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蓋世の神子  作者: そるの
4/5

四話「魔女」

執筆 そるの

挿絵 ヤマダマヤ







【ルーリア視点】



「……………………………」



何度も見た光景


いや、見させられている光景


私は、こんなこと望んですらいないというのに


何も無い真っ黒な世界


そこにいつも私が立っている


漆黒は、膝辺りまで侵食してきている


いつもの光景


いつもの違和感


いつもの痛み


昨日よりも、少しだけ、痛みが強くなっている



「……………………………っ」



そしていつも、ここで意識を失う










新暦1291年、1月13日





────その夜、ルーリアが宿で倒れた





「大丈夫か?」


「………はい、少しきついだけです」



ルーリアはキツそうな顔で、宿のベッドで寝込んでいた


数十分前に、急にルーリアが倒れた時はかなり焦ったが、どうやらただの熱のようで少し安堵した


もしかすると、神子の呪いが関係しているのではないかと心配もしたが、どうやら杞憂だったようだ



「……………………」




───────ガチャ




すると、後ろからドアを開ける音がした


ドアを開けた主は、スイだった



「大丈夫ですか…?」


「……………………………」



先程まで俺と話していたルーリアは、スイが入ってくるなり、布団に(くる)まって動かなくなってしまった



「ぁ……もしかして寝てましたか…?」


「……いや、さっきまで話してたんだが……どうしたんだ、ルーリア」


「……………………………」



ルーリアは、再び話しかけても微動だにしなかった


そういえば、昨夜もこんな態度をしてたな



「……少しキツイのかも知れない。悪いがスイ、熱がうつっても悪いから暫く別室にいてくれないか?」


「……はい、分かりました」



スイは、少々やるせない顔をしたが直ぐに席を外してくれた



「……こら、ルーリア。せっかくスイが心配して来てくれたんだぞ」


「……………………………」


「……お前、もしかしてスイのことが嫌いなのか?」


「………………嫌いじゃ……ない、です……」


「じゃあどうして」


「…………なんでもないです…」


「………………………」



俺はため息をつくと、ポケットに入れておいた林檎を取りだした



「林檎剥くけど、要るか?」


「………………」



俺がそう言うと、ルーリアはやっと、包まっていた布団から頭を出した


目線は逸らしたままだが、体はこちらに向けている



「……うん」



ルーリアは少し頬を膨らませ、こくりと頷いた


全く……素直なのか、素直じゃないんだか


本当に、この歳の子供は分からん


ルーリアの取扱説明書が欲しいくらいだ……



「……………………」



昨日聞いた話を思い出す


セガーシア政府軍は四年前、三人の神子を失ってからは、軍事政策は一時中断となった


その後の政府軍の動きは分からないが、あまり大それたことはしていないようだ



「……………………」



思えば一年前、ルーリアをおぶりながら向い、セルフォリアの国境門で出会った、政府軍の男二人


奴らは、リリーシャで保護しているルーリアが連れ去られたという情報を聞きつけ、神子であるルーリアの確保に躍起になっていたのだろう


しかし何故、政府軍はリリーシャの屋敷で神子を保護しているという情報を知っていながら、軍で保護しなかったのだろうか


軍からしては、喉から手が出るほど欲しいものだろうに


俺が調べた中では、リリーシャ家と政府軍に大きな関わりは無かったはず


裏で繋がっていたのだろうか


するとなんだ、リリーシャ家が政府軍に多大な資金提供をしているとか、神子をリリーシャ家で保護する代わりに、賄賂を送っていたり……


だとすれば、そこまでして神子を屋敷に置きたい理由はなんだ?


