い、つまりAランクの上位で、レッドワイバーンはAランクの下位なんだ。その差は天と地ほどの差がある」

「でもリーナさんは元Sランクですよね」

「むっ、痛いところをつかれたな。Sランク冒険者パーティなら、レッドドラゴンと互角以上に戦えるだろう。だが今、この場にSランクは私一人だ。一人でレッドドラゴンと戦うのは厳しい。少なくとも攻撃担当と防御担当が必要だ」


 レッドドラゴンと戦うには、爆炎のブレスを防ぐ魔法障壁が使える者と、レッドドラゴンにダメージを与えられる高い攻撃力を持つ者が数人必要、というのがこの世界の常識だった。


「それにこの場にいる者達は、さっきの戦いで疲弊してる。とてもレッドドラゴンとの連戦はできないだろう」

「グオオオオオオオンンンンン!」


 リーナが冬雅達にレッドドラゴンの恐ろしさを説明していると、レッドドラゴンが、姿がはっきり見えるくらいまで接近してきた。


「お、お前達も早く逃げろ!」

「リーナさんは?」

「私は風の最上級魔法を使って奴を足止めしてから逃げる。さあ、早く!」


 そう言ってリーナは全身から強大な魔力を放出し、さらに精神を集中させる。


「上泉君、私達も逃げる?」

「いや、リーナさんひとりを置いて逃げるのは……」

「ダブルサイクロン!」


 リーナは巨大な竜巻を二つ作り出し、それを接近してきたレッドドラゴンを狙って放つ。それに対しレッドドラゴンは空を飛びながら大きく息を吸う。


「ブフアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 レッドドラゴンは口から爆炎のブレスを吐き出した。その猛烈な勢いの火がリーナが放った二つの巨大な竜巻を吹き飛ばし、さらに彼女や冬雅達がいる場所まで到達する。そしてリーナは風系最上級魔法を使った直後で、魔法障壁を展開できなかった。


「キャアアアアアア!」

「魔法障壁!」


 リーナの代わりに凛子が、準備していた魔法障壁を壁状に展開する。それでレッドドラゴンが放った爆炎のブレスを防いだ。


「た、助かった……。いや、お前達、なぜ逃げない!」

「リーナさんを置いて逃げられないですよ。こうなったら一緒に戦いましょう」

「なっ、いくらお前達が将来有望でも、レッドドラゴンの相手は無理だ」

「でもここはもう奴の射程内です。逃げられませんよ」

「くっ、ならばやるしかない。少しでもほかの奴等が逃げる時間を稼がないと」

「ではリーナさんは魔法障壁で防御を担当してください。俺達が攻撃を担当します」

「何っ!」

「加速! 怪力!」

「戦乙女の誓い!」

「魔力高揚! そして魔力チャージ!」


 冬雅達は最初の能力強化スキルが切れたので再び使用する。


「い、戦乙女の誓い? それに魔力チャージって……」

「ガアアアアアアア!」


 リーナが初めて聞くサキと凛子のスキルに驚いていると、接近してきたレッドドラゴンは口から巨大な火の球「火炎弾」を冬雅達を狙って吐き出す。レッドドラゴンの爆炎のブレスは強力だが、連続では使えず、五分程度待たないと使えなかった。


「くっ、魔法障壁!」


 それをリーナが魔法障壁を壁状に展開して防ぐ。


「俺と宮本さんは、空中にいる奴にダメージを与えるほどの攻撃はできない。佐々木さんが雷の最上級魔法で攻撃をお願い」

「わかってるって。まかせてよ」


 そう言いながら凛子は精霊の杖を掲げて魔力をためている。精霊の杖はすべての攻撃魔法の威力を二割程度、強化する能力を持っていた。


「くっ! 苛烈過ぎる! 長い時間は持たないぞ!」


 レッドドラゴンは火炎弾を連続で口から吐き出し、それをリーナはひとりで防いでいる。


「チャージできた!」

「リーナさん! 攻撃の準備ができました!」

「わかった。魔法障壁を解くぞ!」

「サンダーブレイズ!」


 リーナが魔法障壁を解き、凛子が精霊の杖をレッドドラゴンに向けて魔力チャージで強化された大量の特殊な雷を放つ。それが空中のレッドドラゴンに直撃する。


「ガアアアアアアアアアアアアア!」

「うおっ! す、凄い雷魔法だ!」


 凛子が放った雷系最上級魔法によりレッドドラゴンの全身が感電し、さらにその魂まで感電させて大ダメージを与える。そして全身が感電したレッドドラゴンが地上に落下していく。


「今だ! 宮本さん! 俺が先行するから、俺と同じ所を攻撃して!」

「わかった!」

 

 冬雅とサキは、レッドドラゴンに向かって走り出す。


(上泉君、また速くなってる!)


 冬雅は軽業のスキルで今までよりさらに速さが上昇し、サキはその速さについていけなかったが、彼の後を全力で走っていく。そして冬雅はレッドドラゴンが地上に着地したところを狙って、右の翼を狙って必殺技を放つ。


天羽々斬(あめのはばきり)!!」


 冬雅の無数の超高速の斬撃がレッドドラゴンの巨大な翼を切り裂く。その後、サキもレッドドラゴンに接近し、ブラックメタルソードで必殺の一撃を放つ。


「ソウルブレイク!!」


 サキの魂さえも破壊する強烈な斬撃がレッドドラゴンの右の翼を切り裂き、レッドドラゴンは右の翼が機能しなくなり飛べなくなった。


「ガアアアアアアアア!」

「凄い……なんて攻撃だ。あいつらの力はすでにSランクなのか……」


 冬雅達が、物理防御力と魔法防御力の高いレッドドラゴンに大ダメージを与えているのを見てリーナが驚く。


「宮本さんはみんなの所に戻って!」

「上泉君は?」

「俺に考えがあるから、こっちはまかせて」

「わかった」


 サキは全力で凛子達がいる場所に走り出し、冬雅はレッドドラゴンの体に飛び乗り、その背中を走りながら風魔の剣でレッドドラゴンの赤いうろこを斬っていく。


「ガアアアアアアアアアア!」


 冬雅はレッドドラゴンの体にまとわりつきながら、風魔の剣で攻撃していく。その間にサキは凛子達がいる場所に戻ってきた。


「なるほど。あれだけレッドドラゴンに接近していれば、爆炎のブレスも火炎弾も使えない。考えたな」

「あれだけ速く動けば、レッドドラゴンの攻撃は当たらないですね」


 レッドドラゴンは体にまとわりつく冬雅を両手の爪で振り払おうとするが、冬雅は軽業のバランス感覚超強化の効果で、体の表面を高速で移動し、その攻撃は当たらなかった。


「魔力チャージ完了!」


 冬雅がひとりで攻撃している間に、凛子の二回目の魔力チャージが完了する。


「上泉!」

「わかった!」


 凛子の声を聞いて冬雅は急いでレッドドラゴンの体の上から離れる。その直後、凛子は再び精霊の杖を構え、大量の特殊な雷を放つ。


「サンダーブレイズ!」



 次回 師匠と弟子 に続く

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