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第〇十五話 魔道具屋へ

「よく考えると、森のボスまで倒したのに、私達、少しも怪我してないよね」

「確かに私達のHP、全然減ってない。ポーション買ったけど、一度も使ってないじゃん」

「戦いが楽なのは、国から金貨をもらって、いい装備が買えたからだと思ってたけど、それだけじゃなかったってことか」


 冬雅達は自分達が異常な早さで強くなっていることを改めて実感する。


「で、上泉のスキルの凄さがわかって、どうするの?」

「これだけ強くなれるんなら、冒険者になればこれからの生活費は稼げると思う。予定通り、冒険者の登録をしよう」

「賛成。冒険者になってモンスターと戦ってればもっと強くなれるし、お金も稼げるしね」

「わたしもそれでいいよ」

「よし、じゃあ。冒険者ギルドに行って登録しよう。あっ、登録の時、名前を書くとしたら、苗字は書かないで名前だけ書いて。苗字を書くと貴族と間違われるから」

「名前だけ書けばいいのね」

「そう。あと中では、なるべく目立たないように行動しよう」

「じゃあ、モンスターを一度に全部売らないほうがいいんじゃない? 数が多いと目立つでしょ」

「なるほど、じゃあ今日は、お金になりそうなアーマーアントとレインボーバードだけにしとくか」


 冬雅達は色々打合せしてから冒険者ギルドに入る。すると冒険者ギルドの広い一階フロアの奥のほうに受付カウンターが複数あり、そこに受付嬢が立っているのが見えた。


「鍋島達の言う通り、今はすいてるみたいだ」

「あっちが酒場か。今は誰もいないね」

「奥が受付カウンターね。行きましょ」


 三人は受付嬢が立ってる受付カウンターに移動する。


「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」

「冒険者登録したいんですが」

「登録ですね。ではこちらに名前と職業を記入してください」


 受付嬢はカウンターの上に三枚の申請用紙と三本のペンを置く。


「字が書けない場合は代筆しますよ」

「あ、大丈夫です」

(職業も書くのか。侍って書いたら目立つかもしれない)

「二人が先に書いて」

「ほーい」

「じゃあ、お先に」

「サキだけに」

「はいはい」


 サキと凛子は受付カウンターで出された申請用紙に名前と職業を記入する。その後ろで冬雅は小声でステータスボードを呼び出し、侍から戦士に転職する。


(嘘を見破る魔道具とかあったらまずいから念のため……)


 冬雅は受付カウンターの上にある三十センチメートルくらいの水晶を見ながらそう考える。


「書けました」

「私も」

「じゃあ、次は俺が」


 冬雅も申請用紙に名前と職業を書いて受付嬢に渡し、彼女はその申請用紙をカウンターの後ろの方にいる男性の職員に渡して、また冬雅達の前に戻ってくる。


「冒険者ギルドカードの作成に少し時間がかかるので、その間に簡単に冒険者ギルドの説明をさせてもらいます」


 受付嬢は冒険者ギルドのシステムについて話し始める。


「冒険者にはSからEまでのランクがありまして、一番最初は全員Eランクから始まります。そして依頼の成功やモンスター素材の売買でランクアップポイントがもらえます。それが一定数たまるとランクアップ試験を受けることができます」


 冒険者の最高ランクはSで、そこからA、B、C、D、Eという順だった。


「依頼はあちらの掲示板に依頼書が貼ってありますので、それをはがしてここのカウンターに持ってきてください。あと依頼にもランクがありまして、自分と同じランク以下の依頼しか受けることはできません。簡単な説明はこれで終わりですが、何か質問はありますか?」

「いえ、大丈夫です」

(冒険者の心得に載ってたとおりだな)

「では、まだカードの作成に時間がかかると思うので、少々お待ちください」

「じゃあ、その間にモンスターの死骸を売りたいんですが、できますか?」

「はい。モンスターの買取はあちらのカウンターです。ご案内しますね」


 受付嬢は離れた場所にある買取カウンターに冬雅達を連れていき、そこにいる眼鏡をかけた若い男性の職員に、冬雅達が冒険者ギルドカードを申請中だと言うことを話して、彼女は元の受付カウンターに戻る。この間に冬雅は職業を侍に戻していた。


