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21/22

ダンスミュージックに傾倒したアルバムでしたけど、ディスコには合わなかったようでした。

ディスコの続きです。


 8 0年代のディスコは9 0年代と違い、お立ち台の上でボディコンシャスな服を着たワンレングスヘアーの女性がなぜか扇子を持って踊り狂い、緩めのダブルののスーツを着た男性が外車とセカンドバックに入れ たキャッシュカードを武器にお立ち台の女性を誘い、流行の最先端でもあるディスコへ行かないような輩は流行おくれのダサい野郎で.....という状況とは違い、子供っぽいというかなんというか、仲間内が集まって、踊って食べて楽しんでいった、もっとふんわりとした雰囲気だったのではないでしょうか。


 名古屋にはいくつもディスコがあり、それぞれの店によって客層が違っていて【ニューヨーク】は高校生ぐらいが多く、【ペンワン】や【ペンツー】はもうちょっと大人っぽく【OZ】はニューウェ ーヴな感じで、 【ガルボクラブ】はお洒落なバーのようで……だったらしいです。

 あ、これは全て後日サト子から聞いた情報で、当時の私はそんなことを考える余裕もなく、初めてのディスコに緊張し……


 ディスコ初心者でもある私たちは、高校生が多くいるという【ニューヨーク】というお店に行くことになりました。

 そこは栄街の女子大と言われる繁華街の地下にあるお店でした。

 暗くて細い階段を下りていくと重低音が響き渡っていて、入り口へたどり着く前から足が゙すくんだのを覚えています。


「サト子ぉ、なんか凄い音が聞こえてくるけど」

「なにをビビっとるの。ここはディスコだで、中に入ればもっと大きな音がするでね。ほら、早よ降りて行きゃあ」

「お、おう」


 サト子に急かされ階段を降り、重たい店のドアを開けた私は、その光景に圧倒されました。

 会話が出来ないほどの大音量で音楽流れ、ダンスフロアではミラーボールが回り、カラフルなラ イトで照らされた男女が踊り......


「これがディスコか......」

「ほら、何をぼうっとしとんの。早よ席に座るよ。あんたらお腹減っとるんでしょう。まず゙は食べよかね」


 サト子に耳元で大声に言われ、なんとか我に返った私は、サト子に言われるがままに動きました。


 店員に案内され席に着き、食べ放題の焼きそばやサンドイッチを皿にとったものの、居心地の悪さで喉を通らず、大音量の音楽に負けて口を開くことも出来ず、ただ単に置物ように座っているしか出来ませんでした。

 でもそれは私だけじゃなく、エニ君もヤスもカンタロウも一緒で、皿に食料をとってみたものの、サト子以外は手も伸ばさなかったのです。


「あんたら、何を緊張しとるの」

「当たり前だがや。緊張もするて」

「しょうがないわね」


 サト子はそういうと皆にウイスキーを勧めてきたのです。


「あんたら、緊張しすぎ。お酒飲んでちょっとリラックスしやあ」


 それまでにお酒を飲んだことがるかと聞かれれば、ありますと答えます。

 親父殿が゙面白半分に私に勧めるので、たまに飲まされることがあったのです。ヤスやエニ君、カ ンタロウの家ではどうだったか分かりませんが、まあ、そんな時代だったいうことで許してください。


 サト子の勧めで飲んだアルコールが回ったせいかちょっとは落ち着き、流れてくる曲に耳を傾けることもでき始め、そして調子にも乗ってきました。


 流れてくる全ての曲の題名まで思い出せませんが、確かにラジオやテレビで゙流れてくる曲が多く、【QUEEN】の【愛という名の欲望】が何度も流れたのは嬉しくもありました。


「じゃあ、そろそろ踊ろうよ」

「おう、踊ろまいて」


 一番調子に乗ったエニ君が、サト子に誘われてダンスフロアに行きました。


 決まった踊りなんかはなく、リズムに合わせて揺れているだけのように見えても、サト子とユニ君には差がありました。なんとなくエニ君はぎこちないのです。ですが当のエニ君はそんなことをお構いなしで楽しそうでしたし、周りの人たちもそれを気にしている人はいませんでした。


「ヨッシー、俺たちも行くか」

「って、い、行くか。な、カンタロウも行くか」

「い、行こうか」


 初めてのディスコて踊ってやりましたよ。

 わけも分からすず体を動かし、サト子に笑われたりもしましたが、それでも楽しかったことは確かです。

 踊って踊って、疲れると席に戻ってジュースで薄めたお酒を飲んで、お腹が減ると何にかを食べて、四人でそれぞれの高校の話をして、知った曲が流れるとその話題になって、チークタイムになると、なんだが照れたりもして、で、休憩が終わるとまた踊って...... ちょっと余裕が出てきたのか、周りを見渡すと確かに同年代が多い気もしました。色々なグループがあるようでしたが、それでもグループ同士も仲良く皆が笑顔でした。


「なんか、もっと怖いとこだと思っとったわ」

「私も最初はそうだった。先輩に連れてこられるまでは、ヨッシーたちと同じで怖いとことだと思っとった」

「良くディスコに来る気になったな」


 高校の先輩にディスコに誘われたサト子は、直ぐに両親に話をしたらしい。と、当時では考えれ ないようなハイカラなサト子の両親は、その昔の若かりし頃、二人してディスコ通いをしていたとのことで、反対どころか楽しんでおいでと送り出してくれたとのことでした。


 楽しかったとはいえ、それでも真面目な高校一年生だった私たちは、遅くならない程度の適当な時間で切り上げることにしました。

 夜の繁華街を友人らだけで歩くなんて、ものすごく大人になった気もしました。


 楽しい時間を過ごすことが出来ましたが、それでもどうしても気になることがありましたので、同じ【QUEEN】ファンのヤスにだけ耳打ちしました。


「なあヤス、【愛という名の欲望】は何回も流れたけど、【ホット・スペース】からは一曲も流れんかったな」

「確かにな」


【ホット・スペース】は日本のディスコに合わなかったのでしょう。








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