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第三十九話 試練の塔

「ええと……最上階は十二階だって」


 冬雅は「メイル国 冒険者マップ」の試練の塔のページを見ながらそう答える。


「あれは何?」


 サキは試練の塔の入口の近くにある、二メートルくらいの石碑のような物を見ている。その周囲には冒険者パーティが複数いて、休憩している様子だった。


「たぶん転移の石碑だと思う。塔の中にも同じのが何個かあって、転移の石碑の間を瞬間移動できるんだよ」

「ああ、あの人達は、塔の中から出てきて休憩しているのね」


 試練の塔には四階ごとに転移の石碑の部屋があり、入口の転移の石碑に瞬間移動できるようになっていた。そして一度行ったことのある塔の中の転移の石碑の部屋に、入口から戻ることができた。


「入口から行ったり来たりしながら、塔を攻略できるのね」

「それなら気が楽かも」

「よし、俺達も試練の塔の攻略しよう」


 冬雅達は試練の塔の一階の入口から中に入り、彼はマッピングのスキルを発動し、試練の塔一階のマップを作りながら進んでいく。

 試練の塔の一階には、頭が狼で体が毛でおおわれた人の姿のワーウルフ、鋭い爪を持つ巨大な鳥のデスイーグルなどのCランクモンスターが現れたが、冬雅達は問題なく倒し、死骸を回収しながら試練の塔の四階まで到着する。ここまでに下の階へ落ちる落とし穴などの罠もあったが、冬雅の持つ罠看破のスキルのおかけですべて回避できた。


「あっ、転移の石碑があった!」


 冬雅達は四階にある小部屋に入り、入り口にあったものと同じ転移の石碑を発見する。


「これで外に出れるんだよね」

「うん。いったん外に出て休憩しよう」


 冬雅達が転移の石碑に触れると体が光り出し、その光が消えると、彼等は一階の入り口の転移の石碑の前に瞬間移動していた。


「凄っ! これが瞬間移動か!」

「なるほど、これなら安全に少しづつ攻略できるわね」

「上泉、のど乾いたよ!」

「はいはい」


 冬雅は三人分のジュースをアイテムボックスから取り出し、入口の近くで座って休憩する。


「四階まで進んでも、ひとつもレベルが上がらなかったわ」

「ここはCランクモンスターばかりで、経験値が少ないからしょうがないよ」

「宝箱もあまりいいのは出なかったなー」


 冬雅達は四階までに、HPを回復させるハイポーション、MPを回復させるマナポーション、毒などの状態異常を回復させる万能薬の三つを宝箱から回収していた。


「階が進めば、もっといいのが手に入るよ」

「なら休憩したらまたダンジョンに入る? 転移の石碑を使えば、四階に戻れるんだよね」

「いや、今日はこれで終わりにしよう。次の転移の石碑の階まで進んで帰ってきたら、夕方を過ぎると思うから」

「じゃあ、また明日ね」


 その後、冬雅達は辺境の町ベールへ帰り、大衆浴場に行ってから宿屋に帰りその日が終わる。そして次の日、冬雅達は午前中から試練の塔の攻略を開始し、転移の石碑を使って四階から攻略を再開する。

 四階からは宙に浮かぶ毒を持つ浮遊クラゲ、体が石でできているストーンゴーレムなどのCランクモンスターが出現するが、冬雅達は苦戦することなく順調に進み、八階の転移の石碑の部屋に到着し、また入口に戻って休憩する。


