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第四十六話 アンヴァル召喚

 サキの言葉を聞いて、三人は洞窟の奥に置かれている宝箱のある場所に行き、蓋を開ける。すると中に指輪と宝石が入っていた。


「これ、ダイヤ?」

「本物? 結構、大きいから、本物なら高く売れるんじゃない?」

「アイテムボックスに収納して確認してみるよ」


 冬雅は宝箱から指輪と宝石を取り出し、アイテムボックスに収納する。


 魔力回復の指輪×1

 ダイヤモンド×1


「おお! 本物だ! それに魔力回復の指輪だって!」

「つ、ついにダイヤが私の手に!」

「いや、凛子のって決まってないから」

「えー、いいじゃん。今はお金に困ってないし」

「ああ、それとボス討伐報酬をもらわないと」


 冬雅達は今度はオーガキングが倒れている場所に移動する。


『大地の洞窟、ダンジョンボス討伐報酬をひとつ選んでください。

 怪力の指輪×1

 ミスリル鉱石×1

 影馬召喚のスキルブック×1』


「影馬召喚? これは……」

「私用のスキルブック?」

「いや、スキルブックは誰でも習得できるはず、ということは、召喚士じゃなくても召喚スキルが使えるのかもしれない。それと怪力の指輪は、力が10上がるやつで、武器屋にも売ってた。高かったけど」