ルーリアの能力は、人の心を読む力だ


その力がリリーシャ家にとって、とても有益な能力だったりしたのだろうか



「………………………………………」


「………あ」



熟考していると、横からルーリアの声と共に何かが床に落ちることがした


見てみれば、ルーリアが床に林檎を落としていた


俺はその場で林檎を掴み、ルーリアに手渡した



「ほら、三秒ルールだ」


「ぁ……ありがとう、ございます……」


「気を付けろよ」



何やら、ルーリアの反応がどことなく鈍い


そりゃ、風邪を引いてるんだから当たり前ではあるんだが、それでも俺の不安を煽るように違和感は残った


いや、これ以上は気にしても仕方がない



「……………………」



林檎を食べ終えたルーリアの額に、手のひらを当てる


自分の額の熱と比べなくとも、僅かに熱いと感じるほどだった



「……典型的な風邪だな」


「うー……だるいです…」



……………………。



「……風邪か。そういえば今まで一度も引いたことないな」


「……え、一度もですか?」


「そうだな、記憶が無いガキの頃はあったかもしれないが、記憶がある限りでは風邪でも他の病気でもなった事ないんじゃないかな」


「ほ、他の病気も…ですか?」


「……………………」



片手を顎に触れ、少し考え込む


……そういえば、風邪以外にも病気になったことがない


いや、ザーヴェスも病気にかかった姿を見たことがない気がするが……


ザーヴェスの、無駄にデカい "ガハハハハ!" という笑い声が脳裏に()ぎる



「…………………」



待て、あいつは色々と規格外だ。判断材料には少し……いや、かなり不適合だ


あいつは、病気なんかとは無縁な男のイメージだ



「……そうだな。それに、病気もそうだが傷なんかも他人に比べて治癒するのが早かったし、免疫力みたいなもんが強いのかもしれないな」


「へぇ、不思議ですね。もしかしてセルアも神子だったりして」


「な訳ねぇだろ?俺が神子ならとうの四年前に寿命(のろい)で死んでるはずだろ」


寿命(のろい)……」


「………ぁ、すまん。忘れてくれ」


「……いえ、いいんです。気にしないで下さい」



……つい油断して、悪いことを言ってしまった


ルーリアは多く見積もっても、あと四年しか生きられない身なんだ



「……そ、それに俺は髪は黒いし、目は赤い。お前らとは正反対だ」


「それも、そうですね」



ルーリアは少し落ち込んでいるように見えた


……それもそうか


自分が死ぬ日のことなんて、想像もしたくない



「………………………」



……これからは、こういう話は控えよう











昼になり、俺はルーリアに(かゆ)を届けに来た


料理自体は質素なもので、米を多めの水で柔らかく煮ただけのものだ



「大丈夫か?」


「はい、少し暑いだけです…」



ルーリアは、過呼吸気味の呼吸を繰り返していた



「これは…?」



ルーリアは俺が持っていた粥に目を向け、問いかけてきた



「これは "粥" って言うんだ。セルフォリアでは風邪を引いた時にこれを食べると、直ぐに良くなるらしい。まぁ、かく言う俺は食べる機会もなかったんだが」


「………………」



ルーリアは俺から茶碗を受け取り、茶碗の中を見つめていた



「……食べていいんですか?」


「あぁ。その為に持ってきたんだからな」



ルーリアは木製のスプーンで(すく)い、そのまま口に近付けた



「……優しい味です」


「そうか」



こんなのでルーリアが元気になってくれるのなら、幾らでも作ってやるのにな



「………………」



……ん、そういえば



「ルーリア。そういえば、まだ "夢" は見るのか?」


「……最近は、毎日のように見ます」


「そうか……」



やはり、寿命(のろい)は刻一刻と近付きてきているようだ



「………………………」



もしかすると、今回はただの風邪で終わりそうだが、寿命(のろい)が近づくにつれ、重症化や、長期化する可能性だってあるかもしれない


あまり、虚虚(うかうか)してられないな











