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第〇十二話 レアモンスター

「ああ、ダンジョンの宝箱については色々な説があるんだよ。例えばダンジョンのボスが人間を誘うために用意してるとか、神様が人間に試練を与えるため、宝箱やモンスターが生み出されるダンジョンを作ったとか、ダンジョンが意思を持っていて、そのダンジョンで死んだ冒険者の所持品が宝箱に入ってるとか」

「へー、色々なパターンがあるのね」

「死んだ冒険者の所持品というのはちょっと嫌かな」

「まあ、この世界のダンジョンの宝箱がどうなのかは、俺にはわからないけど」

「何でもいいじゃない。後からダンジョンに入った私達でも、お宝をもらえるってことがわかったんだから」

「それもそうか」


 冬雅はサキの意見に同意する。


「でしょ。じゃあ、ほかにも宝箱がないか探しましょ」


 三人はさらに森の道を進んでいく。そして彼等はモンスターと戦いながら新たな宝箱を三つ発見し、ポーション、キュアポーション(毒と麻痺を治す薬)、300ゴールドを手に入れ、さらにレベルが9になった。


「やった! 新しい魔法を覚えた!」


 凛子はレベル9で、


 フレイムピラー

 火の柱を作り出す火系中級魔法 

 消費MP 25


 を習得した。


「フレイムピラーだって、火の柱を作り出す魔法みたい」

「火の魔法を覚えても、ここでは使えないからね」

「わかってるよ。ファイアーボムを覚えた次のレベルでサンダーボルトを覚えたから、たぶん次のレベルアップで雷魔法を覚えるんじゃないかな」

「俺もそう思う。それで佐々木さん、残りのMPはどう?」

「まだ半分以上残ってるよ。レベルが上がって最大MPが増えたし」


 凛子はレベル9で最大MPが251になっていた。


「半分くらいか。上泉君、どうする? いったん王都に戻る?」

「いや、もう少し進んでみよう。帰りは最短ルートで帰るから、それほど戦わないで済むし、いざとなったら逃げまくって帰ろう」

「あっ、私、帰り道は覚えてないから」

「私も」


 三人がここに来るまで、いくつかの森の道の分岐があったが、サキと凛子はその道を覚えていなかった。


「俺が覚えているから大丈夫。分岐した道は、まだ三か所だけだし」

「よかった。ならもう少し先に進んでみましょ」

「私はMPを少し節約しながら進んでみるよ」


 三人はさらに森の道を進んでいく。すると冬雅は森の道の先から一体のモンスターの気配を察知した。


「あれは……鳥?」


 サキと凛子も冬雅が見てる方向を見て、木の枝にとまっている三十センチくらい鮮やかな七色の羽根の鳥を発見する。


「綺麗な鳥だけど、あんな鳥は冒険者の心得には載ってなかったよね」

「うん」

「じゃあ、モンスターとは違うんじゃない?」

「いや、こちらを睨んでいるような……」


 七色の鳥と冬雅達の目が合う。


「キュオーーーーン!」


 七色の鳥はひと鳴きすると、全身に魔力をまとい翼を広げる。


「なっ!」

「何をする気だ?」


 その様子を見た冬雅は鋼鉄の剣を中段に構え、サキは軽鉄の盾を構える。その時、七色の鳥がいきなり超高速飛行でサキに向かって突撃してきた。


「速っ!」


 七色の鳥は木の枝から一瞬でサキのいる場所まで飛び、軽鉄の盾に激突する。


「ぐっ」


 サキは七色の鳥の飛行突撃を盾で防いだが、前方に弾けずによろけて、七色の鳥は彼女のとなりを飛んで後方にある木の枝にとまる。


「サキ! 大丈夫?」

「へ、平気。とんでもない速さでびっくりしたけど、あの鳥の攻撃力は高くないみたい」

「よかった。それであの鳥はどこに?」

「あの木の枝の所にいるよ」


 冬雅が示した木の枝に七色の鳥がとまっている。


「上泉君、あいつの動きが見えたの?」

「いや、気配察知で今のいる場所がわかっただけ……あっ!」


 七色の鳥は冬雅達がいる方向と逆方向へ飛んでいった。


「行っちゃった」

「逃げたのか」

(この世界のモンスターは、ゲートオブアルカディアと違うから、俺の知識があんまり役に立たないな)

「あれじゃない? 遭遇してもすぐに逃げてなかなか倒せないモンスター……」

「レアモンスターのこと?」

「そうそう、それ。倒せれば、たくさんの経験値がもらえるやつ」


 サキの言う通り、今の七色の鳥はレインボーバードという名で、なかなか遭遇できないレアモンスターだった。サキと凛子の運が、冬雅の異性運上昇の効果で上がっているので、幸運にも遭遇できたのである。


「あんな速さじゃ魔法も当てられないし、今はあきらめて先に進も」

「そうね」

「レベルが上がってからリベンジしよう」


 三人は気を取り直し森の道を進んでいく。すると森の道の最終地点にある開けた場所の前にたどり着いた。


「むっ、この先に何かいる!」


 冬雅、サキ、凛子は、武器を構えて警戒しながらその開けた場所に移動する。すると奥の方に体長七メートルくらいの巨大な蟻を発見した。


「で、でかっ!」

「あれはアリよね」

「でかいアリなら、Dランクモンスターのアーマーアントだ!」


 アーマーアントは全身が硬く黒い外殻でおおわれている蟻のモンスターで、冒険者の心得にも載っていた。


「ギギャッ!」


 この場所に入ってきた冬雅達にアーマーアントが気づき、六本の足を動かして近づいてくる。それを見た三人は、いつもの陣形で戦闘態勢になる。


「Dランクって今までのより強いんだよね」

「そう。たぶん、この森のボスだと思う」

「ボスか。じゃあ、私が先制するよ……サンダーボルト!」


 凛子は構えていた魔導士の杖から電撃を放ち、それが迫ってくるアーマーアントに直撃する。


「ギギャア!」


 電撃の直撃を受けたアーマーアントは全身が感電し、ダメージを受けたがまだ倒れず、再び三人に向かってくる。


「さすがボス。一撃じゃ倒せないか」

「上泉君、どうする?」

「次は俺が攻撃する。宮本さんは可能なら隙を狙って追撃して」

「わかった」

「佐々木さんは、二発目が撃てるようになったら、さらに追撃をお願い」

「りょーかい」


 冬雅は鋼鉄の剣を構えながら迫ってくるアーマーアントに向かって走り出す。


「ギギギァアア!」


 冬雅が近づいてくるのを見たアーマーアントはその場で止まり、頭部を高く上げて上を向き、喉を鳴らしてから頭を振り下ろす。それと同時に口から酸の粘液を吐き出した。


「うおっ!」


 その攻撃を冬雅は左方向にステップしてよける。すると吐き出された酸の粘液が地面に落ちて、その部分の草が煙をあげながら溶けていく。アーマーアントの酸の粘液は人間がかぶると服が溶け肌がただれてしまうが、ポーションを肌にかければ治るくらいの酸の強さだった。


(酸か。これは近づくのは危険……いや、モーションが大きいから避けられるか)


 冬雅はそう判断してアーマーアントに接近し、右の前足を狙って魔力をまとわせた鋼鉄の剣を振るう。


「錬気斬!」



 次回 アーマーアント戦 に続く

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