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第〇十九話 最初の試練

「ちっ、人間の冒険者か。面倒だが始末しておくか……」


 黒色の鎧の男は、腰の黒色の剣を抜いて冬雅達に近づいてくる。彼の正体は魔族国から来たBランクモンスター、デーモンナイトだった。魔族国はグライン王国と戦争中で、デーモンナイトはこの闇の古代遺跡を戦争で利用できないか調査するため、単独でやってきたのである。


「まず俺が攻撃をしかける。佐々木さんは、魔力チャージからの中級魔法で攻撃して」

「わかった」

「宮本さんは、堅牢で防御力を上げてから臨機応変に動いて」

「了解」

「加速!」


 冬雅はスキルで自分の速さを十五分間だけ上げて、デーモンナイトに突撃していく。同時にサキは堅牢を使い、凛子は杖を構えて次に放つ魔法の威力を強化する魔力チャージを使う。


「ほう、なかなかの速さだ」


 突撃してきた冬雅を見たデーモンナイトは、黒色の剣と盾を構えて迎え撃つ。彼が装備している黒色の装備品は、漆黒の剣、漆黒の盾、漆黒の鎧という名前だった。


「錬気斬!」


 冬雅は鋼鉄の剣に魔力をまとわせ、デーモンナイトに斬撃を放つ。


「ふん!」


 その斬撃をデーモンナイトは漆黒の盾で受け止め、さらに右手の漆黒の剣を冬雅を狙って突き出す。


「うおっ!」


 その突きを冬雅は左方向へ移動して回避し、さらにデーモンナイトの後方へ移動する。それに合わせてデーモンナイトは冬雅のいる方に向きを変える。これでデーモンナイトは、サキと凛子がいる方向に背を向ける恰好になった。


「うおおお!」


 さらに冬雅は斬撃を次々と放ち、デーモンナイトの注意を引く。その隙にサキがデーモンナイトの後方から静かに接近する。これはアーマーアントとの戦いと同じ戦術だった。


「オーラブレード!」


 サキはデーモンナイトの背後から軽鉄の剣に魔力をまとわせ、斬撃を放つ。


「こざかしい」


 それに対しデーモンナイトは、漆黒の盾を後方に構えてサキのオーラブレードを防ぐ。


「防がれた!」

「はっ!」


 デーモンナイトの意識が後方へ向いたその瞬間、冬雅はデーモンナイトのふとももを狙って鋼鉄の剣を突き出す。その太もも部分はデーモンナイトの漆黒の鎧で守られていない部分だった。


「ぐっ!」


 冬雅の鋼鉄の剣がデーモンナイトの太ももに突き刺さり、デーモンナイトの顔が苦痛でゆがむ。その直後、冬雅とサキはデーモンナイトから距離をとる。


「フレイムピラー!」


 この瞬間を待っていた凛子は、魔導士の杖を構えながら火系中級魔法を発動する。するとデーモンナイトの足元に直径六メートル程度の火の渦が現れ、その火が上昇し火の柱となってデーモンナイトの全身を飲み込む。


「ぐおおおおお!」


 デーモンナイトは火の柱に飲み込まれて、叫び声を上げる。今の凛子のフレイムピラーは、魔力チャージによって威力が二倍以上に強化されていてた。


「やった!」

「今の連携は完璧だった!」


 冬雅とサキがこの戦いの勝利を確信したその時、火の柱の中からデーモンナイトの漆黒の盾が回転しながら飛び出して、離れた場所にいる凛子に向かって飛んでいく。


「あ、危ない!」

「キャアア!」


 放たれた漆黒の盾が凛子に命中したと思ったその時、彼女のオートバリアのスキルが発動し、彼女の体の周りに球状の物理障壁が現れて、漆黒の盾の衝突を防いだ。


「た、助かった」


 デーモンナイトが投げた漆黒の盾が、凛子の近くの床に転がり落ちる。


「はっ!」


 一方、火の柱の中のデーモンナイトは全身から魔力を放出し、周囲の火を吹き飛ばす。


「ふー、ひどい目にあった。やってくれたな」


 デーモンナイトは全身を焼かれ大ダメージを受けていたが、まだ倒せるダメージではなかったようだ。


(ダメージを防がれてるわけじゃない。攻撃し続ければ倒せる!)