─────新暦1291年、1月14日



翌日になると、ルーリアは元気になっていた


何事も無くて良かったと思う反面、体調管理の重要さを身に染みて感じた


これからは、各地を旅することになる


旅先では、落ち着いて横になれる場所が無いかもしれない



「……見えました」



スイの言葉で、意識が戻される


"見えた" というのは、目的地のことだろうか


とにかく、準備が出来たということらしい



「お願いします」



スイが、小さな手のひらを差し伸べてくる


握れ、ということだろう



「ん」



俺も手を差し出し、優しく握る


俺の手のひらの、半分ほどしか無い小さな手だった


あとはルーリアが手を繋げば、準備万端だ



「ルーリア」


「はい」



スっと、俺の手を握ってくる



「あ、あの……私に直接触れないと飛べないので…」


「……っ、わ、分かってます」



ルーリアは顔を真っ赤にしてオドオドし、急いでスイの手を握った



「……ぁ、あの、ちょっと痛いです…」



気付けば、ルーリアはスイの手をキツく握り締めていた



「……貴方がひ弱なだけです」


「え、えと……」



スイは困った様子で、俺に助けを求めるような目をこちらに向けてきた



「ルーリア」



俺は少し呆れながら、ルーリアの名前を呼んだ



「……はい」



ルーリアの手の力が抜けるのと同時に、スイの表情も緩んだ



「じゃあ、頼む」


「はい」



先程までとは、段違いの光の量が身体に纏う


まるで、蛍が周りに飛び回っているようだ


スイだけではなく、俺とルーリアにも光が纏っている


それと、若干だが周りの空気の流れが不規則に動き始めたのを感じた


空気の流れは下から上へ、まるで俺らの体を(なぞ)るように流れている



「……………………」


「では、行きます」


「おう」




「───────────────」




世界は唐突に光を無くし、次に瞬きをした後には景色が丸ごと変わっていた



「…………………………………」



全く見覚えのない景色


カイル……か?


…………本当に、この一瞬でここまで来たのか……?


俺は唖然としていた


先程ほどまでセルフォリアの景色を見ていたはずが、今では全く違う世界を見ているのだから



「………ここは、何処だ」



一見して周りに見えるのは、土と植物のみ


ちらほら建造物は見えるが、人が住んでいる雰囲気は伺えない


まぁ、能力で飛んできたところを人に見られるよりはマシか


サルベス教徒に見られたと想像すると、ゾッとするが



「カイル……だと思うのですが…」



スイは自信なさげに言った



「…………………………」



辺りを見渡していると、一本の大きな木の下に何かが立っていた



「いや、ここはカイルだ。見ろ」



俺が指差した方向には、たった一つ(そび)え立つ木製の看板



『 カイル東区、キリカ村 』



そう書かれた看板の木材は、腐敗が進んでおり、少し衝撃が加われば壊れそうな程だった



「東区……ですか」


「あぁ。徒歩で行ける距離ではあるな」



カイル東区からカイル南区までは、おおよそ5kmほどだったはず


歩くには少し気合いがいるかもしれないが、歩けない距離ではない


ルーリアもスイも、この距離なら恐らく大丈夫だろう


だが、問題は行き方だ


確かに、三年間各地を転々としてきた俺だが、カイルどころかアルタジアに来るのも初めてだ


全くと言っていいほど、ここらの土地勘が無い


とにかく、情報が必要だ



「………………………………」



辺りを見渡すが、やはり建造物が(まば)らに建っているだけだ


今日中に南区への行き方と、宿を探さないといけないんだがな


とりあえず、行動しないことには何も始まらない


南に向かって歩くか











十分ほど歩いただろうか


辺りの景色はかなり変わった…………とは言いずらいが、建物もかなり増えたと思う


しかし、肝心の住人が中々見当たらない


何故だろうか


少し不安を感じる



「……………ん」



すると、前方に小さな建物が見えた


あれは………酒屋か?