「いらっしゃいませ。モンスターは死骸のままだと解体費用が差し引かれますが、よろしいですか?」

「はい。それでお願いします」

「それで死骸は……」

「アイテムボックスに入ってるんですが、アーマーアントなのでここでは……」

「では解体場の倉庫にご案内します。こちらへどうぞ」


 冬雅達は冒険者ギルドの一階フロアの裏口から外に出て、裏にある解体場の建物の倉庫へ入る。


「ではこちらへ出してください」

「はい」


 冬雅はアイテムボックスからアーマーアントを取り出す。


「これは状態がいいですね。魔石も大きなのが取れそうです」

(モンスターの心臓部の魔石か。冒険者の心得に書いてあった)


 魔石はモンスターの体の中にあり、魔力を保有している石のことである。魔石はさまざまな魔道具の動力源として使われていて、高値で取引されていた。


「あ、あとレインボーバードもあるんですが」

「えっ、レインボーバードですか? 見せてもらっても」

「はい」


 冬雅はアイテムボックスからレインボーバードの死骸も取り出す。


「おお、確かにレインボーバードですね。これは高く買い取れますよ」

「やっぱりそうですか」

「はい。レインボーバードは、一年に三、四体しか討伐報告がないレアモンスターですからね」

「ちなみにレインボーバードのランクは?」

「強さのランクはDですが、レインボーバードは個体数が少ないだけでなく、あちこちを飛び回ってるので、見つけるのが難しいんですよ」

「じゃあ、俺達はラッキーでしたね」

「そうですね。では査定しますので、そちらのベンチに座って少しお待ちください」


 冬雅達は倉庫のはじにあるベンチに座って、男性職員の査定が終わるのを待つ。そして約五分後、


「お待たせしました。解体費用を差し引いてアーマーアントが2000ゴールド、レインボーバードは10000ゴールドで、全部で12000ゴールド(金貨百二十枚)になりますがよろしいですか?」


 買取金額を聞いて冬雅達は喜びの表情になる。


「はい。お願いします」

「では額が多いので応接室でお払いします。こちらへどうぞ」


 冬雅達は今度は冒険者ギルドの二階にある応接間に案内され、そこのソファーに座って待つ。その後、男性の職員と受付嬢が一緒に応接室に入って来て、冬雅達の向かいのソファーに座る。


「お待たせしました。こちらがEランクの冒険者ギルドカードです」


 そう言って受付嬢が三人に名前入りの茶色の冒険者ギルドカードを渡す。


「それとこちらがお約束の12000ゴールド、金貨百二十枚です」


 さらに眼鏡の男性の職員がテーブルの上に金貨百二十枚を置く。


「金貨は三等分すると……四十枚か」

「それでは四十枚づつに分けますね」


 男性職員が冬雅達の前に金貨四十枚づつ分けて置き、それを冬雅達は手に取って、持っていた金貨が入った袋にしまう。


「それとみなさんは今回のモンスターの売買でDランクへのポイントがたまったんですが、ランクアップ試験を受けますか?」

「えっ、もうですか?」

「はい。Dランクモンスターを二体ですからね」

「どうするの?」

「今はやめておこうか」

(これ以上、目立つのはまずい)

「そうね。また今度にしましょう」

「わかりました。試験はいつでも受けれるので、その時は声をかけてください」

「はい」


 取引が終わった冬雅達は、応接室を出て一階に降り、そのまま冒険者ギルドから出る。


「はー。何事もなく登録できた」

「ちょっと拍子抜けしちゃったね」

「上泉もサキも心配しすぎなのよ」

「この異世界では、少し慎重くらいのほうがいいでしょ」

「まあ、そうかもしれないけど」

「さて、お金も入ったし予定通り武器屋に……」

「ちょっと待って。私、魔法のかばんが欲しいんだけど」

「ああ、確かに私も欲しいかも」


 凛子の意見にサキが同意する。


「じゃあ、先に魔道具屋に行こうか」


 冬雅達は冒険者ギルドから「王都ニルヴァナ観光名所」に載っていた大通りにある魔道具屋へ行き、中に入る。


「結構、広いな」

「色々売ってるみたいね」

「何か凄いのがありそう」


 魔道具屋の中は広く、たくさんの魔道具が陳列してあり、数人の客と奥のカウンターに中年の男の店員の姿があった。


「あっ、スキルブックも売ってる」

「まずは魔法のかばんでしょ。どこにあるのか探しましょう」

「確か二十キロので3000ゴールド(金貨三十枚)だったよね」


 三人はテーブルの上や棚に陳列されているたくさんの魔道具の中から、魔法のかばんを探し始める。



 次回 勇者達の訓練 に続く

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