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第〇十〇話 王都東の森の戦い

「漫才はそのくらいにして早速、森に……ん? 誰か来る」


 冬雅は森の奥から来る数人の人影を発見する。


「あんなのどうやって倒すんだよ」

「単純にレベルが足りないんじゃないか?」

「それと装備をもっと強くしないと」

「じゃあ、また草原でモンスターを狩りましょう」


 その人影の正体は、冬雅と同年代くらいの若い四人の男女の冒険者だった。


(あれは鉄の剣に皮の鎧……初心者用の装備か)


 冬雅は戦士系の青年の見た目から、彼らが駆け出しの冒険者だろうと推測する。


「ちわーすっ」

「どうも」


 駆け出しの冒険者達は冬雅達と簡単な挨拶をしてすれ違い、王都ニルヴァナへ向かって歩いていく。


「森に強いモンスターがいるみたいね」

「でも彼らに大怪我をした様子はなかったから、勝てないと判断したら逃げられるくらいの速さのモンスターなんだと思う」

「へー、上泉、頭いいね」

「学校の勉強は苦手だけどね」

「じゃあ、私達も無理だと思ったら逃げましょ」

「うん、じゃあ、行こう」


 冬雅はレベル7で習得した気配察知で周囲を警戒しながら森の道を進んでいく。その後をサキと凛子が並んでついていく。この森の道は、ここでモンスターと戦闘ができるくらいかなり広く歩きやすかった。


「むっ、これはモンスターの気配か!」


 三人が森に入り五分くらい歩いていると、冬雅が森の道の先から何かの気配を察知する。その言葉を聞いてサキは軽鉄の剣と盾を構え、凛子は魔導士の杖を構える。


「シャーーッ!」

「シャーーーッ!」


 三人がその場で待ち構えていると、森の道の先から体長が四メートル以上ある巨大で毒々しい姿の蛇が二匹現れた。


「蛇のモンスターが二匹いる!」

「あれはたぶんEランクモンスターのキラースネークだな」

「キラースネークは確か牙に毒を持ってたよね」


 冬雅とサキは「冒険者の心得」を読んで、キラースネークのことを知っていた。ちなみにグライン草原のホーンラットとグリーンアントもEランクモンスターで、この世界のモンスターはその強さによってランクが決まっていて、Eランクは一番弱いモンスターのランクだった。


「Eランクなら、私が魔法で一匹倒すから、もう一匹は任せるよ」

「なら残ったのは俺がやる」

「シャーーーッ!」

「サンダーボルト!」


 体をくねらせながら迫ってきた二匹のキラースネークの片方を狙って、凛子は魔導士の杖の先から電撃を放つ。


「ギギャーーーッ!」


 キラースネークは動きが遅く、凛子の雷魔法が命中して全身を感電させて一匹を倒した。それを見てサキは凛子の前に出て盾を構える。今の凛子は魔法を連続で撃つことはできなかった。


「もう一匹が来るよ!」

「俺が行く!」


 残ったキラースネークが体をくねらしながら接近してくる。それに対し冬雅は走って、ある程度まで接近して止まり、鋼鉄の剣を中段に構える。


「シャーーーーーッ!」


 待ち構えている冬雅に向かって、キラースネークは口を大きく開けて牙を見せながら襲ってくる。


「はっ!」


 そのキラースネークの攻撃を、冬雅は素早く横に飛んで回避する。


「錬気斬!」


 キラースネークの横方向に位置取った冬雅は、鋼鉄の剣に魔力をまとわせて、キラースネークの首を狙ってまっすぐ振り下ろす。その斬撃がキラースネークの首を真っ二つに切り裂いた。


