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霊玉守護者顛末奇譚 番外編  作者: ももんがー
中学二年生 春
3/16

新たなる問題

拙作《『霊力なし』『役立たず』と一族でうとまれていた僕が親友と奥さんを得て幸せになるまでの話》の最終話として書いたお話です。

あちらはあそこで切ったほうがいいかなーと思い、このお話は番外編に持ってきました。

 僕は安倍(あべ) 晴臣(はるおみ)

 ここ京都で弁護士をしている、ごく普通の男だ。



 我が家は、普通とは少しちがう。


 僕と妻の明子(あきこ)さんと息子のハルの安倍家。

 僕の親友のタカと妻の千明(ちあき)さんと息子のヒロの目黒家。


 正確には二家族となるのだろうが、僕達にとってはまとめてひとつの家族だ。



 大学時代からの親友で一緒に暮らしていた僕とタカ。

 従姉妹(いとこ)同士で幼稚園から同じ学校の明子さんと千明さん。

 二人と二人が一緒に出会い、四人で共に過ごし、結婚して四人家族になった。

 そこにそれぞれの息子が加わり、六人家族になった。

 

 対外的にはハルを「僕の息子」、ヒロを「タカの息子」と言っているが、僕はヒロも僕の息子だと思っているし、タカもハルを自分の息子だと思っている。




 そんな我が家には、深刻な問題があった。



 息子のヒロの、余命宣告。

 十四歳まで生きられない。



 最初に聞いたときは、目の前が真っ白になった。

 そのへんの人が言ったなら「何をバカな」と一笑に付したに違いない。

 だが、それを口にしたのは、僕の父だった。


 京都ではその名を知らぬ者のない、霊能力者集団・安倍家の当主である父の『先見(さきみ)』だった。


 そしてそれを裏付けるように、ハルが否定をしなかった。


 ハルは伝説の大陰明師・安倍晴明(あべのせいめい)だ。

 僕の息子として、前世の記憶を持ったまま生まれ変わってきた。


『霊力なし』の僕にはわからないが、ハルには色々なことができる。らしい。


 そのハルが、ヒロの余命宣告を否定しない。

 つまりは、そういうことだ。


 かわりにハルが話してくれた事実。

 ヒロは『霊玉守護者(たまもり)』という存在だということ。


 考えられる可能性を次々にハルが挙げていく。

 事故。

 病気。

 霊力の暴走。

『悪しきモノ』の襲撃。

『霊玉』を奪おうとする襲撃者。

 封じている『(まが)』の結界の影響。


 話を聞いているだけでは、『霊力なし』の僕には漫画か映画の話にしか聞こえない。

 でも、大真面目なハルの様子から、それが起こりうる事実だとイヤでもつきつけられる。



「――どうしたらいい?」


 初めて聞くタカの声だった。

 地の底から響くような、覚悟と決意のこもった声だった。


「どうしたら、ヒロは死ななくてすむ?

 何をしたら、ヒロを助けられる?」



 血走った目を向けられてもハルは動じない。

 ただ冷静に、可能性と、考えられる対処法を挙げていった。




 それが、十ニ年前のこと。

 ハルとヒロは、まだ二歳だった。




 それからの僕達は必死だった。

 少しでもヒロの助けになるように。

 少しでもヒロの力になるように。


 ヒロ自身も修行に励んだ。

 その内容をちらりと聞いたときには、あまりの過酷さに「やめさせろ」と喉元まで出かかった。

 ハルも同じ修行をしていると聞き、タカと二人体を鍛えはじめた。


 なっちゃんのおかあさんが亡くなった時のヒロの荒れようはすさまじかった。

『霊力なし』の僕しかヒロの側によれなかった。

 苦しむヒロを抱きしめられなかった。

 初めて『霊力なし』でよかったと思った。


 ハルは首座様として安倍家に君臨し、僕も安倍家に関わることになった。

 嫌だのなんだの言ってられなかった。

 ヒロのために、どんな力でもつけるに越したことはなかった。


 明子さんも千明さんも、仕事先などから色々な情報を拾ってくる。

 女性の情報網は素晴らしく、それを僕達が活用していった。

 


 そうして迎えた、予言の日。


 ヒロは、死ななかった。

『先見』をくつがえした。




「ヒロにもう死相はみえない」

「『先見』はくつがえされた」


 ハルからそう聞かされた時、どれだけうれしかったことか。

 晃くん、佑輝くん、トモくんをそれぞれの家に送り届け帰宅し、ハル、ヒロ、なっちゃんが寝たあとで、僕達四人で祝杯をあげた。


 うれしくてうれしくて、四人で泣いた。




 あの戦いから二週間。


 ハルとヒロは無事十四歳になった。


 昨日はヒロと一緒に戦ってくれた『霊玉守護者(たまもり)』の四人を招いて誕生日会をした。

 僕とタカが引率して、男ばかり八人でお高い鉄板焼の店に行ってたらふく食べてきた。

 六ケタの請求額なんて、ヒロが助かったことを思えば安いものだ。

 七ケタだって支払うぞ!




