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第四十四話 上級職

「姫騎士?」

「う、うん。騎士の上級職が、姫騎士と暗黒騎士だって」

「えっ? 聖騎士じゃないの?」

「違うみたい。ゲートオブアルカディアでは聖騎士だったけど、この世界では姫騎士みたいだ」

「それで姫騎士ってどういう職業?」

「いや、俺も詳しくはわからない。姫というくらいだから、それに関係するスキルを覚えると思うけど」

「姫って言ったら、優雅っぽい何かでしょ」

「優雅っぽいって言われても……」


 冬雅達は姫騎士がどんなスキルを習得するか色々想像してみるが、よくわからなかった。


「姫と言っても騎士なんだから、戦うスキルを覚えていくんじゃないかな」

「まあ、それならいいけど。うーん。姫騎士と暗黒騎士か……」


 サキはどっちを選ぶか悩んでいる。


「サキは悩んでるみたいだし、私、転職したいんだけど」

「ああ、じゃあ宮本さんの転職はキャンセルして……」


 冬雅は今度は凛子の職業をタッチする。


「新たに魔法使いの上級職が解放されました。佐々木凛子の職業を選んでください」


 と表示され、職業選択ウィンドウの魔法使いのとなりに、賢者と召喚士の文字が表示されていた。


「佐々木さんの上級職はゲームと同じで、賢者と召喚士だったよ」

「じゃあ、私、召喚士がいい!」

「召喚士ね。ああ、上級職は一度選択すると、選択しなかった方はもう選べないけどいい?」

「えっ? そうなの?」

「うん。下級職ならいつでもほかの職業に転職できるけど、上級職は一度選択したら、もう変更できないんだよ」


 ゲートオブアルカディアでは、下級職は、職業ごとにレベルが記録される仕様だった。例えばレベル10の戦士が魔法使いに転職するとレベル1になるが、また戦士に戻ればレベル10から始められるのである。

