【プラネット・アース】は良い曲ですよ。
初期の頃の【QUEEN】って女子人気が凄くて男子からは敬遠されていましたよね。まあ、その理由が分からないわけでもないのです。
今回はそんな話です。
1981年の後半になりますと、私の周りの音楽状況に新しい波がやってきました。テクノポップから繋がるニューウェーブです。
それまでもテクノポップという音楽と、その核となるシンセサイザーは一部で流行っていましたが、ロック少年である私たちはあまり関心を示してしていませんでした。ですがある時期、新しい友人ができたことで私たちはテクノに意識するようになったのです。
中学三年の二学期という珍しい時期にやって来た、東京からの転校生であるカンタロウ(仮名)は、テクノカットという雑誌かテレビでしか見たことの珍しい髪形をした、テクノの代名詞でもある【YMO】ファンの少年でした。
【YMO】の説明はネット上に多く存在しますからこの場では剖愛させていただきます。
で、その【YMO】ファンのカンタロウですが、都会の子というところを鼻にかけたところもなく、
「そっかぁ、ヨッシーたちはロック少年なんだ。でもテクノも良いよ。聞いてみてよ」
と、標準語を使うことに違和感があったものの、それでも人懐っこく話しかけてくる転校生だったので、直ぐに打ち解けることが出来ました。
この頃、音楽を語るグループというのは私たちしかなく、テクノファンとはいえ洋楽も好きだったカンタロウは仲間を探していたようだったのです。
「テクノってあれだろう、シンセでピコピコやってるやつだろう」
「そうそう、あのピコピコが良いんだよね。つてより、今はどのバンドでもシンセ使っているしね」
「確かになぁ。【QUEEN】も【ザ・ゲーム】からはシンセを使っとるでな」
「あれ、ヨッシーは【QUEEN】のファンなんだよね。シンセ使い始めたこと、反対じゃないの」
「反対はせぇへんよ。シンセだってブライアンのギターだって、格好良ければいいんちゃうのか」
ご存じの通り、初期の頃の【QUEEN】はブライアンのギターがあればシンセは不要という姿勢をつらぬいていました。その独特のサウンドがシンセを使っていると思われたくないため、アルバムにシンセ不使用と記載されていたのですが、世の中の音楽にシンセが使われるのが当たり前となる【ザ・ゲーム】の頃から、【QUEEN】もシンセを使うようになり一部のファンからは嫌がられたなんて話もあったのです。
あ、私は特にこだわりがなく「まあ、そういう時代なんだなぁ」と、生意気なことを思ったぐらいでしたけど。
「流石にヨッシーだよね。心が広いよ。音楽も拘りなく良いものは聴くってスタンスなんでしょ」
「うん、基本的にはね」
「じゃあさ、ヨッシーたちって【YMO】も聴くんだよね。【YMO】って、世界的に名の知れ渡っている日本のバンドだし、音楽好きなら聴くよね。あ、東京の人はみんな聴いてるし、そこは名古屋も一緒だよね」
「あ、ああ、まあ、そりゃあ聴いたりもするけど」
と、そんな会話を本当にしたのかは置いておいて、大都会から来たカンタロウの前では、田舎者と思われたくなかった私たちは「俺たち、音楽好きだからテクノだって良い曲なら聴くよ」ってスタンスを見せてみたのです。
田舎者と言いますか僻み根性と言いますか、東京に憧れる地方都市の中学生だったのですよね。あ、でも【ライディーン】なんかは本当によく聴いていましたけど。
と、カンタロウが仲間に入ったことでテクノを受け入れることができた私たちでしたけど、この直後にやって来た新しい音楽は受けれる程の寛容さは無かったのです。
テクノは嫌いじゃありませんでした。テクノから続くシンセ主体の音楽が、そのままダンスミュージックに移行し、それは【QUEEN】にも影響を及ぼすことになる訳ですし……それはまた次回ということにして……
テクノポップから繋がる生楽器よりもシンセを主体とした音楽は、テクノとロックが融合しニューウェーブというジャンルに繋がっていったわけなのですけど、そんなニューウェーブの人気が出てくると、私としては、いや、私たちとしては嫉妬というか、僻みというか……寛容なんてどこかへ行ってしまったのです。
中学三年生の多感な時期の私は「頭も良くて顔も良い」「顔も良くてスポーツ万能」「そして女子に人気がある」 そんな同級生を敬遠していました。
そうです。私に無いものばっかり持っている、クラスの人気者タイプが羨ましかったのです。ヒガミ根性です。ひねくれた感情だって分かってましたけど、でも嫌いだったのです。
もちろん、顔が良くて女子に人気のジャニーズ系のアイドルも嫌いでした。
話がそれましたので戻します。
初めてニューウェーブというものを見たのはミュージックライフです。
正直に言いますけど、日本のアイドルなんかぶっ飛ぶぐらいに恰好が良く、見た目が綺麗で中世的というかなんというか......
そうです。【ジャパン】や【デュラン・デュラン】らです。
それでもまあ、【ジャパン】の方はコアな人気だったのですけど、【デュラン・デュラン】はそれはそれは女子に凄い人気で、彼らの音楽を聴くこともなく嫌いになりました。外人で恰好良くて女子に人気でロックグループで売れていて……
私たちに無いものだらけだったのです。
それにです、
「いやあ【デュラン・デュラン】。良いよねえ。歌が上手でいかんがね。それに恰好良い。むさ苦しくない。最高だがね」
と、あのサト子までもがそう言い出したのです。
「マジか、サト子、 【デュラン・デュラン】が好きなんかて。なんだて、裏切りもんだがや。お前、ロック女子ちゃうんかて」
そう声を上げたのはヤスでした。
「たぁけだねえ、あんたらは。ちゃんと聴いてみやあ【デュラン・デュラン】もロックだがね。そういうことも分からあせんくせに」
恋愛感情とは無縁でしたけど、唯一の女子の友人でもあるサト子までもが【デュラン・デュラン】を恰好良いなんて言うものだから、私たちは余計に【デュラン・デュラン】に始まるニューウェーブ系の音楽を避けるようになったのです。
その後に出てくる【アダム&ジ・アンツ】とかの恰好良い系統のニェーウェーブは全部避けてやりましたよ。
もちろん、中学三年当時の私はですよ。
その随分と後になりますが、成長に伴い負の感情のコントロールを身に着けた私は【カルチャー・クラブ】なんて本当に良く聴いたし、【デュラン・デュラン】も【リフレックス】頃からはファンになり、そこから逆行してデビュー当時のアルバムも聴くようなりました。
中学3年当時から聴いていればと、まぁ、ちょっと損をしたかなとは今は思ったりもするのですが、当時の私たちはそんなもんだったのです。
中学3年生らしいですよね。
と、ここでふと思ったのです。
そう言えば初期の頃の【QUEEN】も、アイドル扱いされていたからか、女子人気がすごくてロック少年からは敬遠されていましたよね。
私がファンになった79年当時は豪華絢畑長髪王子様時代の【QUEEN】ではありませんでしたので、その人気に男女の区別はなかったのですが、デビュー当時の女子人気はそれはそれは凄いものだったと聞きます。
デビュー当時の【QUEEN】に対する男子の思いって、中学3年当時の私たちと同じですよね。