「はっ!」


 冬雅はデーモンナイトに高速で接近し、鋼鉄の剣を振るって攻撃をしかける。それに対しデーモンナイトも漆黒の剣を振るって答える。


(凛子にまた攻撃されないようにしなきゃ。あのバリアの強度以上の攻撃をされたらまずいし)


 冬雅とデーモンナイトが戦ってる隙に、サキはデーモンナイトと凛子のいる場所の直線上に立って鋼鉄の盾を構える。


(もう一度やる。今度こそ!)

「魔力チャージ!」


 そのサキの後方で、凛子はまた魔法を放つため準備を始める。


(くっ、一撃一撃が重い……やはりこいつ、俺達より格上……)


 冬雅はデーモンナイトと斬撃を打ち合っていたが、だんだん押され始める。


「これで終わりだ!」


 デーモンナイトは漆黒の剣を上段に構え、その剣身に黒い闇の炎をまとわせる。


「黒炎剣!」

「後の先!」


 冬雅は振り下ろされた黒い闇の炎の斬撃を斬り払い、さらにデーモンナイトの太ももを鋼鉄の剣で斬りつける。


「ぐあっ! こいつ……また」


 冬雅はデーモンナイトの足をしつこく狙っていた。これは相手の動きを鈍らせるためで、さらにいざという時、逃げられる成功率を上げるためでもあった。


「今のはカウンター系のスキルか。ならこれならどうだ!」


 デーモンナイトは、左手をかざして魔力を集中させる。


「むっ、魔法か?!」


 冬雅は魔法を警戒し、後方へバックステップしてデーモンナイトから距離をとる。彼の「後の先」は、単体用物理スキルにカウンター攻撃するスキルなので、魔法やブレス攻撃には使えなかった。


「魔力衝撃波!」


 デーモンナイトは冬雅を狙って左手から魔力で作り出した衝撃波を放ち、それが冬雅に命中する。


「ぐわっ!」


 衝撃波を全身で受けた冬雅は吹き飛ばされ、後方の通路の壁に背中から衝突して大ダメージを受けた。


「ぐっ!」


 冬雅はそのまま壁際に崩れるように倒れる。


「か、上泉君!」

「次はお前だ!」


 デーモンナイトは今度はサキに向かって漆黒の剣を構える。


(ぐっ、ポーションを……)


 壁際に倒れた冬雅は何とか意識を失わず、アイテムボックスからポーションを取り出して飲む。


(よかった。上泉君はまだやられてない。でも回復するのに時間がかかるはず。凛子の次の魔法発動にも時間がかかる。ここは私が時間を稼がないと)


サキは鋼鉄の盾を構えてデーモンナイトと対峙する。


「うおりゃああ!」


 デーモンナイトがサキめがけて突撃し、漆黒の剣で斬撃を放つ。


「ぐっ」

(お、重い……これは何度も受けれない……)


 サキは鋼鉄の盾で漆黒の剣の斬撃を防ぐ。今の彼女は堅牢の効果で防御力が20%アップし、さらに凛子を守っている状態なので、守りの盾の効果も発動し防御力が30%アップしていた。だがデーモンナイトの一撃は重く、彼女は攻撃を防ぎながらも全身に衝撃を感じ、少しづつ押されていく。


「おらおらおら!」


 防戦一方のサキに対し、デーモンナイトは強烈な斬撃を何度も放つ。


「ぐぐっ」

(こ、このままじゃ駄目……相手の動きをよく見て……)


 サキは盾を構えて激しい攻撃に耐えながら、デーモンナイトの動きをよく見る。そしてその攻撃があたる瞬間、盾を斜めにして重い斬撃を受けがした。


「まだまだいくぞ! うおりゃあ!」


 デーモンナイトはそれに構わず強烈な斬撃を次々と繰り出す。それらをサキは盾で受け流すことに成功し、体への衝撃がかなり軽減された。


「なかなか粘るな。なら、黒炎剣!」


 デーモンナイトは漆黒の剣を上段に構え、その剣身に黒い闇の炎をまとわせてサキを狙って豪快に振り下ろす。その斬撃をサキはすぐれた動体視力と運動神経で一歩引いてギリギリでかわし、大振りのデーモンナイトは前のめりの恰好になる。


「うおっ!」

(今だ!)

「シールドバッシュ!」



 次回 ネームドモンスター に続く

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