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第百十六話 作られたモンスター

 場面は王都ニルヴァナの南側の城壁の外に変わる。ここではラヴァ帝国の竜騎士団とラヴァ帝国騎士団が、南側に配置されていたモンスター軍団と戦っていた。そこへリーナ率いるメイル国軍が援軍としてやってきた。


「おお! メイル国軍か!」

「助かった!」

「黄金の龍も来たぞ!」

「よし、ここから反撃だ!」


 ラヴァ帝国軍の兵士達の士気が、メイル国軍の姿を見て上がる。ラッパー団長率いるラヴァ帝国竜騎士団は奮戦していたが、数の上で負けていたラヴァ帝国軍は苦戦していた。そこへ東側のモンスター軍団を壊滅させたメイル国軍が部隊を二つに分け、南側へはリーナが来て、北側へはシャルロッテ達が向かっていた。


「混戦状態だな。黄龍! 聖光のブレスはまだ使わないでくれ!」


 そのリーナの指示を聞いて、空中の黄龍は光破弾や竜爪断などのスキルでモンスター軍団に攻撃する。一方、アマテラスの太陽の加護で強化されたリーナ率いるメイル国軍は、モンスター軍団へ向かって突撃し、怒涛の勢いでモンスターをなぎ倒していく。


「なっ! メイル国軍はこんなに強かったのか!」

「これはチャンスだ! 俺達も負けてられんぞ!」

「おおおおお!」


 メイル国軍の勢いを見たラヴァ帝国軍も奮起し、共にモンスター軍団を倒していく。すると馬に乗っているリーナの元へ、黒い全身鎧を身に着けたラッパー団長が、レッドワイバーンに乗って近づいてくる。


「援軍、感謝する! これで何とかなりそうだ!」

「連携して奴らを倒そう!」

「おう!」


 メイル国軍とラヴァ帝国軍は、協力して南側のモンスター軍団を次々と倒していく。そして戦況は両軍の優勢で進み、モンスター軍団がほぼ壊滅した時、再びラッパー団長がリーナの元へ飛んできて着地する。


「メイル国軍の強さに感服した。これで我々の勝利だ」

「いや、まだだ。西側に無傷のモンスター軍団がいると報告があった」

「それはこちらも空から確認している。だがおかしくないか? 普通、それだけの戦力があるなら、待機させてないで、北か南に兵を動かすだろ」

「この戦場に、モンスター軍団を指揮している者がいないんじゃないか」

「なるほど。だが、これだけの戦いをしてるのに、西側のモンスターは騒ぎもせず動かないというのは、やはり普通じゃない」

「あっ、確かにメイル国に攻めてきた時はモンスター軍団は統制のとれた動きをしていたが、今日のモンスターどもは動きがバラバラだった」

「言われてみれば確かに、近づいてきた敵に個別に反撃しているという感じだったな」


 ヴァンパイアロードが召喚したモンスターは、ダンジョンや自然界にいる普通のモンスターではなく、原初神カオスの力を使って作り出された不完全なモンスターだった。それでヴァンパイアロードの指示がない場合、敵が来たら反撃する、などの簡単な行動しかできなかった。


「普通のモンスターとは違うのかもしれん。よし、なら後は西側にいるモンスターを倒す。黄龍! 頼むぞ!」


 西側に待機しているモンスターとは、まだ交戦状態ではないので、黄龍の聖光のブレスを遠慮なく使うことができた。


「おお、あの光のブレスなら敵に大打撃を与えられる! その後、俺達とメイル国軍で残った敵を倒そう」

「うむ。よし、全軍! 隊列を組め! 西側に向かうぞ!」


 メイル国軍とラヴァ帝国軍と黄龍は、西側に移動を開始し、その後、残ったモンスターとの戦いが始まった。



 場面はグライン城の中庭の、冬雅達とヴァンパイアロードとグレーターデーモン変異種がいる場所に戻る。


「ドラゴンオーラ!」

「戦乙女の誓い!」

「魔法装術!」


 冬雅達はそれぞれ能力強化スキルを発動する。そしてアマテラスの太陽の加護の効果も継続中だった。


(こいつら……何なんだ? どう考えても勇者たちより強い……)


 アンサズ宰相の体を乗っ取ったヴァンパイアロードは、この場から逃げていく勇者パーティに攻撃しようと考えたが、冬雅達に隙がないので簡単には動けなかった。それで浅井達はグライン城を無事、脱出することができた。


「グルルルルル!」


 一方、グレーターデーモン変異種は、まわりの状況などは目に入らず、敵である冬雅達にいきなり襲い掛かる。


「おい! 待て!」

「ガアアアアアアアア!」


 ヴァンパイアロードの制止も聞かず、グレーターデーモン変異種は冬雅に向かって突撃し、右手の爪に魔力をまとわせて放つスキル「オーラクロー」を放つ。それを見たサキは冬雅の前に素早く出て、精霊神の盾を構えて受け止める。


「ちっ、魂が安定しないから、俺の命令が理解できないのか。やはりまだ強制変異には改善の余地がある。だがそれを改良していくのも面白い」

黄泉比良坂よもつひらさか!」


 ヴァンパイアロードがまだこの戦いに余裕を感じている一方、冬雅は黄泉比良坂よもつひらさかのスキルを発動し、二本の石柱の間から現れた巨大な女性の白い手が伸びていき、グレーターデーモン変異種の体をつかむ。


「むっ、あれは俺にも使ったスキルか」


 ヴァンパイアロードはゼル将軍の体を乗っ取っていた時に同じスキルを受けたが、原初神カオスの力によってその効果を防いでいた。


「ふん。束縛系のスキルか。俺にも効かなかったように、こいつにも……何っ!」


 ヴァンパイアロードは、グレーターデーモン変異種からその魂が引き抜かれ、連れ去られて魂が消滅する様子を見て驚く。


「バカな! 魂を直接、消滅させるスキルだと!」


 ヴァンパイアロードは魂を抜かれて倒れているグレーターデーモン変異種の姿を見て、黄泉比良坂よもつひらさかの強さに驚愕する。


「これほど強力なスキルだったのか。だが、俺には効かなかった。だから俺には使わず、こいつに使ったのか。それにこれほど強力なスキルなら、長いクールタイムがあるはずだ。もう恐れることはない」


 ヴァンパイアロードは持っていた豪華な杖を掲げ、全身から原初神カオスのまがまがしいオーラを放出して身にまとう。


「はああああああ!」

「あれが神の力とやらか!」

「ふふふ。貴様らに最強の闇の力を見せてやる! カオスフレア!」


 ヴァンパイアロードはすべてを飲み込む深い闇を作り出し、それを冬雅たちに向けて放つ。それに対し精霊神の盾を構えたサキが前に出て、その後ろに冬雅と凛子が隠れる。


「何っ!」


 サキは迫ってきたヴァンパイアロードのカオスフレアの闇をすべて吸収した。それは彼女の持つ冥界竜の指輪の効果だった。


 冥界竜の指輪  闇吸収 火無効 防+20%


「ちっ、闇対策の装備を持ってたか。ならこれならどうだ!」


 ヴァンパイアロードは再び原初神カオスのオーラをまとい、今度は自分の周囲に大量の雷を作り出す。この魔法は、アンサズ宰相が元々使えた雷系最上級魔法だった。


「ライトニングサンダー!」



 次回 カオスの凶手 に続く

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