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【ドント・ストップ・ミー・ナウ】もう止まりません


 エニ君の家と違い、我が家は裕福とは言い難く、市営住宅に祖母、両親、姉上と私の五人で住んでいました。

 三部屋とキッチンしかない市営住宅です。居間件両親の寝室で一部屋、年ごろの女性になった姉上が一部屋、そして私と御祖母が二人で一部屋を使っていました。

 四畳半に御祖母と中学一年の私です。色々な面で不都合もありましたけど、それでもまぁ、そんな家庭環境は私だけではなかったし、耐えれないほどの不満というわけではありませんでした。

 ただ、裕福ではないとの自覚はありましたので、物をねだった覚えはあまりありませんでした。 


 のですけど……


 さすがにエニ君に【ライブ・キラーズ】を聴かせてもい衝撃を受けたその日は、夕食の席で親父殿に、


「レコードが欲しい。ほんで、レコードを聴くためのステレオも欲しい」


 と、いきなり我が家には無理を言ったのは覚えています。


「なに言っとんだ。ほんなもんどこ置くんだ」

「モジュラーステレオってのがあるで、それだと小さいし、それが欲しい」

「おまえ、歌聴くんか?なんだ、山口百恵ちゃんかて?」

「ちゃう。ロックだわ」

「なんだロックって。英語で歌うあれか」

「あれってどれだて」

「おっきい音のやつだろう」

「ま、まあ、そうだけど」


【ロック】=【不良】という方程式があった時代でしたが、我が親父殿は音楽には興味が全くなく、ロックというのは大きい音の音楽という認識しかないようで、そのためかロックに対する偏見さえもありませんでした。

 反対に御袋殿は詩吟やら民謡やらが好きで、友人らと集まって歌っていたぐらいでしたけど、それでも歌謡曲やらロックなんてものにも興味がなく、


「ロックってこぶしがあらへんでいかんがね」


 と、そんなことを言っていました。

 そして姉上はといえば、


「ふん、バッカじゃないの?なにぃ、ロックって。うるさくしんといてよ」


 と、年齢も6才も離れていてそこまで仲の良くない姉弟でしたので、まぁ、そんな感じで小バカにされていました。

 同じ屋を共有していた御祖母にいたっては、


「ヨッシーちゃん、頑張りゃぁせよ」


 と、私と共用で使う狭い四畳半に、ステレオを置きたいという意味が分かってない様子でした。


 なんにしてもです。

 音楽の興味のない親父殿でしたから、そんな私の要望が簡単に通るわけもなく、その日はそれで話が終わってしまいました。


 それから……

 【QUEEN】を知ってから洋楽全般、ことロックというカテゴリーの音楽に対して興味が沸いた私は、FMラジオのエアチェックに事欠かさなくなり、また、ユニ君のお兄さんのレコードコレクションをカセットテープに録音してもらったりをしていました。


 既に解散をしていた【ディープ・パープル】とそのメンバーがそれぞれ作った【レインボー】【ホワイトスネイク】。【スコーピオンズ】から【マイケル・シェンカ一・グループ】【UFO】。【レッド・ツェッペリン】に【ロッド・スチュアート】。【スティクス】や【REOスピードワゴン】。【ジャーニー】と【フォリナー】【TOTO】……などなど。


 音楽情報に関してはミュージックライフという雑誌を始め、それらしい雑誌を本屋で立ち読みをしで情報を得ました。

 そこで初めて、【QUEEN】というバンドが日本で絶大な人気を得ていて、また、既に7枚のアルバムを発表していたと知ったのです。


 今でも【レインボー】や【パープル】は好きです。【マイケル・シェンカー】だって良く聞きます。

 けど、その幅広い音楽性というか、ハードロックもあれば極上のバラードもあり、ゴスペルもあればカントリーもある、その無節操さというか……飽きのこないその音楽、アルバム一枚に良くもこれだけ詰め込んだと……とにかく、【QUEEN】が一番のお気に入りになりました。

 

 クイーンを褒めようと思えばどれだけでも褒めれますから、とりあえずは話を戻しましょう。


 音楽といえばアニメの主題歌か流行曲ぐらいしか関心の無かった私でしたけど、ロックを中心とした洋楽に興味が沸いてくると、自分の周りにもロック少年が少なからずいたこと気が付きました。


 それぞれにお気に入りのバンドがあったようで、【レッド・ツェッペリン】派のカンちゃん、【ジャーニー】好きのミー君、【ローリング・ストーンズ】好きのサーシー君、【ビートルズ】好きの立松(当時でいうスケ番)、そして小学校からの友人の一人、ヤス(仮名)も【QUEEN】が好きだと判明したのです。


「なんだあ、ヤスも【QUEEN】好きだったんか」

「おうだて。ヨツシーもかて」

「なんかLP持っとんの」

「いや、最新の【ジャズ】だけだがや。つても、親戚に録音してもらったテープだけどよ」

「おう、俺【ライブ・キラーズ】持っとんだけど、俺もエニ君のお兄さんに録音してまったテープだがや」

 

 ってことで交換して貸し合ったのを覚えています。


 ステレオこそなかった我が家でしたけど、ラジカセなるものが姉上用と私用で二台ありました。なので、テープを貸してもらうとその二台のラジカセをコードでつないでダビングをしたものです。

 デジタルのコピーではなくアナログのコピーですから、ダビングしたテープを借り、それをまたダビングしてと繰り返すと、どんどんと音の劣化をしていくのでした。デジタルの今では考えられない面倒くささがありましたが、それで著作権が守られていたのでしょう。


 ヤスから借りたテープもダビングして聴きまくりました。

 ライブ・キラーズとは違ったスピード感のある【ドント・ストップ・ミー・ナウ】迫力のあるギターで始まる【ファット・ボトムド・ガールズ】など、聞きどころが一杯のアルバムでした。


 この頃は【QUEEN】を主として、音楽にはまり切った時期でした。サッカー部が終わって帰るとテレビも見ずにラジオとテープを聴くことに夢中だった時代でした。


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