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第三十七話 Cランクアップ試験

 冒険者ギルドで戦利品を換金して三等分にした冬雅達は、辺境の町ベールの大通りにある武器屋に来ていた。


「グライン王国の武器屋と同じくらいの品揃えみたいだ」

(ゲームなら、次の町の武器屋は前の所より強い武器を売ってるんだけど、やっぱゲームとは違うか)


 冬雅達は、展示されている武器や防具を見ている。店の奥のカウンターには、背が低くひげを生やしたドワーフの男の店員がいて剣を磨いている。


「よし、やっとこれが買える」


 冬雅は6000ゴールドのミスリルの剣と、4000ゴールドのミスリルの胸当てを持ってカウンターへ行く。ミスリルは魔鋼より硬い金属で、さらにミスリル製の防具なら魔法耐性を高めるという特徴があった。


「私はこれにしよ!」


 サキは杖の先に赤い宝玉がある火炎の杖を手に取る。


「あとは、おしゃれなマントが欲しいけど」

「見た目より性能で選んだほうが……」

「じゃあ、おしゃれで性能がいいマントにしよ」


 サキと凛子は、一緒に展示されているマントを見ている。


「これがいいんじゃない?」

「えー、ちょっとセンスがなー」

「……じゃあ、これは?」

「うーん。なんか普通じゃない?」

「なら、どういうのがおしゃれなの?」

「そうねー」


 凛子は隅々まで展示されているマントを見る。


「おっ! これがいいかな!」


 サキは鮮やかな青色の対冷マントを手に取って羽織る。


「どう? 似合う?」

「まあ、いいんじゃない」

(凛子は何でも似合うからなー)