ラッキーだな


店主なら、南区への道のりも宿の場所も一気に聞けるかもしれない


店まで道のりを辿る


店が閉まっている可能性も脳裏に過ぎったが、看板には『 営業中 』という文字が刻まれており、安堵した



「よし」



そう決心し、木製の扉に手を掛ける



─────ギギギ



扉を開けると、趣のある店内に出迎えられた



「………………」



瓶から樽まで、高価なものから手が出しやすいものまで、様々な酒が棚に飾られているように並んでいた



「らっしゃい」



そう言った店主は、勘定場で煙草を咥えながら、新聞に目を通していた



「ちょっといいか」



俺が話しかけると、店主のおっさんは新聞から目を離し、顔を上げた



「……ん?どうした、兄ちゃん」


「南区の方に行きたいんだが、行き方が分からないんだ。この辺、山が入り組んでるだろ?」



そう、この地に飛んできた瞬間に感じた


カイルはとりあえず、周りの山が入り組んでいて、周りから遮断されたような町だと感じた


リーヌも周りに山が多いと感じたが、カイルは何と言うか山の標高が高い


まるで、壁に囲まれた町のようだ



「……ふん。兄ちゃん、旅人かい?」



店主は新聞を静かに机に置き、俺に向き直った



「ん?ああ」


「なら、ちっと気をつけた方がいい。あそこに行く唯一の開拓道には "忌み子" の盗賊がでるんだ。最近はあまり見かけないから大丈夫とは思うが……」


「いみご…?」



ルーリアは首を傾げて、聞き慣れない単語の意味を俺に問う


ルーリアの視線まで腰を下げ、耳打ちしてやる



「(ここでの神子の別称だ)」


「(ぁ……)」



ルーリアはすぐに口を(つぐ)み、フードをより深く被り直した



「これは聞いた話だが、奴等は忠告無しに力で無力化してから、身ぐるみ剥がされるんだってよ」


「………………」



無力化……どんな能力だ


………体を動かなくされたりしたら、(かな)わんぞ



「忠告助かる」



俺が立ち上がると、男は手を差し出していた


男の厚い手を握り返し、握手を交わす



「いいってことよ。俺はな、旅人には優しいんだぜ。あと子供にもな」



男が自信ありげに、自分の胸を高く叩いて言った



「あぁ、あと、この辺で宿は無いのか?」


「宿なら、南に五分ほど歩きゃ一軒あるぞ」


「わかった、そこにするよ。何から何まで悪いな」


「さっきも言ったろ?俺は旅人には優しいんだ」


「旅人じゃなかったら厳しいのか?」


「どうだろうな?」



酒屋のおっさんはわざとらしくそう言うと、高らかに笑った


笑い方がザーヴェスに酷似していて、少し昔のことを思い出してしまった


店主と別れ、教えてもらった通路に向けて足を向ける



「…………………………………」



五分ほど歩いただろうか



「………………あれか?」



『 宿屋 キルレンカ 』



そうシンプルに書かれた看板が、目に入る


宿屋の玄関をくぐると、優しそうな婆さんが部屋まで通してくれた


今夜は、明日に備えて早めに寝るとしよう











─────新暦1291年、1月15日





「ありがとな、スイ」


「いえ……私は何も」


「いや、助かった。俺たちの足じゃ、アルタジアまで数ヶ月かかっていたところだ」



スイは一晩寝て、能力も溜まったということで、一人でセルフォリアまで帰ることとなった



「ほらルーリア、何か言うことがあるだろ?」


「…………ぁ、ありがとう、ございました」


「…………ぃ、いえ……」



ぎこちない会話


とても、年頃の女の子二人の会話と思えないような感じだった


でも、まぁいい


仲良くならずとも、ルーリアとスイが喧嘩さえしなければいい


そう思った



「はい、よく言えました」



ルーリアの頭を、わしゃわしゃと撫でてやる



「……ちょ、セルア……っ」



ルーリアは、俺の雑な撫で方に少し不満なようだが、おれは構わず続けた


すると、その様子を見ていたスイがくすくすと笑い始めた



「ん……?どうした、スイ。何かおかしかったか?」


「いえ。何だか、御二方は兄妹みたいで羨ましいなってちょっと妬いただけです」



スイはまたそう言うと、くすくすと笑い始めた



「……そ、そうですか?」



ルーリアは、少し照れ臭そうにスイにそう言った



「はい。では」



スイは笑顔で、セルフォリアまで消えていった



