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【預言者の歌】をヘッドフォンで聞いてみてください!

 狭い四畳半を御祖母と半々で使っていた私です。

 私のスペースは二畳ちょっとだけでした。そこに物置と化した勉強机とモジュラーステレオを置くことになったのです。

 あ、御祖母のスぺースには、裕福とは言い難い我が家には似合わないほど立派な御仏壇がありましたので、狭い四畳半にモジュラーステレオと勉強机と御仏壇が共存するという不思議な部屋となったのです。


 さて、思いがけずにステレオが手に入った私でしたので、その晩、せっかくなんだからレコードを買わなきゃと小遣いをかき集めたのですが、全然足りなかったのを覚えています。

 当時、レコードは一枚2500円ぐらいだったでしょうか。【ライブ・キラーズ】のような二枚組のレコードとなるとその倍ぐらいの値段だったと思います。

 中学一年生にとってはなかなか高額で、月に3000円の小遣いだった私には容易に買える金額ではありませんでした。


 とはいえ、世の中には裏というか、色々と道はあるようでして……


「ヨツシー、知っとるか?名駅の名鉄百貨店のレコード売り場に行くと、レコードが安く売っとるんだわ」

「なんで?なんで安く売っとんの?中古屋さんなんか?」

「ちゃうちゃう。新品だて。いとこに聴いたことがあるの思い出したんだけどよ、洋楽のレコードだけ安く売っとるんだて。一緒に行かへん」

「行くて。行くに決まっとるがや」


 同じ【QUEEN】ファンのヤスからそんな情報を得た私は、次の日曜日にきっそく名駅へヤスと共に向かったのでした。

 あ、当時は週休二日とかではなく、土曜日は半日休みでで日曜日が一日休みでしたよね。だから名駅や栄にいくのはいつも日曜日で、バス代がもったいないので自転車で一時間程かけて行っていました。


 中学生らしいですね。


 このときはクリスマス時期ということもあり、街がにぎやかで、中学生ながらもカップルが多いなんて思いながら名鉄百貨店の7階だか8階だかへ行った覚えがあります。


 で、レコード店に着き、洋楽のコーナーを見てみたものの……


「ヤス、どこが安いんだて。普通に2500円もするがや」

「あれ、おっかしいなあ」


 と、直ぐには見つからなかったのです。

 まあ、普通に考えて洋楽のレコードだけが安く売っているなんてありえないのですけど、ちょっと探すと本当に安く売っていたのです。


「ヨッシー。あったわ。ここ、ここだて」

「うわっ、本当だがや。なんだてこれ、2000円せんがや」


 そこは輸入盤のコーナーでした。

 当時、洋楽には輸入盤といわれるものがあり、その名の通り直輸入されたレコードが安く売っていたのです。

 値段の安さに中古なのか?傷があるのか?音が悪いのか?と不思議に思いアルバイトらしい店員さんに聞いてみたのですが、


「傷も無いし、中古でもないって。なんだろうな、為替レートの関係かもな。理由は良く知らんけど得だと思うぞ。音が悪いって噂もあるけど、聞き比べても分からんし。あ、直輸入だでライナーノーツは入っとらんぞ」

 

 との返事が返ってきました。

 特に問題がないならばということで輸入盤を買うことにした私たちでした。


 さて、では【QUEEN】のどのアルバムを何を買うのかが悩むところでした。

 この時すでに8枚のアルバムが出ていることを知っていました。もちろん、8枚のうち【ライブキラーズ】と【ジャズ】は持っていましたので、ならどれを買うかとなるのですが……


「なんだぁ、ヨッシー、【ライブ・キラーズ】買うんかて。違うのにしやぁいいがや」

「でもよ、ほら、このアルバムの写真、見てるとクイーンのコンサートってこんな感じなんかって思うしよ。それによ、最初に聞いたクイーンのアルバムだで、なんかちゃんとレコードを持ってたいんだがや。あと、テープだとだんだん音が悪なってくでかんしな」

「まあ、分からんでもないけどよ」


 当時はもちろんYouTubeなどなく、【QUEEN】の動画なんか見る機会はありませんでした。ので、【ライブ・キラーズ】のアルバムジャケットに収められた、ライブの写真が演奏している【QUEEN】を想像出来たのです。


「で、ヤスは何買うんだて。お前も【ジャズ】買うか」

「いや、俺はちゃうな。違う【QUEEN】も聞きたいしよ。ほら、【ボヘミアンラプソディ】って曲あるだろ。あの曲の入っているアルバムを買おうかなって思っとるんだわ」

「【オペラ座の夜】かて」

 

 この時、最初に【QUEEN】を知ってから三カ月ほど経過していました。

 FMラジオのエアチェックに余念のなかった私たちは【ライブ・キラーズ】や【ジャズ】の収録曲以外のクイーンの曲も少しずつ知るようになっていました。

 といっても【QUEEN】の代表曲と言われる【ボヘミアンラプソディ】のスタジオ盤は聴いたことが無かったのです。【ライブ・キラーズ】に収録されているので、知らない曲はでありませんでしたけど、やはり代表曲だというのならオリジナルバージョンを聞いてみたいとは、私もヤスも思っていたのです。それに【オペラ座の夜】も評判の良いアルバムでしたしね。


「ああ。ほら、【オペラ座の夜】ってミュージックライフなんか読んでも評判良いアルバムだしな」

「おう、買ったら録音させてくれて」

「ああ。で、ヨッシーの【ライブ・キラーズ】も録音させてくれよな。俺のはヨッシーのテープをダビングしたやつだでな」

「ああ」


 その日はレコードを自転車の前かごに乗せ、急いでヤスの家に行きました。


 ヤスの家は平屋の一軒家です。ヤスは自分の部屋も持っていましたけど、金持ちという印象はありませんでした。

 ただ、ヤスの母上殿はなんというか、非常に厳しい人だったようで【ロック】=【不良】だと信じ切っているような人でした。だから、ヤスの家に遊びに行ってもボリュームはいつ絞っていました。

 

 で、まずは【オペラ座の夜】と聴こうとなり……


 いやぁ、驚きました。

 スタジオ版の【ボヘミアンラプソディ】のフレディの声の綺麗さ。なんですか、あのコーラスは。

 そして【ラブ・オブ・マイ・ライフ】ロックバンドというカテゴリーにクイーンが入っていることが不思議になってきました。綺麗なんです、そのコーラスもファルセットの歌声も。

 でも、私が【オペラ座の夜】の中で一番衝撃を受けたのは【預言者の歌】でした。

 コーラスの部分が少ししつこいと思えますが、それでも曲に物語があるというか、あの叫ぶようなフレディの声が……

 

 二人で聴き入っていると、夕食の時間になったようでした。

 ヤスの御母堂はいつも夕食を食べていくかと聞いてくるのですが、このときは珍しくも親父殿が現れ、


「ヨツシー君、君、うちのヤスと一緒にアルバイトをしてみないか?」


 と、言い出したのです。


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