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20/22

ディスコです





 82年の思い出で一番と言われれば【ホット・スぺース】なのですが、高校一年生という多感な時期なので他にも色々と思い出があったりもします。

 で、今回は、久しぶりに会った中学の時の同級生が、見違えるように大人びてと、そんな話です。

 高校生ともなるとちょっとだけ背伸びして大人びた格好をしてみたり、それまで喫茶店なんて親と以外行ったこともなかったのに同級生同士で行くようになったりと、親に買ってきてもらっていた洋服を自分で買いに行くようになったりと、親と一緒に行動することが恥ずかしくなったりしますよね。

 それが大人の階段の第一歩というのかもしれません。好奇心ってやつでしょうか。

 その好奇心が湧き上がってくると、ちょっとだけ危険な感じのすることに興味をもったりもして……


 夏休み前でしたでしょうか、久しぶりにエニ君から電話がありました。もちろん、携帯なんてない時代ですので黒い家電です。

 高校に入ると【QUEEN】ファンのヤス以外とは会うこともなくなっていたので、エニ君からの急な電話に篤いたりもしました。

 けど、驚いたのは急だからってだけではなかったのです。.なんと、エニ君は私をディスコなる場所へと誘ってきたのです。

 当時の私にとってディスコなる場所は不良の溜まり場で、悪の巣窟というイメージが強く……


「ヨツシー、サト子からディスコに誘われたんだわ。お前も一緒に行こまいて」

「ディスコって、あのディスコかて。なんだて、エニ君はディスコなんて行くんかて」

「俺は行ったことあらへんて。こないだ、サト子から借りっぱなしにしとったLPを返しに行ったんだわ。ほしたらよ、なんかサト子がえらいお洒落になっとってよ、おまけにディスコへ行こまいって誘ってきたんだわ」

「あのサト子がお洒落になっとるんかて。まぁ、美容院の娘だでな」

「ああ。なんか大人っぽかったて。で、この頃は高校の先輩に誘われてディスコへ行っとるんだと」

「なんだて、年上の不良彼氏でもできたんかて」


 エニ君からその話を聞いた私は、なんだか大人っぽいサト子が年上の不良彼氏とい一緒にディスコにいて、そこへ私たちを誘って、上から目線で「あんたたち、まだまだ子供ね」なんて言っている様子を思い浮かべたのです。


「不良彼氏かどうかは知らんけど、サト子が言うディスコってところはお洒落で楽しいところらしいぞ」

「お洒落ってことはないんとちゃうか。ディスコって不良の巣窟だろうて。俺なんかには縁のないところって感じなんだけど」


 70年頃からディスコブームってのは続いていました。

 タバコの煙にウイスキーのボトル、不良少年らがソファに座って仲間とバイクの話に花を咲かせ、ダンスフロアでは髪を振り乱して男女が踊り、店の裏ではリンチやケンカが行われ、警察から逃げてきた不良が店に隠れていて……

 それが私の想像上のディスコなる場所でした。

 そんな場所へサト子が出入りするようになったと聞いた私は「サト子も不良になってしまった」という残念感もありましたけど、それ以上に「中学の時に一緒に遊んだサト子が私の知らない世界を先に経験してまった」「なんか勝手に大人になってまった」「ディスコなんて危ない世界をお洒落だなんて言いやがって」と、嫉妬のような感情が出てきました。


「いや、サト子が言うにはな、ディスコってところはそんなに危ないところとは違うらしいんだわ。バイキング形式で食事は食べ放題と飲み放題って言うし」

「飲み放題って、お酒を飲むってことかて。サト子、酒を飲むのか?」

「そこまでは知らんがや」


 子供っぽい感情でしたけど、サト子に負けた気がしました。


「で、ヨッシーはどうする?他にもヤスやカンタロウとかも誘えってサト子が言うんだけど」

「どうするって、そりゃあ皆が行くなら俺も行くけど。っても、俺、踊れえへんぞ。それにディスコミュージックっても、それこそ【QUEEN】の【ホット・スペース】ぐらいしか知らへんし......」

「ディスコミュージックって、そんなカテゴリーはあらへんらしいわ。流行りの曲ばっかりで、ヨツシーも知っとる曲しか流れんのだと。【べスト・ヒットUSA】で流れる曲がディスコで流れとるんだと。ほんだでそれ聞いとるだけで、踊らんでもいいんだと」

「そうか、別に踊らんでもいいのなら行こうかな」

「おう、行こまいて。このままじゃなんかサト子に負けとる気がするだろ」


 エニ君も私と同じような感情を持っていたようでした。子供ですね。


 結局、エニ君が皆に連絡をして、中学の時の仲間で揃ってディスコなる場所へ突撃することになったのです。

 ですがその前にと、私、エニ君、ヤス、カンタロウが久しぶりにサト子の家に集合となり……


「なにぃ、あんたら、まだ中学生みたいな格好しとるの」

 

 いきなり上から目線でそう言ったサト子は、それはそれは大人びていました。

 化粧をしていたのかどうかは分かりませんが、美容院の娘だけあって髪型が当時流行っていたアイドルを真似た感じだったし、服装も中学時代の野暮ったさは皆無で80年代に流行した、それこそ【デュラン・デュラン】の女性版ような格好だったのです。

 ジーンズにTシャツをインしていた私たちとは大違いでした。


「とりあえず、皆で服買いに行こうか」


 サト子に連れられる形で、私たちは栄街に出て地下街で服を買うことにしたのです。

 

「サト子、お前、なんか変わったな。お洒落になったっていうかよぉ」

「当たり前だがね。私たちはもう高校生なんだでね。それに私は女子だでね。お洒落ぐらいはするに決まっとるがね」


 見た目は中学の時とは大違いでしたが、それでも話口調などは中学の時のサト子とは変わっていませんでした。

 そんなサト子に私たちは順番に質問をしていったのです。


「お前、しょっちゅうディスコに行くんかて」

「そんなに行かへんわ。誘われたら行く感じ」

「やっぱ年上の不良の彼氏が出来たんかて」

「なにそれ、違うわ。友達に誘われたんだて」

「お前の親は知っとるんかて」

「当たり前だわ。女の子が親に黙って夜遊びはダメに決まっとるがね」

「真面目か不良になったのか、わからんやつだな」

「不良じゃないがね」


 サト子が言うには、高校で仲良くなったギター女子の先輩に誘われてディスコへ行くようになり、最初こそ私と同じように不良の巣窟のようなイメージがあったのですが、行ってみてその考えが180度変わったので、それを私たちと共用したいと思ったとのことだったようです。


 その日、自分や両親では選ばないような洋服をサト子に選んでもらった後、栄にあるお洒落な喫茶店、いや、当時流行っていたカフェバーというやつでしょうか、名前はなんだったんだろう?ビック・ウェンスデー?そんな名前の有名なところだったような、とにかくそのカフェバーで久しぶりに皆で音楽談義をしたのです。

 カフェバー……懐かしい響きですね。お洒落な喫茶店で、アルコールなんかもあって……また話がそれました。


 そして私たちは日を改めて、ディスコなる場所へ行くことになったのですが……

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