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第〇十一話 東の森の宝箱

 冬雅のモンスター発見の言葉を聞いて、サキと凛子は森の道の先にいる彼と合流するため走り出す。

 ハンタースパイダーはEランクモンスターで、粘着力を持つ糸を飛ばして攻撃するスキルを持ち、さらに毒の牙を持つ蜘蛛のモンスターだった。


(確かハンタースパイダーは糸を飛ばしてく……)


 冬雅の声を聞いて彼の存在に気づいたハンタースパイダーが、糸を飛ばして攻撃してくる。


「うわっ!」


 それを冬雅はギリギリで回避する。


「あ、危なかった。冒険者の心得を見てなかったら糸を食らってたな」

「大丈夫? 上泉君」

「うん。なんとか、かわせたよ」

「あのクモか!」


 サキと凛子が冬雅と合流して、三人はハンタースパイダーと対峙する。


「ギギャッ!」


 今まで蜘蛛の巣にいたハンタースパイダーは、太い木の枝に移動して三人を見ている。


「あいつに近づくのは危ないかもしれない」

「なら、私の魔法で……」


 凛子はハンタースパイダーに向けて魔導士の杖を構える。


「ギギャーーーッ!」


 その時、ハンタースパイダーは木の枝から三人に向かって大きくジャンプして襲ってきた。


「サンダーボルト!」


 それを見た凛子は魔導士の杖の先から電撃を放ち、まっすぐ飛んできたハンタースパイダーにその電撃が空中で命中する。


「ギャギャーーーー!」


 電撃が直撃したハンタースパイダーは全身が感電して大ダメージを受け、落下して茂みの中に落ちた。


「倒した?」

「どうかな。ここからじゃ茂みの中が見えない」


 冬雅達が判断に迷っていると、三人の頭の中にレベルアップ音が鳴り響き、目の前にステータスボードが表示される。


「あっ! レベルが8になった!」

「じゃあ、あの蜘蛛を倒せたみたいね。ん? 新しいスキル!」


 サキはスキル欄の新たなスキルをタッチしてみる。


 オーラブレード

 剣に魔力をまとわせて

 攻撃力の二倍のダメージを与える剣技

 消費MP 20


「やった! 攻撃スキルを覚えたみたい!」

(これで私も活躍できる!)


 サキは新たなスキルを習得し、全身で喜びを表している。


「じゃあ、回収してくるよ」


 冬雅は森の道から茂みに入り、ハンタースパイダーの死骸をアイテムボックスに収納して帰ってくる。


「ここまでは順調ね」

「うん。この調子で先に進もう」

「おー」


 三人はさらに森の道を進んでいく。その途中、グリーンアント、キラースネーク、ハンタースパイダーが何体か出現したが、三人はすべて倒し経験値と死骸を手に入れた。そしてさらに森の道を進むと、


「これは……」

「宝箱!」


 冬雅達は蓋が閉じている宝箱を発見する。


「やったね! 早速、開けてみよう!」

「ちょっと待って。おかしくない?」

「ん? 何が?」


 サキは宝箱を見ながら考える。


「だってこんな所に宝箱があったら、簡単にほかの冒険者達が見つけてるでしょ。なのに何で宝箱が残ってるの?」

「中身だけ取って蓋を閉めたとか?」

「宮本さんはミミックの心配をしてるの?」


 ミミックとは、宝箱の姿に擬態して冒険者をだまし、不意打ちしてくるモンスターである。


「それもあるし、もしミミックじゃないとしたら、誰がこの宝箱を用意してるのかってこと」

「確かにそれは気になるけど、宝箱を見つけちゃったらこのままにできないし、開けるしかないよ」

「それもそうね。なら私が開けるよ。私には盾と鎧があるし。凛子は少し下がってて」

「わかった」

「俺はいつでも攻撃できるようにしておく」


 冬雅はそう言って宝箱に向かって鋼鉄の剣を構える。


「これで襲ってきても、すぐに鋼鉄の剣で突き刺すことができる。あっ、宮本さん。ミミックじゃなくても、宝箱に罠がある場合もあるから、気を付けて」

「うん。盾で身を守りながら開けてみるよ」


 サキは左手で盾を構えながら宝箱に接近し、体を盾で守りながら右手を伸ばして蓋に触れて少し動かす。


「カギはかかってないみたい。じゃあ、開けるよ」


 サキは扉をゆっくり開ける。


「……普通に開いた」

「ミミックじゃないようだ」

「中身はどう?」

「ちょっと待って」


 冬雅とサキは宝箱の中を見る。すると指輪がひとつ入っていた。


「指輪があった!」

「宝箱の大きさにあってないお宝ね」

「私も見る!」


 少し離れていた凛子が宝箱に接近し中を見る。


「指輪だね。取っていいよね」

「見たところ、罠とかはなさそうだけど、念のため、ゆっくり手を入れてみて」

「もう、上泉は心配しすぎ。大丈夫だって」


 凛子は恐れずに宝箱に手を入れて中の指輪を取り出す。その指輪には小さな赤い宝石がついていた。


「ほらね」

「うん。何もなくてよかった」

「それで、その指輪は何か効果があるのかな?」

「私に聞かれても」

「アイテムボックスに入れてみるよ。それでその指輪の名前がわかるはず」


 凛子は冬雅に指輪を渡し、彼はアイテムボックスに収納する。するとアイテムリストウィンドウに、


 守りの指輪×1


 と表示されていた。


「守りの指輪だって。たぶん守備力が上がる魔法が付与された指輪だと思う」

「ああ、武器屋の二階にあった装飾品ってやつね」

「そう。それで盾を使う宮本さんか、重い装備をつけられない佐々木さんのどっちかが装備したほうがいいと思う」

「じゃあ、私……」

「ちょっと待った!」


 凛子が手を上げようとしたのをサキが止める。


「どうしたの、サキ」

「その指輪は、前衛なのに重い装備をつけない上泉君こそ必要だと思うの」

「えっ? 俺?」

「あー、確かに前にいるのに胸当てだけって危ないか」


 サキの意見に凛子が同意する。


「いや、俺は……」

「上泉君、私達に遠慮してない?」

「むっ」

「ああ、私もそれ感じる」

「……」


 冬雅は今の時点で、異性運上昇の効果で二人を巻き込んでしまったと思っているので、二人の安全を最優先に考えていた。


「ええと……」

「私達に遠慮なんてしなくていいの。この指輪が一番必要なのは上泉君よ」

「わかった。じゃあこの指輪は俺が使わせてもらうよ」


 冬雅はアイテムボックスから取り出した守りの指輪を指にはめて、ステータスボードを表示する。


 装備

 鋼鉄の剣   攻+20

 鉄の胸当て  防+10

 守りの指輪  防+5


「守備力が5上がったよ。二人ともありがとう」

「どういたしまして」

「このくらい、気にしなくていいよ」

「じゃあ、これから入手する戦利品は、誰が使うのが一番いいかで配分するってことでいい?」

「いいわよ」

「私もオーケー」


 今回のやり取りで、冬雅は二人と少し打ち解けた気がした。


「じゃあ、この件はこれでいいとして、まだ解決してない問題があるわ。何でこの宝箱がここに残ってたのかってこと」



 次回 レアモンスター に続く

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