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第〇百五話 開戦

 場面は辺境の町ベールの西の街道にいるグライン王国軍がいる場所に変わる。


「ほんとに大丈夫なんだろうな」

「大丈夫だろ。奴らが帰ってこないうちに戦いを仕掛けるためのこの強行軍なんだし」


 槍と全身鎧を身に着けたグライン王国軍の歩兵が、辺境の町ベールの城壁とその上の兵士を見ながら話している。


「俺は西グライン砦で覇竜の牙の凄さを見てるんだ。特にあの黄金の龍のブレスは凄かった」

「それは俺も知っている。覇竜の牙が三体の魔王を倒してることもな。だから奴らがいない今のうちにメイル国に攻め込むことにしたんだろ」


 グライン王国の諜報部は、メイル国Sランク冒険者パーティ「覇竜の牙」が今、ラヴァ帝国の迷宮都市の大迷宮を攻略していることを調べ上げていた。


「それに俺達の先鋒はモンスター軍団だ。もしあの黄金の龍がいたとしても、こっちまでは届かないだろ」


 グライン王国軍は、先鋒にワーウルフ、ドラゴニュート、アーマーアント、バトルボア、シルバーウルフ、スケルトンソルジャー、オーガなど、二万のモンスター軍団を配置していた。その後方にグライン鉄騎兵団、グライン王国騎士団、グライン魔法師団、グライン王国軍歩兵部隊、傭兵部隊などの人間の部隊が配置されていた。


「そのモンスター軍団も心配なんだよ。ちゃんとこっちの言うことを聞くんだろうな」

「お前は心配性だな。大丈夫だろ。ここまでおとなしく進軍してたんだし。あいつらはゼル将軍の指示通りに動いてる。まあ、奴らのそばで一緒に戦おうとは思わんが」


 グライン王国軍の人間の部隊とモンスター部隊は、少し距離が離れて配置されていた。


「それにしてもゼル将軍のあの黒いマントは何なんだ? 初めて見るが」

「さあな。魔族国で見つけた魔法のマントか何かなんじゃないか?」


 グライン鉄騎兵団と共にいて、馬に乗っているゼル将軍は、黒いマントを身にまとっていた。



 場面は辺境の町ベールの西側の城壁の上に変わる。そこに武装したサキと凛子がいて、西の街道のグライン王国軍を見ている。


「思ってたよりモンスターが多くない?」

「うん。でも私達も前よりレベルも上がってるし装備も強くなってるから、西グライン砦の戦いの時より、もっと活躍できるはず」


 サキ

 ドラゴンブレイカー 攻+95 竜族へのダメージ30%上昇

 精霊神の鎧     防+80 物理耐性30%

 精霊神の盾     防+55 ブレス・魔法耐性30%

 冥界竜の指輪    闇吸収 火無効 防+20%

 豊穣神の指輪    HP自動超回復 防+20%

 精霊王の指輪    毒・麻痺・睡眠・混乱・魅了状態を無効化


 凛子

 星をも砕く杖    攻+85 魔+50 魔法強化40%

 大賢者のマント   防+70 魔法耐性70%

 月の女神の指輪   MP自動超回復 魔+20%

 魔法王のネックレス 魔法・スキルの消費MP25%カット

 精霊王の指輪    毒・麻痺・睡眠・混乱・魅了状態を無効化



「わしも前より強くなっとるし、心配いらんぞ」

「ああ、あのおじいちゃんの光るブレスは強いもんね。それと、前にいるのがモンスターばかりでよかった。もし人が混じってたら広範囲魔法を使うのをためらっちゃうよ」

「確かにね」


 グライン王国軍の先鋒がモンスター軍団だけなのを見て、二人はほっとしている。


「コロじい」


 少し前までリーナと話していた冬雅が、サキと凛子がいる場所に歩いてきて、コロポックルに話しかける。


「何じゃ?」

「今回は龍の姿になったら、そのままの姿で戦い続けていいよ。確か龍の姿の時に使えるスキルがあったはず」

「うむ。了解じゃ」

「今回は目立たないように戦わなくていいの?」

「うん。まわりは味方だけだし、気にしなくていいよ。でも顔はわからないようにしよう。グライン王国軍に顔を覚えられると後で行きづらくなるし」

「わかった。じゃあ……」


 冬雅は黒いマフラーと防塵ゴーグルを身に着け、サキは精霊神の兜を装備し、凛子はカラー眼鏡を身に着けフードを被り、以前、西グライン砦で戦った時と同じように顔を隠す。そこにリーナが近づいてくる。


「リンコとコロポックルのおじいさん。敵はモンスター部隊が先鋒だから、奴らが接近してきたら先制攻撃を頼みたい」

「広範囲のやつですね。わかりました」

「わしも全力で戦うぞい」

「うむ。頼んだ。それとトウガ達は、モンスター軍団を壊滅させたら、後方に下がって怪我人の救助とか支援とかを担当してくれ」

「はい」

「回復ならおじいちゃんが得意だよね」

「そうじゃの」


 サキ、凛子、コロポックルは、リーナの提案を承諾する。


「リーナさん。俺はモンスターを壊滅させても、ここに残ります」

「いいのか?」

「はい。でも俺は積極的に攻撃するんじゃなくて、皆を守るように戦いますよ」

「そうか。それはそれで助かる」

「上泉君。それなら私も……」

「いや、後方支援も必要なことだから、そっちは宮本さん達にまかせる」

「うん。わかった」

「むっ、来たか!」


 リーナが西の街道のグライン王国軍を見ると、先鋒のモンスター部隊が辺境の町ベールの城壁へ向かって突撃を開始する。まず足の速いシルバーウルフやバトルボア、ワーウルフ、バイコーンに乗ったスケルトンナイトなどが先頭に立って迫ってくる。さらに百体程度の槍を持ったドラゴニュートが、城壁の上を超えようと飛んでくる。


「全軍! 迎撃準備!」


 リーナの指示で、城壁の上のメイル国軍の騎士や魔法使いなどがいつでも攻撃できる態勢を整える。


「魔法装術! からのティターニア召喚!」


 凛子は全能力を強化するスキルを発動してから、背中に羽根があり、綺麗なドレスを身にまとった妖精の女王ティターニアを城壁の上に召喚する。


「わしもやるぞい! ドラゴンオーラ! そして龍化!」


 一方、凛子の肩の上にいたコロポックルも、全能力を強化するスキルを使ってから龍化を発動し、巨大な黄金の龍の姿に変化して城壁の上空に浮かぶ。


「ばかな!」

「お、黄金の龍だ!」

「何でここに黄金の龍が!?」

「諜報部の情報が間違ってたのか!」


 西の街道で待機しているグライン王国軍の人間の部隊の兵達が、巨大な黄龍の姿を見て驚き動揺している。


「ブフアアアアアアアアアア!!」


 城壁の上空に浮かんでいる黄龍は、大きく息を吸い、突撃してきた二万のモンスター軍団を狙って、美しく輝きを放つ聖光のブレスを吐き出した。



 次回 摩利支天顕現 に続く

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