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第二十七話 教会の掃除依頼

「依頼書の教会は、王都西地区のこの辺りです」


 受付嬢が冬雅達に王都の地図を見せて、掃除依頼を出した教会の場所を教える。


「この教会にはシスターがひとりいるんですが、ひとりで教会の掃除をするのは大変なので、定期的に掃除の依頼を出してるんです。あっ、掃除道具は教会にあるので用意する必要はありません。掃除が完了したら、シスターにこの依頼書に依頼完了のサインをもらって来てください」

「わかりました。さっそく行ってきます」


 冬雅達は冒険者ギルドを出て、教えてもらった王都の西地区の教会へ向かう。そして二十分くらい歩いてその教会に到着し、冬雅達が教会の礼拝堂に入ると、掃き掃除している中年のシスターがいた。


「こんにちは。冒険者ギルドからきました」

「おっ! 掃除に来てくれた人達か。よく来てくれたね」

「それで俺達はどこの掃除をすればいいですか?」

「そうねー。テーブルと椅子の拭き掃除と、壁の魔石ランプの掃除、それと女神様の像の掃除をお願いしようかしら。ああ、掃除道具はそこのロッカーにあるから、自由に使っていいよ」

「わかりました」

「じゃあ、手分けして掃除しましょう」

「俺は魔石ランプの掃除するか」

「私は女神像を綺麗にするわ」

「残ったのはテーブルと椅子の拭き掃除か。しょうがない。やるか」


 冬雅が壁の魔石ランプ、サキが女神像、凛子がテーブルと椅子の掃除をすることになった。サキと凛子は、ロッカーにあったバケツに水を入るため、外の井戸へ向かう。冬雅は壁際に行って、魔石ランプがある下の壁に手を当ててクリーンを発動する。