 そして今日は家族での誕生日会だ。

 朝から明子さんが張り切って料理を作っている。


 仕事を終え帰宅した僕に遅れ、タカと千明さんが帰ってきた。


 千明さんが子供達に会うのは、吉野から帰ってきた二人を出迎えた日以来だ。



 千明さんと明子さんとタカの三人は、タカが大学を卒業してすぐに起業した会社で働いている。

 山にある素材やフラワーアレンジメントの制作、販売をする会社だ。

 社長の千明さんを中心に、明子さんとタカが両脇を固める形で運営している。


 明子さんとタカを今回の騒動に取られ、千明さんは一人で仕事と社員への指示に奮闘していた。

 しかし両腕をもがれたも同然の状態ではさすがの千明さんでも無理がある。

 それを予測して大半の仕事を後回しにしていたので、ここ二週間はそれらを処理するので大忙しになった。

 会社の二階にある本来の自宅での生活を余儀なくされていたので、こちらには顔を出せていなかったのだ。




「遅くなってゴメンねー」

「ヒロ、ハル。お誕生日おめでとう!」


 二人に交互に抱きしめられて、さすがのヒロも今日はうれしそうだった。

 いつもはタカに抱きしめられたら「構うな!」と邪険にするのに。


 タカと千明さんはハルも抱きしめる。

 ハルも大人しく抱かれていたが、千明さんに抱かれた時に変な顔をした。


 何かに気付いたようだ。


 んんん? という顔をして千明さんをしばらくみていたが、その顔が驚愕に染まる。


 そしてハルはタカを見る。

「ん? どした? ハル」


 ハルはあきれたような、喜びを隠すような、軽蔑するような複雑な顔でタカをじーっと見たあと、深ぁーくため息をついた。



「ちー」

「何?」


 タカを放置し、千明さんに声をかけるハル。


「しばらく(かかと)の高い靴禁止。

 高所作業も、重いもの持つのも禁止。

 長時間の運転も、長距離の出張も禁止」


「なっ…! 何よいきなり!

 禁止禁止って、ふざけてるの?!」



 千明さんに対して頭ごなしに言うこと、命令すること、強要することは地雷だ。

 それを知らないハルではないのに、どうしたのだろうと首をかしげる。



 ハルは怒る千明さんに動ずることなく、淡々と説いて聞かせる。


「ちーはもう三十七だろう。十分高齢出産だ。

 ちーには念には念を入れるくらいでちょうどいい。

 おまけに二人もいるんだ。

 何がおこるかわからないだろう。

 日常生活は普通でいいが、気をつけるところは気をつけろ」




「「「…………は?」」」



「ハルちゃん。もしかして…」


「いるな。二人。

 ヒロの弟か妹だ」



「――えええええぇぇーーー!!」



 ヒロが喜んでいいのか父を軽蔑していいのかわからないといった複雑な顔をしている。

 そしてタカはそのヒロの視線の意味を、珍しく正確に受け取った。


「いや、その。

 ヒロが助かったってわかって、オレ達二人共うれしくって、その、あの、ちょっと、盛り上がって。その、まさか」


 お前思春期の息子の前で余計なこと言うな。


「おめでとうちぃちゃん!」

「――え? え?」


 喜ぶ明子さん。

 千明さんはまだ理解できていないらしい。


「検査キット買ってくる!!」

 まだドラッグストアは開いている!

 大急ぎで往復した。



 結果は陽性。

 大騒ぎになった。



 明日にでも産院に行こうとするタカを「まだ早すぎる!」と明子さんが止め、「どうしよう何したらいいの?!」と珍しくオロオロするヒロをハルがなだめ、呆然と立ちすくむ千明さんを僕が世話を焼いた。




 我が家に、新しい問題が立ち上がった。

 だが、こんなおめでたい問題なら大歓迎だ。

《『霊力なし』『役立たず』と一族でうとまれていた僕が親友と奥さんを得て幸せになるまでの話》

ハルとヒロの父母の出会いのお話です。

よかったらこちらも読んでやってください。

晴臣がまだヘタレ男子の頃のお話です。


《とある弁護士のつぶやき》

霊玉守護者顛末奇譚の晴臣サイドのお話です。

五歳のヒロの暴走や、霊玉守護者達が修行していた裏で晴臣が何をしていたかを書いています。


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