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第五十一話 予期せぬこと

「ギャオオオオオオオンンンン!」


 討伐隊の前に現れたのはレッドワイバーン三体、ワイバーン十五体だった。ワイバーンはBランクのモンスターで、レッドワイバーンよりひとまわり体が小さく、その全身は緑色のうろこでおおわれていた。そのワイバーン十五体が、先行して討伐隊に襲い掛かる。


「あいつらはブレスは吐かない。魔法障壁担当はレッドワイバーンの襲来に備えて、それ以外は攻撃開始だ!」

「おおおおおお!」

「いくぞ! お前ら!」

「おう!」

「撃てーーーっ!」

「スパイラルカッター!」

「コールドストーム!」

「オーラアロー!」


 騎士団と冒険者達は、飛来してくるワイバーンを狙って弓矢や魔法で攻撃をしかける。それらの半数くらいがワイバーンに命中しダメージを与えるが、ワイバーンは臆することなく突撃してくる。


「俺達はレッドワイバーンを狙うぞ」

「わかってる。ワイバーンはBランクにまかせよう」


 Aランク冒険者達はワイバーンへの攻撃には参加せず、レッドワイバーンの動きを警戒している。一方、ブレス攻撃を持たないワイバーンは、地上に降下して騎士団や冒険者達に爪や牙で襲い掛かり、冒険者達と接近戦が始まる。


「私は魔法障壁準備中だから、二人にまかせるよ」

「わかった」

「まかせて」

「宮本さん。必殺技はいざという時のために温存しておこう」

「了解」


 冬雅は風魔の剣、サキはブラックメタルソードを構えて周囲を警戒していると、一匹のワイバーンが降下してきて、口を大きく開けて冬雅に噛みつこうと襲い掛かる。


「竜牙一閃!」

「ハイオーラブレード!」


 迫ってきたワイバーンの開いた口に、冬雅が白い破壊のオーラの斬撃を放ち、さらにサキが高出力の魔力をまとわせた斬撃をワイバーンの体を狙って放つ。


「ギギャアアアアアアア!」


 その二人の剣技が、突撃してきたワイバーンの口と体を切り裂き、そのワイバーンは絶命して、そのまま地面に激突した。


「まず一体」

「ええと、ほかの人が戦ってるワイバーンとも戦う?」

「いや、獲物を奪うことになるから、ワイバーンから接近してくるのを待とう。もちろんワイバーンに負けそうな冒険者がいたら助けるけど」


 冬雅とサキは、周囲のワイバーンと戦ってる騎士団や冒険者達を見る。


「大丈夫そうね」

「ここにいる冒険者はBランク以上だから、Bランクのワイバーンに一方的にやられるってことはないと思う。騎士団はリーナさんがいるから大丈夫だろうし」

「じゃあ、ワイバーンがこっちに来るのを待つしかないか」

「いや、ちょっと釣ってみよう」


 周囲を確認した冬雅は、風魔の剣に魔力を注ぎ、空を旋回して地上の様子を見ているワイバーンを狙って豪快に振る。すると風のやいばが発生して、上空のワイバーンに向かって飛んでいく。