「でしょ。というか、サキは何買うの?」

「私はブラックメタルシリーズがあるから、ここではいいかな。魔道具屋で買いたいのがあるし」

「ふーん。じゃあ、これ買ったら魔道具屋ね」


 サキと凛子もカウンターへ行って、凛子は火炎の杖と対冷マントを買う。


「あと指輪とかも売ってるけど、どうする?」

「装飾品は後回しにしよう。お金に余裕がある時で」

「わかった。じゃあ、ここはこれで終りね」


 冬雅

 ミスリルの剣   攻+50

 ミスリルの胸当て 防+35 魔法耐性20%


 凛子

 火炎の杖     攻+20 魔+25 火強化20%

 対冷マント    防+25 氷属性耐性50%


 その後、三人は武器屋を出て、大通りにある魔道具屋にやってきた。


「あった! すみませーん!」


 サキは魔道具屋に展示されている6000ゴールドの四十キロのウエストポーチ型の魔法のかばんを購入し、今まで使っていた二十キロの魔法のかばんを売る。


「これで魔法のかばんに、今までの倍入るわ」

「ああ、サキは鎧と盾があるからか」

「そういうこと。これで服とか今まで我慢してたのが色々買えるよ」

「なら後で服屋ね。あっ、そうだ。ここにスキルブックあるよね」


 そう言って凛子は店内を見渡す。すると冬雅がスキルブックの棚の前にいるのを発見する。


「あそこか!」


 凛子は走って冬雅がいる場所に行く。その後をサキが歩いていく。


「上泉! いいのあった?」

「ええと、ライトとクリエイトウォーターと……クリーンかな」

「クリーンあったの?!」

「はい、これ」


 冬雅はクリーンのスキルブックを棚から取って凛子に渡す。


「やった! これで好きな時にクリーンが使える!」

「へー、クリーンあったんだ。ん? 上泉君。何か不満そうな……」

「い、いや。そんなことはないけど」

「ああ、これで私達と手を繋げなくなるからか!」

「ち、ちが……」

「はー、手くらいなら、いつでも握ってあげるのに」

「えっ!」


 冬雅は心の中を読まれ、さらに凛子の言葉で、気まずそうな表情をしている。


「凛子、そのくらいにしたら?」

「そうねー。それでほかのは、どういうスキル?」


 話題が変わり、冬雅は気を取り直して説明する。


「ええと……ライトは暗い時に明るくするスキルで、クリエイトウォーターは水を作り出すスキルだと思う」

「それは便利ね」

「じゃあ、それも私が買うよ。私、MP多いし」

「じゃあ、はい」


 冬雅はライトとクリエイトウォーターのスキルブックも棚から取って凛子に渡し、彼女はカウンターへ行って三冊のスキルブックを購入した。


「もう夕方か」


 買い物が終わった三人は、魔道具屋から出る。


「じゃあ服屋は明日にしとく? 今日はもう疲れたし」

「そうね。ほかの買い物は明日にしましょ」

「なら、後はお風呂に入って宿屋に帰ろう」

「やった! やっとお風呂だ!」

「前の町から三日、入ってなかったもんね」


 冬雅達は通行人に大衆浴場の場所を聞いてそこへ行き、お風呂に入った後、宿屋に帰ってその日が終わった。そして次の日からは旅の疲れを癒すため冒険者活動は休んで、だらだらと宿屋で過ごしたり買い物したりで時が過ぎ、さらに日が進んでCランクアップ試験の日になった。


「今日、Cランクアップ試験を受けるのは三組か」


 冬雅達が冒険者ギルドの裏の訓練場に来ると、数人の試験官と二組の冒険者パーティがいた。さらに訓練場の周りには見学のため集まった冒険者達や受付嬢が立っている。


「そろそろ時間か。ではCランクアップ試験を始める」


 試験官のひとりが、試験を受ける冒険者達に説明を始める。


「試験内容はパーティと同じ人数の試験官との模擬戦だ。この身代わりの首飾りを装備して戦ってもらう。これは一度だけ大ダメージを防ぐものだ」


 試験官達が冒険者達に身代わりの首飾りを配る。


「模擬戦は、身代わりの首飾りをすべて破壊した方が勝ちだ。それと負けた場合でも試験官が半分以上、その力を認めれば合格になる。あと、Dランク試験の時は木製の武器を使っていたと思うが、今日は君達の愛用の武器を使っていい。ここまでで何か質問はあるか?」


 試験を受ける冒険者達は黙っている。


「無いようだな。では最初の模擬戦を始めよう」


 模擬戦はこの場に来た順で戦うことになり、Cランクアップ試験模の模擬戦が始まった。冬雅達は訓練場の端でその戦いを見学している。


「上泉君。何か作戦ある?」

「いや、俺達はBランク相当のレベルなんだから、普通に戦えば合格できるよ」

「今回は全力で戦っていいんだよね」

「うん。俺達の相手は三人だから、ひとりひとりづつ倒そう」

「わかった」

「ふふふ、新魔法を試してみよう」

「よーし、次は最後に来たパーティの番だ!」


 模擬戦は順調に進み、ついに冬雅達の番になる。彼等は訓練場の中心に移動して、三人の男の試験官と対峙する。その三人は剣、槍、杖を持ち、豪華な鎧や盾などを装備している。


(ミスリルシリーズ……それにこっちの子の黒い装備は……)

(こいつらはただのDランクじゃない。油断はできんな)


 試験官達は冬雅達の強力な装備を見て、ただ者ではないと警戒している。


「では模擬戦開始!」


 審判の試験官がそう合図し、冬雅達のCランクアップ試験の模擬戦が始まる。


「加速!」

「堅牢!」

「魔力高揚!」


 いつものように冬雅達は能力強化スキルを発動する。


「むっ! 能力強化系のスキルか!」

「やはりこいつらただ者じゃない!」

「魔力チャージ!」


 凛子は火炎の杖を構え、魔力チャージを発動する。


「はっ!」


 それと同時に冬雅とサキが走り出す。今回はひとりでひとりの試験官を倒すという作戦なので、冬雅はサキとの連携は考えず全力で走り、真ん中にいた剣と盾を持った試験官に向かって突撃する。


「なっ! 速っ!」


 剣と盾を持った試験官が、自分に向かって突風が吹いてきたと感じた瞬間、彼の身代わりの首飾りは破壊されていた。彼は冬雅のあまりに速い移動スピードと剣速に恐怖を感じ、その場でひざをつく。



 次回 バーストフレア に続く

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