「うーん、やはりクリーンは効果範囲があるのか」


 綺麗になったのは五メートルくらいの範囲の壁と、その範囲にある魔石ランプと窓だった。


「まあ、それでも普通に掃除するよりは楽だな」


 冬雅は場所を移動して、壁や魔石ランプなどをクリーンで綺麗にしていく。


「年季の入った女神様ね。これは綺麗にするのは大変そう」


 バケツに水を入れてきたサキは、まず水で雑巾を濡らす。


「ええと、掃除スキルってどう使うのかな。うーん、わからないから普通にやってみようか」


 サキは濡れ雑巾で汚れている女神像を丁寧に拭いていく。すると女神像の汚れが簡単に取れて綺麗になっていく。


「ん? 洗剤も使ってないのに凄い落ちる」


 サキは女神像がどんどん綺麗になっていくのが楽しくなり、あっという間に拭き終わった。


「後は乾拭きで……」


 サキは濡れてない雑巾で、また丁寧に拭いていく。


「よし、これでいいかな」


 サキは掃除が終わった女神像を数歩引いて見る。すると女神像がまるで新品のように綺麗になっていた。


「おお! これは凄い! これが掃除スキルの力か!」


 サキが掃除した女神像は、神々しいオーラがまとっているようにも見えた。


「ほー! 綺麗になった!」


 綺麗になった女神像に気づいたシスターが近づいてくる。


「これなら女神様も大喜びだわ」

「そうだといいですね。後はどこを掃除しましょうか?」

「後は……ほかの部屋もやってもらえる?」

「わかりました」


 サキは礼拝堂の奥にある部屋へ行き、雑巾で拭き掃除を始める。するとサキが掃除した窓やテーブルなどが新品のように綺麗になっていく。


「なるほど、これが掃除スキル……普通に掃除すればいいのね。うーん、確かに綺麗になるけど……」


 サキは自分の掃除スキルの効果に物足りなさを感じている。だがそれは間違いだったことが後で判明することになる。



 それから約一時間後、冬雅のクリーンのスキルとサキの掃除スキルのおかげで教会内の掃除が短い時間で完了した。


「思ってたより早く終わってよかった」

「綺麗になるって気持ちいいね」

「はー、私は疲れたよ」


 冬雅とサキは綺麗になった礼拝堂を見て満足しているが、凛子はテーブルと椅子の拭き掃除で疲れている様子だった。


「よく働いてくれたわ。でも報酬が少なくてごめんね。うちは近所の人達の寄付で運営してるから」

「いえ、こういうのはお金じゃないですから」

「じゃあ、この依頼書にサインをお願いします」

「はいよ」


 シスターは冬雅が出した依頼書に依頼完了のサインをする。


「これを冒険者ギルドに持って行って依頼完了だ」

「気をつけて帰りなさいね」

「はい。お疲れさまでした」


 依頼を終えた冬雅達は、冒険者ギルドに帰るため歩いていく。


「ああ、宮本さん。掃除スキルの説明って見てみた?」

「見たけど、抽象的なことしか書いてなかったのよね。ちょっと待って」


 サキは歩きながらステータスボードを表示して、スキルの説明を確認しようとする。するとスキル欄に「女神アルテミスの加護」というスキルが追加されていた。


「ん? スキルが追加されてる。レベル上がってないのに」

「どんなスキル?」

「女神アルテミスの加護だって」


 サキはそのスキルをタッチしてスキルの説明を表示する。


 女神アルテミスの加護

 すべての能力値が10%上昇

 即死無効 呪い無効


「……だって」

「す、凄い効果だ。あっ、もしかして教会を掃除したからか!」

「じゃあ、私も?」


 冬雅と凛子もステータスボードを表示する。だが二人には新たなスキルは追加されていなかった。


「私、加護なんてないんだけど」

「俺も」

「ああ、私、女神像を掃除したからかも。そういえば掃除した後、女神像が神々しく見えたような」

「なっ、女神像を掃除すれば加護がもらえたの? じゃあ、ちょっと行ってくる」

「待て待て」


 戻ろうとした凛子の肩をサキがつかんで止める。


「恥ずかしいから止めてね」

「でも、その凄いスキル、私も欲しいし」

「いや、ただ女神像を掃除しただけじゃ駄目だと思う。そんな凄い加護を簡単にもらえるとは思えない。たぶん……」

「掃除スキル?」

「そう。宮本さんは掃除スキルがあったから、加護をもらえたんだよ」

「ああ、サキは心を込めて拭いてたもんね。それじゃあ、私は無理か」

「俺のクリーンでも駄目だろうな。心が込められないし」

「いやいや、そんなに心を込めてないよ。綺麗になれとは思ってたけど」

「どっちにしろ、私には無理か。はぁ」

「スキルはまたどこかでもらえるよ。とりあえずギルドに帰ろう」


 冬雅達は冒険者ギルドに戻り、サインが書かれた依頼書を渡し、今回の報酬60ゴールドを手に入れた。


「いやー。この世界、お金で仕事を選んでちゃ駄目みたいね」

「なら、もうひとつくらい、午後から依頼を受けてみる?」

「じゃあ、何かいい依頼があるか見てみよう」


 冬雅達は大型掲示板の前に行き、貼ってある依頼書を見ていく。


「できそうなのは、猫の捜索依頼くらいかな」

「じゃあ、午後からやってみましょ」


 冬雅達は逃げ出した猫の捜索依頼を受けてお昼ご飯を食べた後、依頼された王都の東の住宅街の家に行き、依頼主の話を聞いてその周辺を捜索する。そして冬雅の気配察知で猫を見つけ、凛子がおいでおいでをして近寄ってきた猫を捕まえて依頼を完了させて、冒険者ギルドに戻ってきた。


「はー、今回は何もなかった」

「まあ、報酬の80ゴールドとランクアップポイントはもらえたし、いいじゃない」

「そういえば、Cランクの試験を受けられるランクアップポイントは、どれくらいためればいいの?」

「冒険者の心得に、普通の冒険者パーティなら半年から一年くらいってあったよ」

「私達は早くレベルは上がるけど、ランクアップは早くはならないよね」

「まあ、早く強くなれるから、普通よりは早いだろうけど、まだまだだろうね」

「じゃあ、今日はもう帰ろう」


 この日、冬雅達は二つの依頼を完了して冒険者活動を終えた。



 そして次の日の朝になり、冬雅達は宿屋の食堂で朝ご飯を食べている。


「今日は頼んでた漆黒の装備品ができる日だよね」

「じゃあ、まず武器屋に行ってみるか」



 次回 情報交換 に続く

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