第〇十三話 アーマーアント戦
「ギギャアァ!」
冬雅の斬撃がアーマーアントの右前足を切り裂き、六本の足が五本になる。
「ギャギャギャア!」
するとアーマーアントが怒り出し、冬雅がいる左方向へ向きを変えて口を大きく開けて噛みつこうと襲い掛かる。
「その程度!」
それに対し冬雅はさらに左方向へ移動して噛みつき攻撃を回避する。
「オーラブレード!」
冬雅に夢中になっているアーマーアントの後方から、いつの間にかサキが接近していて、魔力をまとわせた軽鉄の剣で腹部を切り裂く。
「ギャギャアアアア!」
サキのその斬撃によってアーマーアントは大ダメージを受け動きが鈍る。その直後、魔法発動の準備が整った凛子が魔導士の杖を構えながら叫ぶ。
「二人とも! 離れて!」
その声を聞いた冬雅とサキはアーマーアントから急いで離れる。
「サンダーボルト!」
「ギギャアアアアア!」
凛子の二発目の雷系下級魔法がアーマーアントに直撃し、全身を感電させた。
「ギギ、ギギ、ギ……」
凛子のその魔法がとどめとなり、アーマーアントは地面に倒れて痙攣した後、動かなくなった。
「や、やったよね?」
「たぶん……」
動かなくなったアーマーアントを三人が油断せずに見ていると、彼等の頭の中にレベルアップ音が鳴り響き、ステータスボードが目の前に表示される。
「やった! レベルが10になった!」
「ふー、倒せたようだ。よし、スキルを覚えた!」
後の先
相手の単体物理攻撃を無効化して
同時に通常攻撃をおこなう
消費MP 20
「き、きた! これが欲しかった!」
冬雅は侍専用のスキル「後の先」を習得できたことに喜んでいる。
「私も雷魔法を覚えたよ!」
凛子もレベルが10になり新たな魔法を習得した。
ライトニングレイン
空中に複数の魔法陣を作り出し
そこから広範囲に雷を落とす雷系中級魔法
消費MP 25
「やった! 広範囲魔法のライトニングレインだって!」
「私は何も覚えなかった。まあ、オーラブレードを覚えたばかりだからしょうがないか」
「ん?」
新たなスキルを習得して喜んでいる冬雅の目の前に、新たなウィンドウが表示される。
『王都東の森、ダンジョンボス討伐報酬をひとつ選んでください。
金塊×1
フルマナポーション×1
オートバリアのスキルブック×1』
「これは……」
「どうしたの?」
「ボスの討伐報酬がもらえるみたいなんだけど」
冬雅は表示されたメッセージを二人に伝える。
「なるほど、三つから選べるのね」
「金塊は換金アイテム、フルマナポーションはMP全回復、スキルブックはオートバリアを習得できるんだと思う」
(ゲートオブアルカディアにはスキルブックのシステムなんてなかったし、オートバリアなんてスキルもなかった)
ゲートオブアルカディアは、レベルアップでスキルを取得するタイプのゲームだった。
「上泉はどれがいいと思う?」
「俺なら……オートバリアのスキルブックかな。お金はモンスターを狩れば稼げるし、フルマナポーションは高いけど王都で売ってるし」
「そうね。私もそう思う」
「二人がそう思うなら、それでいいんじゃない」
「わかった」
冬雅はオートバリアのスキルブックの文字をタッチする。すると入手メッセージと共にアイテムボックスのアイテムリストが表示され、その中にオートバリアのスキルブックが表示されていた。
「よし、これだな」
冬雅はアイテムボックスからオートバリアのスキルブックを取り出して、サキと凛子に質問する。
「オートバリアって防御系のスキルだと思うけど、誰が使うのがいいかな?」
「守りの指輪と同じ理由で、上泉が覚えたほうがいいんじゃない?」
「いや、今回は凛子がいいと思う」
「えっ? 私?」
「オートバリアが凛子を守ってくれるなら、私はもっと前に出て戦えるでしょ」
「でも前に出るということは、危険が増えるということだよ。俺もモンスターと近くで対峙するのはまだ怖いし」
「モンスターと戦ってるんだから危険なのはあたりまえだよ。それより私がもっと前に出てパーティの攻撃力が上がったほうがいいでしょ」
「それはそうだけど」
サキはもっとパーティに貢献したいという思いが強かった。
「上泉、サキはこういう時は、言い出したら引き下がらないよ」
「……わかった。じゃあ、宮本さんの鎧と盾をもっと防御力の高いのに買い換えよう」
「そうね。レベルが上がったから、もっと重いのでも装備できると思う」
「それなら王都に帰ったら冒険者ギルドで登録して、収納してあるモンスターを売って、それから装備を整えよう」
「わかったわ」
「じゃあ、佐々木さん。これを」
「はいはい。開くだけでいいのよね」
凛子はオートバリアのスキルブックを手に取って開く。すると彼女の体が光り出しオートバリアのスキルを習得した。
オートバリア
スキル所持者に物理的危険が迫った時
自動的に物理攻撃を防ぐバリアを展開する
消費MP 20
「オートバリアを覚えたよ!」
「これで戦術の幅が広がるわね」
「じゃあ帰ろうか」
冬雅は、倒したアーマーアントの死骸を回収して、三人はこの開けた場所から出て、森の道をなるべく戦闘しないようにして歩いていく。
「ん? この気配は……」
その途中、冬雅は感じたことのある気配に気づき、その方を見る。するとまた木の枝にとまっているレインボーバードを発見した。
「あっ! またあいつだ!」
「あっ、七色の鳥!」
「レアモンスター!」
冬雅達は武器を構え、それにレインボーバードが気づく。
「キュオーーーーン!」
レインボーバードは全身に魔力をまとい翼を広げる。
「新しいスキルを覚えたし、俺がやってみる。二人は俺の後ろに移動して隠れて」
「わかった」
「はーい」
サキと凛子は冬雅の後ろに移動する。するとレインボーバードは鋼鉄の剣を中段に構えている冬雅に向かって飛行突撃してきた。
「後の先!」
それに対し冬雅は気配察知でレインボーバードの位置を把握しつつ、自分に衝突する前に中段の構えから斬撃を繰り出す。
「ギャギャッ!」
その斬撃がレインボーバードの体を切り裂き、レインボーバードは飛行できずに地面に激突した。
「やった! 当たった!」
「よくあんなのに当てられるわね」
「あの鳥、倒したよね!」
「うん。手ごたえあった」
三人は地面に倒れているレインボーバードを見ている。すると彼らの頭の中にレベルアップ音が鳴り響き、ステータスボードが表示される。
上泉冬雅 17歳 人間
職業 侍
称号
レベル 13
HP 1324/1324
MP 47/187
攻撃力 43(+20)
防御力 37(+15)
魔力 34
速さ 61
経験値 7425
スキル
言語理解 アイテムボックス
ゲートオブアルカディア 斬撃強化
異性運上昇 錬気斬 気配察知
後の先 加速
仲間
宮本サキ レベル13 騎士
佐々木凛子 レベル13 魔法使い
装備
鋼鉄の剣 攻+20
鉄の胸当て 防+10
守りの指輪 防+5
「一度に三つもレベルが上がってるよ!」
「さすがレアモンスターね!」
「もうレベル13か。おっ、スキルも覚えてる」
「あっ、私も!」
「私も覚えた!」
次回 冒険者ギルドへ に続く