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【シアー・ハート・アタック】を起こしそうでした。

 1979年当時は【ロック】=【不良】という方程式がある時代でした。


 暴走族、長ラン、リーゼントと、不良は見た目が分かりやすく、また生息域も学校の屋上やゲームセンターなどと決まってましたので、私はそういった方面へは近寄らないようにしていました。

 今で言うイジメこそは無かったのですが、学校へは来ているのに授業に出ていなかったり、授業中に廊下で爆竹を鳴らしたり、バイクで校庭を走り回ったりと、不良と呼ばれる彼らは随分と無茶なことをしていました。


 小学校からの友人も数人が不良の仲間になっていたりもしましたが、私自身は不良というカテゴリーからは遠く離れたところいました。

 サッカー部に所属する一般的な中学生だったのです。

 音楽にもそんなにこだわりもなく【サザン・オール・スターズ】がロックなのかどうかも分らないと、そんな感じでした。


 で、エニ君はというと、私同様にロックを聞くなんてイメージはなく、不良とは縁のないサッカー少年でした。


「海外のロックって、どんなん?ってか、日本のロックとどっかちゃうの?」

「まぁ、聴いてみやぁて。海外のロックは迫力がちゃうんだて」


 聞くところによると、大学生のお兄さんはバンドを組んでギターを担当しており、その影響が大きかったようでした。


「ちょっと待っとってよ、色々と準備があるで」


 エニ君はそういうと、四角く薄いケースを持ってきました。


「何それ」

「だからぁ、ギターだて」

「そんな薄いケースに入っとんの?」

「エレキだでな」

「エレキ?」


 そう聞く私にニヤリと自慢げな顔をして、エニ君はケースからエレキギターを取り出しました。


 エレキギターというのを知らないわけではありませんでしたけど、それでもまさかエレキギターを同級生が、不良とは縁の無いエニ君が弾けるとは予想外だったので驚きました。

 

「そんなん弾けんの?」

「ああ。当たり前だて」


 そういうと、ギターとアンプをコードで繋ぎ、システムコンポのレコードプレーヤーにそっとレコードを乗せ演奏の準備を始めるました。

 そして準備が整ったのか、手首をポキポキとならし準部運動を始めたのです。


 エニ君も人前で演奏するのが初めてだったようで、それなりに緊張していたのかと思います。


「じゃあ、ちょっと聴いとってくれよな」


 エニ君はそう前置きをしてレコードを再生しました。


「!!!」


 衝撃でした。


 いえいえ、エニ君の演奏じゃありませんよ。

 イントロで聞こえてきた雷の音もそうでしたが、その次に流れてきた観客の歓声と迫力いっぱいのギターサウンドにです。


 音楽に合わせてギターを弾くエニ君は、正直どうでもよかったです。演奏の方もあまり上手ではなかったので、邪魔でした。

 エニ君、ごめんね。


 初めて聴く歪んだギターサウンド、お腹に響くドラムの音。そしてそして……歌声!

 そうです。フレディの声に参ってしまったのです。

(ジョンさんすみません。ベースの音はなんの印象も残っていません。いえ、その頃の私はベースギターという存在を知りませんでしたし)


 それまで英語の曲なんてCMなどでテレビから流れてくるのを、なんとなく聞いていたぐらいでした。なので、真剣に英語の歌を聴いたのはこの時が初めてでした。

 何を言っているのか分かりませんでしたけど、それでもその歌が、歌声が頭から離れなくなったのです。


 そうです。フレディの声がずっと頭に残ったのです。


 エニ君は自分が出来ることまで弾くと、演奏を止めるついでにレコードも止めようとしました。

 【ウィ・ウィル・ロック・ユー】のイントロとほんの少しを弾いただけで、勝手に自分で満足して、私のその続きを聞かせようとはしなかったのです。


「あ、なんだて、もっと聴かせろて」

「え、続きも聞くんかて?俺の演奏、終わったけど」

「ロックを聞かせてくれるって言っとただろ。最後までこのレコード聞かせてくれて」

「あ、ま、まあ、そうだったわな」


 エニ君は【QUEEN】を聴かせるより、自分の演奏を見てもらいたかったようでした。けど、イントロだけで心を掴まれた私としては、とにかく最後まで【ライブ・キラーズ】を聞きたかったのです。


 7枚目のアルバム【ジャズ】を発表した後のジャズ・ツアーを経て発表した【ライブ・キラーズ】。

 音を加工されている等の話があって、本当のライブではないと聞いた事もありますけど、そんなことは関係がありません。私が最初に触れた【QUEEN】です。

 1曲目の【ウィー・ウィル・ロック・ユー】で度肝を抜かれ、次の【レット・ミー・エンターテイン・ユー】でもう虜になりました。

 中学一年生の私には衝撃が強すぎました。ハードロックなんてのに触れたのは初めてです。

 当時のレコードは片面が23分ほどしか録音できず、普通のアルバムですとA面B面で合わせて50分もないぐらいでした。なのでライブアルバムですと二枚組が一般的で、【QUEEN】の【ライブ・キラーズ】も二枚組でした。

 

 その日は二枚組のレコードをそのまま一気に聴かせてもらいました。

 エニ君は私が真剣に聴いている横で、エレキギターがどうのこうの、ハードロックってのは、アメリカンハードロックとブリティッシュハードロックがあって、【QUEEN】はイギリスのバンドでとか、なんだかんだと聞いてもいないのに説明をしてくれていましたけど、正直に言うと邪魔くさく感じていた私でした。

 

 エニ君には申し訳ないけど、ちゃんと曲を聴きたかったのです。


 この時点での【ライブ・キラーズ】は、それまでの【QUEEN】のベスト盤と捉えることが出来ると思います。

 なので、最初に聞いたアルバムとしては丁度良かったとも言えます。

 ハードなナンバーだけじゃなく【ラブ・オブ・マイ・ライフ】などの極上のバラードも、カントリー調の【39】も、そして名曲【ボヘミアンラプソディ】も収録されているし、【QUEEN】の魅力がしっかりと入ったアルバムではないでしょうか?

 

 スタジオ盤とは違う【ウィー・ウィル・ロック・ユー】のファストバージョン。

 なぜピーの音が入るのか分からなかった【デス・オン・トゥー・レッグス】

 【キラー・クイーン】からなるメドレー。

 会場との掛け合いの存在を初めて知った【ナウ・アイム・ヒア】

 アコースティックギターバージョンの【ラブ・オブ・マイ・ライフ】

 とんでもなく長いギターソロの【ブライトン・ロック】

 【ムスターファ】から始まる【ボヘミアンラプソディ】

 ライブの〆、【ウィ・ウィル・ロック・ユー】【ウィ・アー・ザ・チャンピオン】と、ギターオーケストラの【ゴット・セイブ・ザ・クイーン】


 まったく、【シアー・ハート・アタック】でしたね。


ゆっくりと進めます。

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