「……………………」


「俺ら、兄妹みたいだってよ」


「…………うるさいです」


「反抗期の妹を持つと大変だなー」


「本当にうるさいです!」


「ごめんごめん、悪かったって」



ルーリアは強い口調でプイッとそっぽを向いたが、その直前の顔が笑顔であったことは俺にはバレバレだった











俺たち二人は宿屋を出た


先程までとは違い、辺りはもう殺風景だ


店や家は無く、辺りには自然だけが広がっている


地形は、ちょっとした崖に左右に挟まれ、道幅が少し狭く感じる


それに……



「……………………………」



……さっきから、誰かに見られている。複数人だ



「………………………」



少なくとも、軍人や殺し屋ではない


"ど素人" という訳では無いが、一人前よりはどことなく詰めが甘いような視線を感じる



「……………………」



誰だ?



「……………………………………」




─────すると、唐突に視界が暗転した




「………!?」



なんだ!?



「…………………」



……何も見えない


暗い所にいるイメージではない……


完全に光が無いのだ


"漆黒" という単語が脳裏に過ぎる


それほどまでに見える世界は黒く、一切の光さえ目の中に届かない


"暗い" と言うより、"視覚を失った" ような……



「セ、セルア…!急に目が…っ」



………ルーリアまで…?


俺だけでは無いのか?



「…………………………」



いる、確実に



「………そこにいるのか?」



情報を探るように、呟いた


こんなことが可能なのは、神子しかいない


確実にいる、神子が


例の神子の盗賊だろう


……何処だ


俺だけではなく、ルーリアにまで能力の影響を受けている


特定の人物に対するものではなく、広範囲に影響を及ぼす能力、か


どの程度の範囲、端の方だと受ける影響が少ないか、など気になることはたくさんあるが、とりあえずは後回しだ


……まずは相手の場所を探らなくては



「そこの男、武器を捨てて手を上げろ」



少年の声


声がしたのは、十二時の方向



「お前だ、早くしろ」


「……………………」



距離はさほど遠くない


ざっと十メートルってとこか



「………分かった」



腰に装備している、コンバットナイフに手を伸ばす


俺はナイフを静かに地面に置くと、両手を天に向けて上げた


どうする、目が見えないのなら太刀打ちはできない


ルーリアも同じ状況だ


頼ることは叶わない


何か、この窮地を打開する方法はないか?



「カルマ、もういい。収めて」


「………………?」



「(少女の声……?)」



近い場所から少女の声がした


声は幼い少女そのものだが、話し方は気品に満ちているように感じる


誰だ…?


神子の仲間か?



「分かったよ」



そう言う少年の声と共に、不意に視界に光が差し込む



「………っ」



急に視界が戻ったせいで、やや目が眩む


戻った直後は視界がぼんやりとしていたが、数秒経つと元の視力にまで回復する


声がした方向に顔を向けると、そこには……


挿絵(By みてみん)


「………魔女」



一目で、ルークが言っていた "魔女" だと分かった


魔女帽子(エナン)を被り、ローブを羽織った神子の少女が、そこに立っていたからだ


手には、流木のような杖を持っている


魔女は両目を瞑り、口元に手を当てる仕草をしていた


歳は、ルーリアと同じか、一個上くらいか?


いやそれより、酒屋の店主から聞いた神子の盗賊と、魔女はグルだったのか……?



「……?私のこと知ってるの?」


「あぁ。ずっとお前を捜していた」



少女は目を開けずに、微笑んだ


魔女は、さっきから目を開けようとしない


目が不自由なのだろうか



「奇遇なの。私も貴方を探してた」



…………?


神子であるルーリアじゃなく、俺をか……?



「……俺を?」


「ん、貴方。貴方にずっと聞きたいことがあったの」



魔女は一歩、二歩と俺に歩み寄り、目の前で止まる


両目を瞑ったままぐいっと身を乗り出し、俺に顔を近づけてこう言った






「─────貴方、何で神子なのに呪いが効いてないの?」






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