「ミスリルの装備品も店でも売ってるし、やっぱり貴重なスキルブックがいいんじゃない」

「この選択肢、いつもスキルブックだよね」

「まあね」

「貴重な物、優先だから。じゃあ……」


 冬雅は影馬召喚のスキルブックを選択して入手した。


「お嬢ちゃん、今のはどういうことなんじゃ?」

「ええと、今のは上泉のスキルのシステムで……」


 凛子はコロポックルに色々説明する。


「ほえー。げーむというのはよくわからんが、そこにお嬢ちゃん達の強さの秘密があるんじゃろう」

「そうそう。上泉のおかげで私達はどんどん強くなってるの」

「ええと……そうだ。オーガキングと斧も回収しておこう」


 褒められて照れている冬雅は、倒れているオーガキングの死骸を回収する。


 オーガキング×1

 大地の斧×1


「あっ、魔法陣がある! さっきまでなかったよね」


 洞窟内のこの広い空間の中心付近の地面に、魔法陣があることにサキが気づく。これは宝箱が開けられた時に出現した、地上へ瞬間移動できる魔法陣だった。


「たぶん、この魔法陣で外に出れるんだよ」

「やった! やっと帰れる!」

「報酬は手に入れたし、早く帰りましょ」


 三人は一緒にその魔法陣に乗る。すると三人の体が光に包まれ、その光が消えると冬雅達は大地の洞窟の入口付近に立っていた。


「やった! 外に出られた! ってか、まぶしっ!」

「ずっと洞窟の中だったからね」

「あっ、そうだ! 私、レベルアップで覚えた新しい召喚獣を呼んでみたいんだけど」

「なんて召喚獣だったっけ?」

「アンヴァルだよ。アンヴァル召喚!」

「聞いたことないわね。上泉君は?」

「俺も聞いたことない」

「召喚してみればわかるでしょ。じゃあ……アンヴァル召喚!」


 凛子はアンヴァル召喚を発動する。すると彼女の目の前の地面に五メートルくらいの魔法陣が出現し、そこに毛並みの美しい白馬が現れた。


「ヒヒーーーン!」

「え? 馬?」

「アンヴァルって馬だったのか!」


 聖獣アンヴァルは神話に登場する太陽神ルーの馬で、陸と同じように海の上も走ることができる白馬である。さらに乗り手を魔法で守護する力を持つといわれている。


「それでどんな攻撃ができるのかな?」

「ブルブルブル!」

「口からブレスを吐くとか、魔法を使えるとか」

「ブルブルブル!」


 アンヴァルは気まずそうな表情をしている。


「どうやら移動用の召喚獣のようじゃな」

「ヒヒーーン!」

「じゃあ、この子に乗っていいの?」

「ヒヒーーーーーン!」


 アンヴァルは凛子の言葉を聞いて、嬉しそうな態度をとる。


「じゃあ、乗って……って私、スカートなんだけど」

「それじゃ、またげないわね」

「ならサキが乗って、私は後ろに横向きで乗るってのはどう?」

「ヒヒーーーン!」


 アンヴァルは、サキと凛子の二人が乗ってもいいと言っているように鳴く。アンヴァルの体は大きく、女性二人乗せても問題ないようだ。


「そういえば私、乗馬のスキル持ってたわ」


 サキは騎士のスキルで、乗馬の技術が向上するスキルを持っていた。


「じゃあ、丁度いいじゃん」

「では乗ってみますか。はっ」


 サキはジャンプして、さっそうとアンヴァルに乗る。


「おおー、思ってたより高い! でも乗り心地いいね」

「私はどうやって乗ればいいの?」

「私が手を貸すよ。上泉君も手伝って」

「う、うん」


 凛子はサキと冬雅に手伝ってもらい、アンヴァルに横向きに乗って、前にいるサキに抱きつく。その凛子の肩にはコロポックルが乗っている。


「おっ! 確かに高い! でも怖くないかも!」

「確かに安定してるのう」


 アンヴァルは海上疾走と乗騎補助という二つのスキルを持っていて、乗騎補助は、乗り手を絶対に落とさないというスキルだった。

 

「じゃあ、アンヴァルでベールに帰ろう」

「うん。でもさすがに上泉君までは乗れないよ」

「ブルブルブル……」


 アンヴァルは三人は無理と言っているような表情だった。


「じゃあ、加速で走ってついてくか。そうだ! さっきの影馬召喚のスキルブック!」

「ああ、それでもう一頭、呼び出せばいいのか」

「やっぱりボスの討伐報酬は、私達に必要な物が手に入るようになってるみたいね」

「じゃあ、俺が使っていい?」

「いいよ」

「どんなのが出てくるか楽しみね」


 冬雅はアイテムボックスから影馬召喚のスキルブックを取り出して開き、乗馬召喚を習得する。


 影馬召喚

 影馬を一時間、召喚する


 消費MP 30


「影馬を一時間、呼び出すスキルだって。影馬ってのがよくわからないけど」

「私のほうは、時間は書いてなかったよ」

「それが召喚士か、そうじゃないかの違いかもね」

「なるほど、じゃあ、影馬召喚!」


 冬雅はさっそく影馬召喚を発動する。すると冬雅の目の前の地面に魔法陣が出現し、そこに黒いオーラをまとった黒い馬が現れた。


「ブルブルブル!」

「おお、これが影馬か!」


 冬雅は召喚した影馬のそばへ移動する。


「乗っていいか?」

「ヒヒーーン!」


 冬雅には、その鳴き声が乗っていいよと言っているように聞こえた。


「じゃあ、よっと!」


 冬雅は影馬の背にジャンプして飛び乗る。


「おおう。ほんとに高い! でも安定してる気がする!」

「これで三人で馬で移動できるじゃん」

「じゃあ、このままベールに帰りましょ」

「ええと、上手く操作できるかわからないけど、やってみるか」


 冬雅は馬に乗るのが初めてなので、少し不安だった。


「さぁ! 出発!」

「ヒヒーーーン!」


 サキと凛子とコロポックルを乗せたアンヴァルが、軽快に走っていく。


「頼むぞ!」

「ヒヒーーーン!」


 それに冬雅を乗せた影馬がついていく。


「おお、よくわからないけど走ってる!」


 召喚された影馬も乗騎補助のスキルを持っていて、冬雅の意思を読み取り、乗馬の知識が何もない彼を乗せて、アンヴァルの後を追って走っていく。


「おお! 速い!」

「洞窟まで歩いて三時間くらいかかったけど、これなら一時間かからないで帰れそうね」

「これで行動範囲が広がりそうだ」


 冬雅達は出現するモンスターは無視して馬を走らせ、辺境の町ベールへ帰ってきた。三人は馬に乗ったままベールの城門をくぐり、大通りを進んで、冒険者ギルドの前でアンヴァルと影馬を送還する。


「じゃあ、大地の洞窟での戦利品を換金しよう」


 冬雅達は冒険者ギルドの買取カウンターへ行き、受付嬢と共に解体倉庫へ行って、アイテムボックスに収納させているモンスターの死骸をすべて取り出す。


「解体したら魔石以外は換金してください」

「わかりました。ええと、かなりの数があるので、解体が終わるのに三日くらいかかると思いますが、よろしいですか?」

「はい。では三日後にまた来ます」


 冬雅達は受取証をもらって冒険者ギルドから出る。


「今日はもう終わりでいいよね。昨日、お風呂に入れなかったから、大衆浴場にいきたいんだけど」

「私もお風呂、入りたい!」

「じゃあ、これから大衆浴場に行こうか。それと三日後まで冒険者活動は休みにしよう」

「やった! 休みだ!」


 冬雅達はそのまま大衆浴場へ行ってから宿屋に帰り、その日が終了した。そして次の日から三日間は休日にして、三人は買い物や観光、ごろ寝などして過ごした。そして約束の日になり、その午前中、冬雅達は冒険者ギルドにやってきた。



 次回 四人目の仲間 に続く

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