「グワッ!」


 その風のやいばはワイバーンには当たらなかったが、ワイバーンは冬雅のことを認識し、急降下してくる。


「やった! 釣れた!」

「じゃあ……ハイオーラブレード!」

「竜牙一閃!」

「ギギャアアアアア!」


 冬雅達は接近してきたワイバーンをまた倒し、彼等の頭の中にレベルアップ音が鳴り響く。


「やった! レベルが上がった!」

「ワイバーンに警戒しながら確認してみよう」


 近くにワイバーンがいないことを確認した冬雅とサキと凛子は、ステータスボードを見る。


「レベル33になった! スキルも覚えた!」

「私も!」

「私も新しいのを召喚できるようになったよ!」


 冬雅達はレベルが上がり新たなスキルを習得した。


 冬雅

 軽業かるわざ

 速さ30%上昇

 バランス感覚超強化


 サキ

 人馬一体

 馬に乗っている時、攻撃力20%上昇


 凛子

 スパルナ召喚

 霊鳥スパルナを召喚する

 消費MP 40


「軽業! 凄い! もっと速くなれるのか!」

「人馬一体か。アンヴァルに乗って戦えば強くなれるみたい」

「私はスパルナ召喚だって。鳥みたいだけど、大きな鳥なら乗って空を飛べるかも!」


 冬雅達は新たなスキルを習得して喜んでいる。そうしてるうちに離れた上空で地上の様子を見ていた三体のレッドワイバーンが、討伐隊に急接近してきた。


「レッドワイバーンが来たぞ! 魔法障壁準備!」

「ブフアアアアアアア!」

「ブフアアアアアアア!」

「ブフアアアアアアア!」


 三体のレッドワイバーンが同時に地上へ向けて広範囲に火のブレスを吐き出す。それを騎士団と冒険者達は準備していた魔法障壁で防ぐ。


「よし! 俺達の出番だ! 怪力!」

「加速!」

「堅牢!」

「魔力高揚!」


 ジーク率いるアイアン・スピリッツが能力強化スキルを発動し、レッドワイバーンに攻撃をしかける。それに続き、ほかのAランク冒険者パーティも戦いを始める。


「私達もいくぞ!」

「はっ!」


 さらにリーナと騎士団の精鋭もレッドワイバーンと戦闘を開始する。


「Aランクの冒険者達が能力強化魔法を使ってた。この世界では能力強化スキルはAランクなら使えるみたいだ」

「なるほど。それで私達も参戦する?」

「うーん。隙があればレッドワイバーンを狙おうと思ってたけど、これは無理かな」

「そうね。リーナさん達とAランクの冒険者達ががっつりと戦ってるしね」

「今、狙えるワイバーンもいないんだけど」


 この場に現れたワイバーンすべてが、すでに騎士団と冒険者達が戦っていて、相手のいないワイバーンはいなかった。


「じゃあ、とりあえず待機してよう」

「わかった。ならリーナさん達とAランクの冒険者の戦い方を観察しましょう」


 冬雅達はレッドワイバーンと戦ってるリーナ達を見る。


「サイクロン!」


 リーナは風系上級魔法を発動し、巨大な竜巻を発生させて放つ。それがレッドワイバーンの全身を飲み込み、それによって翼が傷ついて飛べなくなったレッドワイバーンが地面に落下する。


「よし! かかれ!」

「おお!」


 リーナの指揮で彼女と騎士団の精鋭が、地上に降りたレッドワイバーンに向かって突撃し、周囲を囲んで接近戦を始める。


「うおおおおお! 氷結剣!」


 その少し離れた場所では、すでにレッドワイバーンを墜落させ、地上で戦っていたジークが、剣に冷気をまとわせてレッドワイバーンに突撃する。それに対しレッドワイバーンは足の爪で彼を貫こうとするが、彼は冷気の斬撃でレッドワイバーンの足を切り裂いた。


「ギギャアアアアアアア!」

「ジークに続け!」

「オーラブレード!」

「サンダーストーム!」


 アイアン・スピリッツのメンバーが、剣のスキルや雷系上級魔法でレッドワイバーンに攻撃する。彼等は連携攻撃でレッドワイバーンを追い詰めていく。


「リーナさんの方とジークっていうAランクの人の方はもうすぐ倒せそうね」

「うん。あとはあっちの二つのAランクパーティの方だけど」


 この作戦に参加していたアイアン・スピリッツ以外のAランク冒険者パーティは協力してレッドワイバーンと戦っていたが、こちらは苦戦しているようだった。


「向こうは、倒すのに時間がかかりそうね」

「リーナさん達がもう終わりそうだから、あっちに援護に行くと思う」

「じゃあ、やっぱり私達の出番はないか」

「無事に戦いが終わりそうだの。よかった。よかった」


 その後、リーナ達が加勢して最後のレッドワイバーンも倒し、この場に現れたレッドワイバーン三体とワイバーン十五体はすべて倒された。


「おーい! トウガ! 無事か!」

「はい。誰も怪我もしてません」

「それはよかった。つっ」


 冬雅達がいる場所に戦いを終えたリーナが来たが、彼女は右腕に軽いやけどを負っていた。


「それ、大丈夫ですか?」

「ははは。この程度、かすり傷だ。ポーションでも飲めばすぐに治る」

「いやいや。ここはわしの出番じゃろ。ヒール!」


 凛子の肩に乗っているコロポックルが、リーナの右腕のやけどを治すため回復魔法を発動する。


「おお、回復魔法か。助かったよ」


 コロポックルの回復魔法によって、リーナの右腕の怪我がすぐに完治した。


「ほっほっほっ。やっとわしの回復魔法が役にたった。お嬢ちゃん達はちっとも怪我しないから、今まで何もすることがなかったからのう」

「安全第一で戦ってるからね」

「リーナさん。これで今回の作戦は終了ですか?」

「そうだな。報告のあったレッドワイバーン三体は倒したから、後は生き残ってるワイバーンがいないか捜索を……」


 その時、凛子が遠くの空から、強大な魔力反応を感知する。


「むっ、強い魔力を持った何かが来るよ!」

「何っ!」


 冬雅達は凛子が向いている方向を見上げる。すると飛行する赤色の巨大なモンスターがこちらへ接近してきていた。


「あれもレッドワイバーンかな」

「いや、何かでかいような……」

「あ、あれは……レッドドラゴンだ!」



 次回 レッドドラゴン に続く

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