 だが上級職は、一度選択すると、もう片方は選択できなくなるというシステムだった。


「へー、そうなの。でも、やっぱり私は召喚士かな。ドラゴンとか可愛いのとか召喚したいし」

「わかった。じゃあ……」


 冬雅は凛子の上級職を召喚士を選択する。すると彼女の全身が一瞬光り、凛子は魔法使いから召喚士に転職した。


「やった! 召喚士になれた!」


 凛子は魔法使いから召喚士に転職し、新たなスキルを習得した。


 コロポックル召喚

 妖精コロポックルを呼び出す

 消費MP 20


「コロポックル? よくわかんないけど、妖精なら可愛い系の召喚獣だよね!」

「コロポックル……ゲームとは違う召喚獣だ。名前は聞いたことあるような。何だっけかな」


 冬雅はコロポックルの詳細までは知らなかった。


「よし、決めた! 私は姫騎士にするよ。暗黒騎士選んだら、完全に中二病だし」

「えー、黒い鎧なんだから、暗黒騎士じゃないの?」

「いや、もっと強い鎧があれば、そっちに変えるし」

「じゃあ、姫騎士を選ぶよ」

「うん。お願い」


 冬雅が姫騎士を選択すると、サキの体が一瞬光り、彼女は騎士から姫騎士に転職し、新たなスキルを習得した。


 戦乙女の誓い

 使用者の攻撃力、防御力、魔力、速さ、回避率が

 十五分間20%上昇

 消費MP 30


「これが姫騎士のスキル……すべての能力値が上がるって凄っ。これだったら堅牢はもう使わな……あっ、堅牢がなくなってる」


 サキは戦乙女の誓いを習得した時、防御力だけ強化する堅牢のスキルがなくなっていた。


「まあ、戦乙女の誓いは堅牢の上位互換だから、なくてもいいのか」

「ねえ、サキも転職したことだし、召喚獣、召喚してみていい?」


 凛子は新たに習得した召喚スキルを使いたくてうずうずしている。


「今、召喚するの?」

「だって、どんな召喚獣なのかわからないし」

「確かにどんな効果があるのか調べるのはいいことだよ」

「じゃあ、召喚してみるよ」

「ちょっと待って! この狭い洞窟の中で召喚して大丈夫なやつなの?」

「大丈夫でしょ。可愛い系の名前だし」

「俺もコロポックルは、巨人とかドラゴンとかではないと思うよ」

「じゃあ、召喚しちゃうよ!」

「念のため、少し離れてよう」

「うん」


 冬雅とサキは、凛子から少し離れて洞窟内の岩陰に隠れる。


「大丈夫だって。じゃあ……コロポックル召喚!」


 凛子がコロポックル召喚を発動すると、目の前の地面に小さな魔法陣が出現し、そこに身長が十センチくらいの白いひげを生やした老人の小人が現れた。その小人は茎のついた緑色の葉っぱを、傘をさすように持っている。


「ほっほっほっ。わしは妖精コロポックルじゃ」

「おじいちゃんの妖精? 可愛い系といえば可愛い系か、な?」

「お嬢ちゃん。ここはどこじゃ?」


 呼び出されたコロポックルは、辺りをキョロキョロと見渡している。妖精コロポックルは、フキの葉の下にいる者と呼ばれる小人で、北方の伝説に登場する妖精だった。


「ここは大地の洞窟だけど」

「ほー。ダンジョンの中か。お嬢ちゃんがわしを呼び出したのか」

「そうだけど、おじいちゃんは召喚獣なの?」

「ふむ。そうみたいじゃのう。お嬢ちゃんの魔力で呼ばれたから、お嬢ちゃんの言うことを聞く契約みたいじゃの」

「それでおじいちゃんはどんなことができるの?」

「そうじゃのー。日向ぼっこと昼寝かのー」

「……」

「ほっほっほっ、冗談じゃよ。わしは回復魔法が使えるぞい!」

「おお! 回復魔法!」

「ついに回復魔法が!」


 コロポックルの姿を見て安心した冬雅とサキが、凛子のそばに戻ってきて喜んでいる。


「何じゃ、お前達。ヒーラーがいないのか。よくここまで来れたのう」

「今まではポーションで代用してたけど、これからは怪我した時、回復魔法で治してもらおう」

「それはいいんじゃが、今は誰も怪我してないの。なら、わしの出番はないの」

「じゃあ、おじいちゃん。帰る?」

「いや、せっかく来たんじゃから、しばらく一緒におるよ」


 そう言ってコロポックルはジャンプして凛子の肩に乗る。


「えっ? 一緒に来るの?」

「うむ。人間の町の観光もしたいし、人間の温泉にもつかってみたいの」

「何か俺が思ってた召喚獣と違う……」

「ま、いいじゃん。おじいちゃん可愛いし、いつでも回復魔法を使ってくれるんだから心強いじゃん」

「それもそうか。じゃあ、攻略を再開しよう」


 無事、上級職に転職した冬雅達は、大地の洞窟を探索しながらモンスターを倒していく。そして四つ目のセーフエリアに到着した。


「セーフエリアだ!」

「疲れてから、丁度よかったわ」

「上泉、のど乾いたよ」

「わしの分も頼むぞい」

「はいはい。ちょっと待って」


 冬雅はアイテムボックスから椅子とテーブルを取り出し、テーブルの上にジュースと食べ物を取り出す。そして三人は椅子に座り、凛子の肩にいたコロポックルは、テーブルの上に降りて飲み食いを始める。


「メイル国冒険者マップによると、ここが最後のセーフエリアだよ」

「じゃあ、次は最深部のボス戦?」

「そう。ボス部屋は最後のセーフエリアからすぐの場所にあるらしい」

「ならここでゆっくり休んで万全の状態にしよう」


 冬雅達はセーフエリアで食事しながらゆっくりとくつろぐ。


「ここの洞窟で装飾品がいっぱい手に入ったから、合成するのが今から楽しみね」


 冬雅達は前のセーフエリアからここまでに、魔力が7上がる魔法のイヤリング、魔鋼の斧、罠看破のスキルブック、麻痺無効の指輪を手に入れていた。そして魔法のイヤリングは、凛子が魔力の指輪の代わりに装備していた。


「私に魔力がいっぱい上がるやつ、作ってよ」

「はいはい。それでここのボスってどんな奴なの?」

「Aランクモンスターのオーガキングだよ」



 次回 オーガキング に続く

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