第〇百二話 四体目の魔王
紙にSランクの魔石の効果を書いた冬雅は、テーブルの上の装飾品と魔石の組み合わせを考える。
「ベヒモスの魔石の能力値強化は、能力値の上昇値が上がるのかな。なら……」
冬雅は破壊王の指輪と風の精霊の指輪とベヒモスの魔石を選び、サキの前に並べる。
「これで合成してみて」
「わかった」
サキは装飾品合成ウィンドウを表示する。
破壊王の指輪 攻+15%
風の精霊の指輪 速+15%
ベヒモスの魔石 能力値強化
MP60
合成しますか?
はい いいえ
と表示され、サキは新たな指輪を作り出す。
軍神の指輪 攻+20% 速+20%
「おお、これはいい! 今まで攻撃力と速さを上げるのに装飾品枠を二つ使ってたけど、これでひとつ空きができる!」
「上泉! 次は私のを考えてよ!」
「わかった。魔法使い用なら……」
冬雅が選んだ指輪と魔石をサキが合成する。
大魔導士の指輪 MP自動大回復 魔+10%
超魔力の指輪 魔+15%
アモンの魔石 MP自動大回復
↓
月の女神の指輪 MP自動超回復 魔+20%
「超回復! これでMPを気にしないで、どんどん魔法が使える!」
「Sランクの魔石はあと三つ、じゃあ……」
冬雅は合成の組み合わせを考え、それをサキが合成していく。
達人の籠手 防+15 会心率+10%
黒竜の籠手 防+25 闇無効
ヴリトラの魔石 会心率+15%
↓
竜神の籠手 防+40 会心率+20% 闇無効
守護の指輪 防+15%
火竜の指輪 火無効 防+20
グレーターリッチの魔石 闇吸収
↓
冥界竜の指輪 闇吸収 火無効 防+20%
「うーん。もう一個、守護の指輪があれば……そうだ!」
「どうしたの?」
「欲しい効果の指輪が武器屋に売ってたから、ちょっと買ってくるよ」
(これがゲームなら、ダンジョンを周回して装飾品を集めるんだけど)
この迷宮都市ヘルムの大迷宮の下層の宝箱の復活期間と、最下層のボスの復活は一か月以上かかるといわれているので、宝箱目当てでこの大迷宮を周回するのは効率が悪かった。
「それは上泉君がつける指輪?」
「いや、宮本さん用の防御特化の指輪なんだけど」
「じゃあ、私がお金出すから一緒に行くよ」
「わかった」
「なら私とおじいちゃんは留守番してる」
「じゃの」
「武器屋、もう開いてるかな?」
「迷宮都市の武器屋は早い時間から開いてるらしい」
「じゃあ、行ってこよう」
冬雅とサキは万が一のことを考えて武装してから出かけて、大通りにある武器屋に行って守護の指輪を買って戻ってきた。
守護の指輪 防+15%
大地母神の指輪 HP自動大回復 防+10%
ヒュドラ変異種の魔石 HP自動大回復
↓
豊穣神の指輪 HP自動超回復 防+20%
「よし、これでSランクの魔石の合成ができた。じゃあ、装備してみよう」
冬雅
軍神の指輪 攻+20% 速+20%
竜神の籠手 防+40 会心率+20% 闇無効
精霊王の指輪 毒・麻痺・睡眠・混乱・魅了状態を無効化
サキ
冥界竜の指輪 闇吸収 火無効 防+20%
豊穣神の指輪 HP自動超回復 防+20%
精霊王の指輪 毒・麻痺・睡眠・混乱・魅了状態を無効化
凛子
月の女神の指輪 MP自動超回復 魔+20%
魔法王のネックレス 魔法・スキルの消費MP25%カット
精霊王の指輪 毒・麻痺・睡眠・混乱・魅了状態を無効化
コロポックル
魔法神の指輪 魔+20%
魔法神の指輪 魔+20%
魔法神の指輪 魔+20%
「これでだいぶ強くなった」
「私も防御力がかなり強くなった!」
「わしもさらに強くなったぞい!」
「私、Sランクの魔石の装飾品ひとつだけだから、次は私のを作ってよ」
「わかった。覚えておくよ」
「あっ。そういえば、ひとつ疑問なんだけど」
凛子がふと思ったことを話す。
「何?」
「上泉の籠手って装飾品枠じゃん。でもサキの鎧の籠手は、鎧の一部扱いでしょ。おかしくない?」
「ああ、言われてみれば」
「確かにその辺はあいまいね。でも鎧の一部として認識されてるほうが、私は得だから、それはそれでいいんじゃない?」
「これがソシャゲなら、プレイヤー有利のバグは、運営が早急に直すんだけど」
「運営?」
「い、いや。何でもない」
普段、ゲームをしない凛子には冬雅の今の話はよくわからなかった。
「じゃあ、この余ってるのはどうする?」
「後で合成に使うかもしれないから、弱い装飾品もとっておこう。指輪なんて重くないし」
冬雅達は適当に装飾品や魔石を分けて、彼らはアイテムボックスや魔法のかばんに収納する。
「じゃあ、これからは自由行動でいいんでしょ」
「うん。今日一日は休んで、明日、ベールに帰ろう」
冬雅達は一日、冒険者活動を休んでこれまでの疲れを癒し、次の日、彼らは冒険者ギルドでモンスターの素材を売り、その後、旅のための買い物をしてから迷宮都市ヘルムを出発し、王都ガントレットを経由して辺境の町ベールへ帰っていった。
場面は魔族国にある地下遺跡ダンジョンに変わる。すでにグライン王国軍は魔族国の主要地域を占領し、さらにこの地下遺跡ダンジョンにやってきていた。そしてゼル将軍と、浅井、前田、立花、黒田の勇者パーティは、地下遺跡ダンジョンの最下層のボス部屋に突入する。
「あの偉そうな奴が魔王だな。準備はいいな。アサイ」
「はい!」
ボス部屋の奥にある王座に、黒い服と黒いマントを羽織った若い男が座っていて、五人はボス部屋の奥に進んでいく。
「騒がしいな。人間が何しに来た?」
「当然、お前を倒しに来た。すでにほかの三体の魔王はいない。残りはお前だけだ」
「ほう。あいつらを倒したのか。だから人間の国の侵略など止めておけと言ったのに」
黒い服の男はゼル将軍の言葉に動揺もせず、赤い目を光らせながら、ゼル将軍や勇者パーティを品定めするように見ている。
「ふむ。それほど強そうには見えんが……そうか。勇者か! 勇者なら魔王を倒せるのもうなずける」
「……」
浅井は勇者だが、まだ魔王を倒したことがないので黙っている。
「いいだろう。この吸血魔王ヴァンパイアロードがお前らを倒し、古からの勇者と魔王の戦いに終止符を打とう」
「ヴァンパイアロード……。ヴァンパイアの変異種か」
ヴァンパイアは人型のモンスターで、目が赤く、口に人の血を吸うための牙を持ち、高いHP再生能力を持つAランクモンスターである。そのヴァンパイアが変異したのが、吸血魔王ヴァンパイアロードだった。
「アサイ、今のお前達なら魔王でも倒せるはずだ」
「はい! みんな! 力を貸してくれ!」
「おう!」
「回復はまかせて!」
「特大の魔法をお見舞いしてやる!」
次回 吸血魔王ヴァンパイアロード に続く