表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/22

【ホット・スペース】ツアーに参戦だがや


 高校一年の夏休みはと言いますと、バイトもせずに家でゴロゴロして、ふと気がつくと8月の10日が過ぎていて「ああ、もう半分おわってまった」と嘆いてみたり、それじゃダメだと、ヤスやエニ君、サト子と会ったりもしたけど、だから何かが起きたわけでもなく、まディスコにもう一回皆で行ったぐらいが夏のイベントで、結局は気がついたら終わってしまったと、そんな気がするのです。

 そのゴロゴロと怠惰な生活は夏休みを過ぎても続いたため、親父殿に度叱られた記憶があります。でもそんな時間の無駄使いが青春というやつだったりもするのかと、今になってそう思うのです。


 が、しかしです!


 そんな怠惰な私を吹き飛ばす大事件がやってくるのです。


 1982年の秋といえば……

 そうです。【QUEEN】の来日です。【ホット・スペース】に伴うツアーがその年の春から始まったとは、風の便りに聞いていました。もしかして来日するかもと、ラジオのDJが興奮気味に言っていたのを覚えています。

 でもそのラジオ番組では「【ホット・スペース】の売り上げ枚数が少ないので、集客が期待出来ないので来日はないかも知れない。フアンの皆さんはもちろんですが、ファンじゃない人も必すず買いましょう」などと言っていたのです。

 【ホット・スペース】というアルバムの特殊性を知っていた私は、前作に比べて売り上げが増えるってことはないので来日はないのかもと、そうあきらめていたのですが.....



「ヤス!新聞見たか!【QUEEN】が来日するぞ」

「おう、見たて。 10月26日、名古屋公演もちゃんとありだがや」

「前は東京だけだったでな」


最初に【QUEEN】の来日を知ったのは新聞の広告でした。もちろん、新聞なんて読む習慣の無かった高校生でしたから、自分で見つけたわけではありません。なんと、我が姉貴殿が教えてくれたのです。

 いつもは私のことをバカにして「ロックなんて最低」って顔をしていた姉貴殿でしたけど、【QUEEN】の来日が新聞に載っていることを「これ、あんたの好きなグループでしょう」って感じで教えてくれたのです。

 ツンデレというやつだったのでしょうね。


「でもよ、コンサート会場が国際展示場ってあるけど、そこどこだて」

「知らんて。市公会堂か勤労会館とちゃうんかて」

「名古屋市内にあるんだろうな」

「だと思うけどよ」


 当時は鶴舞公園にある市公会堂か勤労会館、または金山の市民会館で国の内外問わず多くのタレントがコンサートを行っていました。中学の時にサト子の親父殿に連れて行ってもらった【AC/DC】も勤労会館でした。よほどビックな外タレともなると愛知県体育館なんかでもコンサートを開いていました。名古屋ではスタジアム級のライブなんてまだなかった時代です。

 新聞にはコンサート会場として国際展示場と記載してありました。高校生の私とヤスには、その名称を初めて聞きましたから、場所も行き方も分かりません。公共交通機関で行けるのかさえも分かりませんでしたけど、既に行く気満々でした。

 

「名古屋公演ってなっとるんだで、名古屋市内にあるに決まっとるて。市内ならどうにかなるわ。それより、どうやったらチケット買えるんだって、郵送ってなんだて」

「現金書留でお金を送るとチケットが送られてくるらしいけど、それ、抽選ってことかて?それとも早い者勝ちかて?」

「早い者勝ちなら早よお金送った方が良いわな」

「でも抽選に外れたらどうなんるんだて?」

「だわな。どうなるんだろう?席もどうなるか分っからへんしな」

「なんか、いつものプレイガイドで買う方法が簡単で良いんだけどな」


 国際展示場の場所もそうでしたけど、大きな問題はチケットの買い方でした。 当時は発売日に指定番号に繋がるまで電話をかけ続けるか、それともプレイガイドで席次表を見ながらチケットを買うか、そんな時代でした。

 なのにこの時は違ったのです。現金書留でチケットを買ったのはこの時が最初で最後です。 

 今思うとS席とA席で別れていたのか、それとも全部一緒だったのか。それさえも覚えてはいません。


「早い者勝ちで、良い席が先に売れるのかも知れんな。とにかく早よ送ろまいて」

「ああ、ってもお金がないぞ」

「親に借りるしかないな」


 当時のチケット代は1万円ぐらいだったのでしょうか?ヤスも私も蔓延金欠病でしたので、なんとか親に頼み込んで、早々に現金書留で送ったのでした。

 ただ送ってみたものの、心配でもあり……


「これ、本当にチケット来るんかな」

「本当にって、どういうことだて」

「いや、お金だけ送って、で、チケットが送って来られんかったらどうしようかしゃんて、そうもうんだがや」

「送ってこんってことはないんちゃうかて」

「送るのが遅くて売り切れだったら?」

「でもお金は戻ってくるんちゃうか?」

「だわな」

「っても心配だわな」

「おお」


 今思うと随分と変わった購入方法だと思います。けど、私たちの不安は外れて、ちゃんとチケットは自宅に送られて来ました。現金書留で郵送した人は全員がチケットを購入出来たのでしょうか?現金書留を送ったけど購入できなかったとか、そんな人がいるのでしょうか?

 なんにしてもです。とにかく私たちは無事にチケットを手にすることが出来たのです。


 おまけに……


「ヨッシー、来たて、チケット。それも前から13列目だて。ステージに近いんちゃうかて」

「本当かて。13列目って、すごいがや」


 なんと13列目の席のチケットが送られてきたのです。

 座席表なんてないので、それが右の方か左の方か、そんなことは分かりませんでしたけど、とにかくアホみたいひ大喜びをしたのです。


 生の【QUEEN】が見れると思うと、それはもう嬉しくて嬉しくて。雑誌やテレビでは平面でしたらか、三次元の【QUEEN】が見れると思うと……


 当時を思い出しただけでも嬉しくなっちゃいます。

  続はまた次回に......


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