「はぁ、レベルも上がらなかったし、宝箱でよかったのは宝石くらいか」


 冬雅達は四階から八階までの宝箱から、ハイポーション、ルビー、鋼鉄の剣、毒消し草を手に入れたが、レベルはまだ上がらなかった。


「レベルアップはボス戦で期待しよう。それに一番の目的はボス戦の討伐報酬だ」


 休憩の後、冬雅達は八階から攻略を再開する。そして十階まで来た時、


「あのモンスターは……」


 冬雅は塔の通路の先に体長五十センチくらいの赤い毛のウサギを発見する。


「ピギャ!」


 その赤い毛のウサギは冬雅達を発見し、冬雅めがけて猛スピードで突撃してくる。


「速っ!」


 冬雅は赤い毛のウサギの突撃をギリギリでかわす。すると赤い毛のウサギは冬雅達の反対側に移動し三人と対峙する。


「加速!」


 すかさず冬雅は能力強化スキルを発動し、速さを強化する。


「あれはたくさん経験値がもらえるラッキーラビットだ! とても素早くすぐ逃げるから、なかなか倒せないモンスターらしい」


 冬雅はモンスター図鑑でそのことを知っていた。ラッキーラビットはCランクモンスターだが、倒すとたくさんの経験値をもらえ、さらにその素材は貴重で高く売れるモンスターだった。


「ああ、ゲームでいうレベル上げ用のモンスターね」

「じゃあ、あいつを倒せばレベルが上がるかも!」

「ピギャー!」


 冬雅達の目の色が変わり、何かを感じ取ったラッキーラビットは急いでこの場から逃げようとする。


「逃がさない!」


 加速を使った冬雅がラッキーラビットに一瞬で接近し、超高速の斬撃でその体を切り裂いた。ラッキーラビットはその素早さでなかなか攻撃が命中しないモンスターなのだが、冬雅の見切りのスキルと剣速強化のスキルのおかげて回避されずに斬ることができた。


「ピギャーー!」


 その斬撃でラッキーラビットは倒れて動かなくなる。そして冬雅達の頭の中にレベルアップ音が鳴り響く。


「やった! レベルが上がった!」


 冬雅達はレベルがひとつ上がって26になった。


「私、シールドバリア覚えたよ!」


 サキはステータスボードを表示してスキルの確認をする。


 シールドバリア

 500ダメージ以下の攻撃を無効化するバリア

 500を超えるダメージを受けた時は

 バリアは破壊され、ダメージをそのまま受ける

 消費MP 25


「この塔でラッキーラビット狩りすれば、簡単にレベルが上がるんじゃない?」

「こいつはレアモンスターだから出現率は高くないと思う」

「それは残念ね」

「まずはこの塔のボスを倒すことを優先しよう」


 冬雅達はさらに試練の塔を登っていき、悪魔の姿の動く石像ガーゴイルや、体長二メートルくらいの火を吐く大トカゲ、サラマンダーなどのCランクモンスターと戦い、とうとう最上階の十二階に到達する。そして十二階を進んでいくと転移の石碑の部屋があり、そのそばに巨大な扉があった。


「これはボス部屋の扉かな」

「ちょっと待って。私、転移の石碑で外に出て、休憩したいんだけど」

「じゃあ、そうしよう」


 凛子の意見を聞いて、冬雅達はいったん入口の転移の石碑の前に戻り、休憩する。


「今回はいいものが手に入った」


 冬雅は指に装備した指輪を見ながらそうつぶやく。彼等は、試練の塔の八階から十二階にあった宝箱から、鋼鉄の短剣、力の指輪、万能薬、マナポーション、ガーネットを入手していた。その力の指輪は、今は冬雅が装備している。


 冬雅の装備

 ミスリルの剣   攻+50

 ミスリルの胸当て 防+35 魔法耐性20%

 守りの指輪    防+5

 力の指輪     攻+5

 力の指輪     攻+5


「この試練の塔を周回してれば、生活費は稼げそうね」

「だからここは冒険者が多いんだろう」


 この試練の塔は辺境の町ベールから近く、さらに凶悪な罠もなく、おまけに転移の石碑のおかげで攻略しやすいので、多くのCランク以上の冒険者達が集まっていた。


「それで休憩した後、ボスと戦う?」

「今日これから戦うなら、マナポーションを飲んでMPを回復させる必要がある。明日にすればマナポーションを使う必要はない。どっちがいい?」

「じゃあ、明日にしましょ。マナポーションがもったいないし」

「私も賛成。今日は塔の中、歩き回って疲れたし」

「じゃあ、ボス戦は明日にしよう」



 次回 アイアンゴーレム に続く

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