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第〇〇四話 重要な選択

 冬雅は表示されたスキルの一覧を見て考える。


「早期プレイ特典というのはよくわからないけど、スキルのプレゼントなんて、ゲートオブアルカディアにはなかった。それにこの一覧には、ゲームになかったスキルがある」


 スキル選択ウィンドウにスキルの説明がないので、知らないスキルは名前でその効果を推察する必要があった。


「HP再生とMP再生は、HPとMPが戦闘中に徐々に回復するゲームにもあったスキルだ。ほかのスキルはゲームにはないけど、攻撃力強化とかは能力値が強化されるのはわかる。入手経験値増加はレベルが上がりやすくなるスキルで、金運上昇はお金がたまりやすくなるんだろう。異性運上昇は、俺の女性運が上がるのかな」


 冬雅はどのスキルを選ぶか考える。


「これがゲームだったら、攻撃力強化かMP再生を選ぶ。でも……この世界はゲームとは違って死んだらやり直しできない。生き残るために必要なスキルなら、防御力強化か経験値増加か。いや、お金も生き延びるのに大事か……」


 冬雅はそう考えながらも、自然と異性運上昇をタッチしていた。


「……これはしょうがない。男には命より大切なことがあるんだよ」


 冬雅は早期プレイ特典で異性運上昇を手に入れた。


「あの……上泉君?」

「えっ? な、何?」


 冬雅がベンチに座ってステータスボードのスキル欄を確認していると、この噴水広場に一緒に来た同じクラスの女子生徒の宮本サキ(みやもとさき)が話しかけてきた。そのとなりには、彼女の親友の佐々木凛子(ささきりんこ)もいる。


「さっき、上泉君の体が一瞬光ったように見えたんだけど」

「ああ、転職した時か」

「えっ? 転職?!」

「あっ」


 冬雅は急に女子生徒に話しかけられ、思わず本当のことを言ってしまった。宮本サキはバスケットボール部のエースで、スポーツ万能の女子生徒である。彼女は黒く長い髪を後ろで束ねてポニーテールにしていて、整った顔立ちでスタイルもよく、男子生徒に人気があった。


「転職って、ステータスボードの職業を変えられるってこと?」

「この世界では転職出来ないって、あの城の人が言ってたじゃん」


 サキのとなりにいる凛子が、二人の会話に加わる。佐々木凛子はサキの幼馴染で、肌が白く金髪のいわゆる白ギャルである。オシャレが大好きで、サキは先ほどの服屋で動きやすそうな地味な服を買って着ていたが、凛子は露出が多めのオシャレな服を買って着ていた。

 凛子も美人と言っていい顔立ちで、さらにスタイル抜群なので、サキと凛子でクラスの男子生徒の人気を二分していた。


「ええと……まあクラスメイトだし、いいか。俺の持つスキルで、羊飼いから侍に転職できたんだよ。それでこのことは内緒にして欲しいんだ。転職できない世界で転職できるなんて、城の連中に知られたら絶対に大変なことになる」

「わかった。黙っててあげる。でも条件があるわ。そのスキルで私も転職させて欲しい」

「私も! なんで私の職業、ウェイトレスなの? 確かに夏休みに学校に内緒でファミレスでバイトしてたけど」

「私は家政婦で、持ってるスキルは掃除と料理よ。このままじゃ家政婦しか道がないのよ」

「掃除と料理なら家政婦で役に立つからいいじゃん。私なんか香水作成よ。ウェイトレスで香水作れってどういうこと?」


 サキの職業は家政婦で、凛子の職業はウェイトレスだった。二人はその職業に不満なようだ。


「ええと、俺のスキルで自分の職業は転職できるけど、他人の転職は出来な……ん?」


 冬雅はある可能性を思いつく。


「何? 私達、転職できるの? できないの?」

「ええと……もしかしたら、なんだけど」

「うん」

「俺とパーティを組んで冒険者になるなら、転職できるかも」


 ゲートオブアルカディアでは、主人公は下級職ならプレイ中、いつでも転職することができた。そして仲間が加入した後、仲間の職業も下級職なら、いつでも転職できるシステムだった。


「パーティ?」

「私達が上泉の仲間になれば転職できるってこと?」

「確証はないけど、たぶんできるはず」

「どうする? 凛子」

「仲間になるくらい、いいんじゃない? この世界でウェイトレスとして生きてくなんて嫌だし。私は冒険者になって魔法をバーンって使って、モンスターと戦いたいの」

「うん。私も家政婦じゃなくて剣で戦う冒険者になりたい。いいわ。上泉君と私と凛子でパーティを組みましょ」


 その時、冬雅の頭の中で「ピロリロリン!」という効果音が鳴り響き、ステータスボードが自動で表示される。そしてその仲間の欄に、


 仲間

 宮本サキ(みやもとさき)  レベル1 家政婦

 佐々木凛子(ささきりんこ) レベル1 ウェイトレス


 と表示されていた。


「おお、二人が仲間になってる。それじゃあ……」


 冬雅はサキの家政婦という文字をタッチする。すると


『宮本サキの職業を選んでください』


 戦士

 騎士

 武闘家

 僧侶

 魔法使い

 盗賊

 侍

 魔物使い

 狩人

 無職

 家政婦


 と表示された。


「よし! 宮本さんも転職できるみたいだ」

「ほんと?」

「私は?」

「多分、宮本さんの後で、できると思う」

「やった! これでウェイトレスやらなくて済む!」


 サキと凛子は、自分達も転職できることを知り、喜んでいる。


「それで何の職業に転職できるの?」

「ええと……」


 サキと凛子には、冬雅のステータスボードは見えないので、彼はひとつずつ表示された職業をあげていく。


「その中だと、私は戦士か騎士かな。というか、戦士と騎士って何が違うの?」

「戦士はレベルが上がると攻撃スキルを覚えていって、騎士は攻撃スキルと防御スキルを覚えていくんだ。それと戦士は色々な武器を装備できるけど、騎士は剣か槍だけ装備できる。多分だけど」


 冬雅はゲートオブアルカディアでの職業の違いをサキに説明する。


「なるほど。戦士は攻撃特化。騎士は攻撃と防御ってことね。じゃあ、私は騎士になるわ。攻撃だけじゃなく防御スキルで凛子を守りたいし」

「おお、さすが我が嫁!」

「いや、私にそっちの趣味はないからね」

「えー、いいじゃん。じゃあ私が嫁の方がいい?」

「どっちが嫁でも同じ……はぁ、今は転職の話でしょ」

「そうだった」

「ええと……じゃあ、騎士を選んでみるよ」


 冬雅はサキの職業選択ウィンドウの騎士の文字をタッチする。すると彼女の体が一瞬光る。


「!」

「おっ、上泉の時と同じように光った!」

「これで転職出来たの?」

「ステータスボードで確認してみて」

「うん、ステータス、オープン!」


 サキは自分のステータスボードを確認して職業欄を見る。


「やった! 騎士になってる! あっ、スキルも増えてる! 能力値も変わったみたい!」


 サキは斬撃強化と守りの盾を習得していた。


 守りの盾

 仲間をかばう時、防御力が30%上昇


「おお! やった! じゃあ、今度は私の番だ!」

「はいはい」


 冬雅は仲間欄の凛子の職業をタッチして転職先の職業を表示する。


「それで佐々木さんは、魔法使いでいいの?」

「そう! モンスターの大軍を、私の究極魔法でなぎ倒すみたいな感じがやりたいの!」



 次回 武器屋へ に続く

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