「ガッ!」


 頭部を失ったキラースネークの体は地面をのたうち回った後、動かなくなった。


「やった!」

「倒した!」

「ふぅ、上手くできた」


 サキと凛子は、冬雅と倒れたキラースネークがいる場所に歩いていく。


「なんか、攻撃を避けた時とか、上泉の動きが速くなってない?」

「自分でもそう思う。たぶんレベルが上がった効果だよ。この鉄の胸当ても最初は重く感じたけど、今はあまり重さを感じないし」

「ああ、私もいつの間にか、この軽鉄の鎧を身に着けてても、速く動けるようになったよ」


 冬雅とサキはレベルが7になって体が強化され、装備の重さをほとんど感じなくなっていた。


「そうだ。昨日の夜、発見したんだけど……」


 冬雅は自分が倒したキラースネークに手をかざす。


「収納!」


 冬雅がそう言うと、キラースネークの死骸がなくなってアイテムボックスに収納され、アイテムリストウィンドウが表示された。


 キラースネーク×1


 冬雅がその文字を確認すると、ウィンドウが自動で消える。


「ほら、『アイテムボックス』って言わなくても収納できるんだよ」

「へぇー。あの冒険者の本に乗ってたの?」

「いや、自分で見つけたんだ」

「ふーん。それでそれは何かの役に立つの?」

「いや、あまり……」

「まあ、色々試してみることはいいこと……あっ! スマホ!」


 冬雅と凛子のやりとりを聞いていたサキが何かを思いつく。


「ん? スマホって何?」

「アイテムボックスよ。スマホをアイテムボックスに入れとけば、バッテリーが減らなくなるでしょ」

「ああ、そうか! 中は時間が止まってるからか」


 冬雅のスマホは、すでにかばんと一緒にアイテムボックスに収納してあった。


「私のスマホは宿屋に置いてきちゃったから、帰ったらお願い」

「わかった。佐々木さんはどうする?」

「いやいや、スマホを他人に預けるなんてハズイんだけど! サキはよく預けられるわ」

「別に中を見られて困るものなんてないし」

「えー、趣味とか色々ばれるじゃん! 無理無理!」

「でもアイテムボックスに入れとかないと、自然放電とかでいずれ使えなくなるよ」

「ぐぬぬ……」


 凛子は冬雅にスマホを預けるかどうか迷っている。


「そんなに見られるのが嫌なら、顔認証とか、指紋認証とか使えばいいんじゃないの?」

「えー、そんなの、いちいちめんどいでしょ。何かの間違いで、スマホが使えなくなったらやだし」


 凛子はスマホの画面ロック機能の設定をしてなかったようだ。


「あのー、俺は絶対に人のスマホなんて見ないよ」

「絶対?」

「絶対」

「……わかった。私も宿屋に置いてきたから、帰ったらお願い」

「うん」

「絶対見ちゃ駄目だからね!」


 凛子は必死にそう訴える。


「わかったって。佐々木さんが嫌がることはしないよ」

「その言葉、信じるからね!」


 二人のこのやりとりを見ながらサキは考える。


(凛子って表情がころころと変わって可愛いなぁ。凛子みたいな子が、男子にモテるんだろうな……それに引き換え私は、あんまり魅力がない)


 サキは凛子の愛嬌のある表情を見て、うらやましくなる。


(スポーツが得意なのは私の魅力かもしれないけど、それ以外には何にもない……いや、別にモテたいわけじゃないけど、なんかなー)


 サキはひとりで考えすぎて落ち込んでいる。彼女は運動神経抜群なのと、その容姿から男子に人気があるのだが、自分ではわかっていなかった。


「……さて、もうひとつのほうも回収するか」


 冬雅は凛子が魔法で倒したキラースネークの死骸がある場所に行ってアイテムボックスに収納する。アイテムボックスの収納は、アイテムとの距離が近くないと収納できなかった。


「さぁ、先に進も……むっ! あれは!」


 冬雅がモンスターの気配を感じ、森の道から少し入った木が生い茂った所を見ると、巨大な蜘蛛の巣にいる体長一メートルくらいの蜘蛛を発見した。


「何? モンスター?」


 冬雅の様子を見て、サキは気を取り直して軽鉄の剣と盾を構える。


「あれは蜘蛛のモンスター、ハンタースパイダーだ!」



 次回 東の森の宝箱 に続く

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